34話 舞台裏で今永と×××
昼休憩の間に舞台裏での準備をすることになった。
俺よりも早く来ていたのは、やはりあのイケメン今永だった。
「あら、新起さん。お早い到着で。」
ニヤニヤしながら俺のことを見る今永。
こういう緊張する場面でも、男の俺に恋人感覚でやってくるのか不思議である。
「今永、お前は緊張というものは知らないのか?」
俺は半分笑いながらも、今永のいつもと変わらぬ姿に驚きも持つ。
こういうみんなの場に立つというのは、やはり慣れているのだろうか。
もしくは、元から肝が据わっているのだろうか。
「いや、これでも緊張してるんですよー。」
その顔を見ても、笑っているだけのいつもの今永だ。
「新起さんは・・・いつもより顔が白くなってますね。化粧かなにかしてるんですか?」
「化粧なんか・・・塗ってないけど・・・」
俺は自分の顔を思わず触ってしまう。
あれ・・・、俺そんなに顔白くなっちまってる。つまり、緊張してるってこと??
ポン。と、俺の両肩に今永の手が置かれる。
「私たち、天使からしたら新起君に頑張ってほしいです。なぜなら、フウカさんに勝ってほしいから。頑張ってください。」
にこやかだが、少し怖い。
いや・・・・・・・・
「そうだな。今永の言う通り、頑張らなくちゃな。」
俺の中で何か決心がついたのだろう。
身体にまっすぐとした芯みたいなものが一本通った気がした。
「うん。その顔です。」
今永の顔が笑顔になる。
「わかった。この顔だな。」
「いや、それは笑いすぎです。」
こほんこほん。笑いすぎた模様に少しの恥ずかしさみたいなものを覚えてしまう。
顔を赤らめてしまうがしかたのないことだろう。
「今の笑い方きもい。」
うん?
いきなり横からぼそっと三森が現れ、おそらく俺への悪口がつぶやかれる。
この女、どこまでたっても怖い奴である。
「三森は緊張なんてしないのか?」
「緊張???」
頭の中にくえっしょんマークがたつような顔をしている。
天使の三森からすると緊張などという言葉はみじんもないのであろう。
なんとも羨ましい。
いや、天使がどのような生活をしていたかはしらないが、人前で話すことなどは慣れているのかもしれない。
俺は今までそのようなものから逃げていたから、緊張をするだけの差である。
「まぁ、頑張ってくださいよ。我々もフウカ様が元の神様の記憶を取り戻してもらえるよう、一生懸命に話しますのでね。」
今永とこんなに普通の話ができるとは思っていなかった。




