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4話 赤ちゃんからの2度目じゃないの。

2回目の人間の生活。


バブゥー、バブゥーと赤ちゃんからの人生がはじまる。

また、1から、もっと言うなら0から始まる・・・

と、思っていたんですけど。


祇野新起は現在高校1年生らしい。

天海高校とか言う、中々偏差値の高いみたいだ。


1回目に行ってた所とは違う高校だ。

その周辺の地域も街並みも。


うん???


先程の案内人の言葉では、記憶もなくなって誰か他の赤ちゃんになると言っていた。

再び親ガチャからの、人生がはじまる。 と、思っていたのだがどうもおかしい。


俺は今、生前の記憶は残っているようだ。

家族のことも、友達のことも覚えている。

葬式の日に言われた言葉も


「あんた地獄行きそうよね!」


出会って1分でフウカに言われたことも覚えている。記憶になんら問題というのはない。全く持って忘れていない。てか、あの女一体なんなんだよ。


意識がもどった時には、あるマンションの1室にいた。いつ、どこで、誰が選んだマンションかはわからない。

気づいたらそこにいた。


冷蔵庫、クーラー、テレビ、洗濯機、水道、学校の制服、勉強道具。高校1年生用の教科書。

生活するために必要な物は全て揃っていた。


ここがどこなのかスマホのアプリを開いたところでよくわからない。

地図の形は、日本とはどこか違う気がする。

ちゃんと自分の今いる場所も指し示すことはなかった。


そのため、俺はあたりを散策することにした。

平日の朝から街中を歩くことに対して、少しの罪悪感を感じていたが、スーツを着た会社員や、買い物をする奥さん、遊びに出かける学生。一般的な雰囲気だと言っていいだろう。


見たことがない場所ではあったが日本人がたくさんいるし、普通の所だと言っていいだろう。

現世という所に戻ってきてしまったんだと思った。


しかし、そのような怠惰な生活も3日も経つと飽きてしまった。

刺激がないというか、楽しくないというか、虚無感のようなものを感じてしまった。


目的のない生活というのは、中々に大変である。



すると、俺の心を読みきったかのように俺の帰るべきマンションの机には制服が置かれていた。

机の上に制服や学生証、地図までも置かれていた。これは学校に行けということなのかと何となく察した。

ただ、なんとなく知らない学校半分転校生のような状態で行くことに対して不安を覚えてえていただけである。


1年B組32番祓野新起。生徒手帳までしっかりと置かれている。

顔写真の、この俺の真顔ぶりは一体なんなのだろうか?

もっとしっかりした写真はなかったのか。


2回目の人生、4日目。

俺はとうとう学校へ行った。


初めて行く学校というのは緊張する。知らない生徒達ばかりだ。

どこに1年B組があるかも、地図はあるが中々理解しがたいものだった。

なんとか見知らぬ先生に聞くことで危機は脱出した。


1回目の人生は高校生3年生であったため、学校に行くこと自体は何の問題もないが、新しい学校というのはどうも緊張してしまう。小物であるから仕方がない。いやでも、緊張しちゃうよ


1年B組の扉を持つ手が震えていた。しかし、入らなくては何も始まらない

扉を開けた。

感想 高校生いっぱい。


高校生といっても中々初々しいものを感じる。さすがに高校1年生だ。

男の子も、女の子も、まだオシャレに目覚めていない子も多く、派手ではない。

詳細に言うと、男子はワックスをつけていない。女子は後ろくくりのポニーテールである。

なんとも懐かしい感じである、


ただ、知らない顔ばかりである。

きょろきょろと辺りを何度見まわたしても、初見さんばかりである。


地図には教室の場所までは書いていたが、座る席は記されてしなかった。

向こう側からすると怪しいものに見えていたのではないか。

そろりとそろりと、バレバレなのに、忍者かのように教室をゆっくりと徘徊してしまっていた。


月日はすでに4月の後半。

にもかかわず、初めて見る生徒に困惑しているようだ。


だが、そんな中で1人だけ声をかけてくれる人がいた。


「あなた・・・もしかして祓野君??」

そう俺の名前を呼んでるくれたのは・・・・・・知らない女子高生だった。


ただただ、少し美人過ぎて引いてしまう。

その女の子は、顔がとても小さい。にもかかわらず、黒い大きな瞳に高い鼻。持って生まれた物の高さがうかがえる。王道な美形女子といった感じだろう。


「なんで、名前を・・・」

「私、学級委員長なので。クラスメイトの名前は全部把握しています。えっへん。」


学級委員長。そう言われればそう見える。


「あの、席教えてくれないでしょうか?今日、初めてくるもので。」

「ふふふ、もう入学式から3週間経ってるのに、面白い人ですね。」


笑いながらも、学級委員長は席を示してくれた。

窓際の後ろの席。いわゆる当たりだろう。

学級委員長に感謝をしつつ、俺は誰もいない席に歩を進めた。


あっ!


俺は見てはいけないものを見てしまった。

瞬時に顔をそらしてしまった。


示された席の後ろにどすんと座る女。何をするわけではなくてもなくただただ下を向いて考えごとをしているように思える。そのような人間がいても普段は気にはしない。多様性を受け入れる能力を俺は持っている。


ただ、その後ろに座る女というのが問題点だった。初めはどこかで見たことがある程度だったが、近づけば近づくほど誰かはっきりと認識できた。


そいつは天国行きを断って、わざわざこの現実世界にやってきた人間。

幸せな世界に行けるという権利がありながらも、わざわざこの世界にやってきた奴。

天国にいけるなんて羨ましい。俺から見ると、頭がおかしいという感想を持つ。

おかしな奴と言うしかないだろ。俺は天国に行きたかったんだからな。


そいつがなんでこの教室にいる?

なんでここにいるんだ?


俺はおそるおそる、だんだん重たくなる足を前へと運びながらフウカ?の前の席に着席した。


ん・・・・・・

俺が前の席に座ったことに対して、何かリアクションがあるかと思ったが何もない。

拍子抜けという奴である。


キーンコーンカーンコーン。


学校中にチャイムが鳴り響く。

この音はどこの高校でも同じなんだなと、チャイムの音に少しの感動を覚える。


俺は車に引かれて死んだ。

運が良いのか、悪いのか、98%の人間が成仏できるという中で、俺はできなかった。

その因果のおかげで、再びチャイムの音を聞くことができた。



ガラガラと扉を開けて、ギリ遅刻を免れようとする生徒が沢山やってくる。

その後ろから高校生に比べて一際大きな人間がやってくる。


「はーい、みんな席つけ席つけ。出席とるぞー。」


どうやら先生のようである。まぁ、そりゃそうか。

教壇の上に立ち、出席簿を開けて先生があ行の生徒から読み上げる。


「原」「はい!」

「祓野」「はい」


「今日も祓野は休みだな。」

「いえ、先生来てます」


俺は手を挙げながら出席していることをアピールする。みんなの視線が一斉に注がれる。


「おーーーーーー、祓野待ってたぞーーーー。」

なにやら歓迎ムードされているようである。周りの生徒達も異物を見るかのようにちらみっを繰り返してくる。入学式から約20日間学校に来ていなかったものを見るのは面白いらしい。


「今日からしっかりと学校に行きますので、よろしくお願いします。」


俺はそのように述べると、周りの生徒にはさらに驚かれた。引きこもっていたような奴が、以外に元気よく答えたからであろう。元気よく答えるというのはいつでも大切なようだ。


「よかった、よかった、これで全員集合したな。先生も嬉しいぞ。」


学校に行くだけでこれほど喜ばれるとは思わなかった。

1回目の人生では、ほとんど休まずに学校に行っていた。先生に怒られるのが嫌だったから、ずる休みをすると罪悪感にかられそうだから。いわゆる小心者だから、休まなかったのかもしれない。


当たり前のように学校に行ってたからこそ、周りの人間には良いも悪いも言われなかった。

今まで考えもしないことで、喜んでもらい嬉しかった。



と、俺は周りの人に認識されたとは思うが、後ろの人間からは何の反応も見受けられなかった。

こいつは俺の存在に気づいてないのか。直接、顔を合わせたわけではないから気づいていないかもしれない。

もし気づいていたならば、すぐにでも叩いてきそうなものだが、なかった。




それから1ヶ月。

あれほど案内人ハミュに対してはうるさく対応していたフウカは、前の席に座っている俺に対しては何も言い返してこない。


こっちから話しかけるのは、どうにも癪で、話しかけることはしなかった。

俺からすると静かなのは平和で良いことだが、どうも違和感が拭いきれないでいた。


その予感はまんまと当たってしまった。

まだ、高校1年生の5月。入学して1ヶ月しか経っていないというこの時期にもかかわらず。空歌フウカは天海高校の有名人になっていた。


なぜ有名になったか??


フウカは毎日、毎日、学校のある月曜日から土曜日の時間、ありとあらゆる時間を使って、

生徒1人1人に神様かどうか尋ね回ったのだ。


理解しにくいと思う。

普通の高校に、


「あなた、神様ですか??」


みたいな、奇妙なことを尋ねる人間は誰一人としていないだろうから。

しかも、その手口は手当たりしだいというわけでもないから怖い。

1人1人の生徒と、仲良くなるよう努めた。


その人が、どのような物が好きで、どのような家族構成で、どのような性格なのかを

どうやって集めたかは俺も知らないが、


とにかく相手の懐に入っていくよう努めたのだ。


誰でも、自分の好きなものを理解してくれたり、関心を持ってくれたりする人には好感を持つものである。

そのため空歌フウカは、全ての部活入っては退部し、帰宅部の人まで仲良くなるということをした。

その行動力を、他のことに活かせないのかと、少し思うが、俺には到底できない行いなので尊敬の念さえ浮かぶ。


しかし、仲良くなった後にフウカが尋ねる言葉はいつも決まって、


「あなたは、神様ですか?」

と聞くのだ。怖くなってしまう。


確かに、フウカは、現世でやりたいことがあるから戻してくれと、案内人ハミュに懇願したことで成仏での天国行きを断ったわけであるが、フウカがやりたかったことというのは神様を探すということなのか。

それならば、天国で聞いた方が良いのではないかと思うが。


とにかく、フウカは全ての生徒に周知される存在となった。


たった1ヶ月で。



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