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8話 もってる女フウカ

次の日。

学校に行けば、フウカが何か奇妙なことを言ってくるんではないかという予想から、極端に俺の足取りは重い。次々に他の生徒に抜かされる姿は傍から見ていた人にとっては滑稽の姿だっただろう。


とうとう後ろから猛ダッシュで走ってくる生徒も現れ、あぁ、遅刻するなと思ったが・・・それでも足取りが重かった。遅刻するなら遅刻してしまえという感覚だった。なんとか遅刻を回避し、校門を超え、教室へと向かう。


「遅い!!!!何してんの!!」


1年B組の教室手前の廊下で、俺に対し異議あり気な姿で待ち構えている少女がいる。空歌フウカで間違いなかった。両腕を組みながら、鋭い視線で俺のことを睨んでくる。


「発表するわよ。」

「いや、何をだよ。」


いきなりのフウカの発表に戸惑いをみせてしまう。いやいや、心の準備はできていたが、廊下ではおかしいだろ。もう出欠とっているんではないかという不安がある。


「カミ聞きなさい。私は神様になる。そのために神様部も作るわ。」

お、昨日のことでしょげている素振りは一つもないフウカではあった。しかし、元気すぎないかと思う。


「神様部を作るったって、昨日浅倉生徒会長に否定されたじゃないか。」

そう俺が否定すると。フウカは人差し指を目の前に突き出して、君甘いねーみたいな顔をしてくる。

完全に俺からマウントを取ろうとしている表情をしている。なにか、語りにくるぞとノンバーバルコミュニケーションで示している。


「この学校の規則を変える。そのために、まずは生徒会長になるわ。」


いや、素直に5人部員集めましょうよ〜〜〜。それで神様部作ったらいいじゃないですかぁーーー。

ため息交じりの呼吸をしてしまう。

神様になるためにはどのようなことをするのかと、俺は思っていた。

その答えは神様部を作ることだった。そんなものを作れば1人1人何する部活か尋ねてくるだろう。


「フウカ、お前・・・」

「私が生徒会長になって、部員は2人以上でも新しい部活を作れることにする。」


「いや、それ俺入ってますやんーーー2人てーーーーーーー!!!」

ふたりてーーー。心の中での関西のツッコミをかます。我ながら上手い。



「いや、待て待て。生徒会長になるって。嘘だろフウカ。」

「あんな言い方されて、この私が黙ってるわけないでしょ。あの女に一泡吹かせてやる。」


生徒会長に楯突くというのか・・・なんて女だ。

やられたら10倍返しでやり返す女がフウカだろうな。


「でも、生徒会長・・・・・・・」


「空歌、祓野早く教室に入れ。遅刻するぞ。」

横から話しかけてきたのは、伊藤先生だった。

廊下がやけに静かになっていたと思ったら、担任の伊藤先生が遅れていただけで、各教室朝の連絡が行われていたようだ。


「あっ、すいません。」

遅れてきた伊藤先生に注意をされるのは少し癪に感じたが、まぁフウカの虚言に比べれば全然ましである。


教室の中には既にほとんどの学生が席に座っていた。


「みんな、おはよー。」

前から伊藤先生が入ってくるとともに、雑談がおさまり静かになっていく。さすが進学校というところだろうか。俺はいつもの席に座り、そっと心を落ち着ける。今、フウカが言ったことを改めて整理しなくてはならない。


フウカが生徒会長になる???そんなことが起きてしまっていいのか。

この学校が悪魔に支配されるようなものじゃないのか。俺の中で恐れは重なっていく。そんなことがおきると、天海高校は潰れてしまうだろう。


しかし、まず問題は生徒会長になれるのか?今は浅倉千聖が生徒会長なんだろ。

そこの座を無理やり奪おうとするというのか?そんなやばいことはやめてほしい。


「はい。皆さん今日もおはようございます。」


担任の岡本が俺たちに向かって話しかけてくる。いつも通り、その日の会議に行われたことを話すのである。いつも通りの連絡がつづき、半ば聞き流しているだけであったが、


「え~と、ちょうど来月にある生徒会選挙の締切が今週までなのでね、1年生ということではあるけれども、もし立候補したい人がいるならば今週中にね。」


うん??まさにピンポイントの話が聞こえた。生徒会選挙が来月にあるというのか・・・・・・・

フウカはそれを知っていたのか。だから・・・・・


「生徒会選挙ーーーーーーー!!!!!」


勢いよく大声を発狂しながら立ち上がるフウカ。


「そうなの?先生、生徒会選挙あるの?」

「おおぉ、フウカ。興味あるのか。ただ、少し静かにしなさい。」


丁重になだめされられるフウカ。面白い。伊藤先生の言うことはきちんと聞くあたり、フウカの年上に対する尊敬というものはあるのだろうか。フウカはすぐに黙り、席に着く。


6月に生徒会選挙があるというのは都合がいいというか、なんというか。

ただただ、俺はなにか良くないことが起きるのではないかと感じていた。嵐の前日に、すさまじいほどの快晴が起きるみたいな感じかな。このタイミングでの出来事を俺は伊藤先生への恨みとするしかない。


朝のホームルームが終わるともに、フウカはニヤニヤした表情で俺のことをみてくる。


「生徒会選挙あるとか、私にちょっと得りありすぎじゃない。はははっははは。」

フウカは自分の思いどおりにことが進み笑いがとまらないようだ。

完全犯罪のようにもとから知っていたのではないかと思ったが、そうではなかったようだ。


偶然といえば偶然なのかもしれないが、これが空歌フウカなのだろう。こいつの積極性、行動力が運を引き寄せるのだろうか。それならば俺はこいつをみならわなければ・・・・・・いや、それはない。


それは断じてない。フウカのことを俺が認めるなどありえないことだ。フウカが生徒会長に断じてありえてはならないことだ。


「私は生徒会長になる。生徒会長になって神様部をつくる。」


「頑張ってください☆」


俺の中でできる最大限の笑顔をふりまく。そうすることで、俺は応援はしているが、フウカの手伝い(雑用)はしたくはないということを思いっきり伝えているつもりだった。

俺にかかわらずとも、1人でやってくれということを願っての満面の笑み。


崩すな。絶対に崩すな。ここは所謂、勝負どころという奴だ。ここで俺が少しでもスキを見せればやられてしまう。だから、俺はできる限りの笑顔でフウカの顔を見た。


「じゃあ、カミは応援演説ね。」


その言葉の残像が消えるか消えないかのタイミングで、フウカは俺に笑顔で振り返す。


えっ?


「おい!!フウカ。俺は応援演説なんて・・・」


フウカが。俺は「やらない!」と喉のそこまででかかっていた。

だがしかし、フウカの顔はまさに神様とは真逆の存在。悪魔かと思われるのほどの形相。

その威圧感から、俺の声帯が硬直して動かない。


動かない・・・


動かない・・・


動かない・・・


「カミくん。私の応援演説やってくれるわよね??」


「は・・・・い・・・・」


俺はその時死を直感した。このまま拒否すれば、俺の2回目の人生はここで終了する。成仏することができず、何かを成し遂げるための2回目の人生が終わる。俺はそう感じてしまった。


「うん。じゃあ、今日はまず生徒会長に立候補しにいくわよ。カミもついてきなさいね。」

「は・・・い・・・・・・・・・・・・・」


俺の答えはYESしかなかった。






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