33話 選挙当日フウカは病む
さぁ、月日は流れて生徒会選挙当日になってしまった。
いきなりといっても3日経過したくらいだだがな。
打ち切りコースの話というわけではない。
この3日間は本当に一生懸命に選挙活動をしていたから
特に変わったことは起こらなかった。
フウカも以前として人間のままである。
俺は頑張った。
フウカのよさを必死に伝えることにいそしんだ。
できるだけ歩き、できるだけ大声をだして、頑張った。
周りの人の気持ちを動かせるように頑張った。
そして、ついにこの日が来てしまった。
この日は、生徒会選挙当日。
俺はどこか冷静な面持ちで今日を迎えていた。
今日までしっかり準備をしていたとは思えないほど冷静だ。
いつもはこういう行事ごとに対して緊張感を覚えてしまう俺であるが、
今日は不思議と緊張感がなくすることができている。
朝の登下校も、特には苦にはならなかった。
ただ、朝にインタホーンからの音声がなく、不思議な感情を覚えていることはあつた。
毎日毎日、フウカがインターホンを朝から連打してくるのが今日はなかった。
そのことになにか不思議な思いを持ちつつ、自然と早めにマンションから出ていく自分がいたのである。
「さぁ、行くわよ。」
驚いたことがあった。マンションからでるとそこにはフウカがいたのである。
それは、まぎれもない空歌フウカだった。
「おう。」
思わず返事をしてしまった。
いきなり目の前にいるフウカの姿に驚くが、普通な感じで話しかけてくる。
「どう、勝てるかしら?」
思わずフウカの顔を見てしまう。
いつも自信にだけは満ち溢れているフウカがこんなことを言うなんて思いもしなかった。
フウカにも不安という感情があるのだとその時に初めて知った。
「勝てるでしょ。」
ぼぞっとその言葉を呟く。フウカからの返答はなかった。
俺は思わず勝てると言ってしまったが、果たしてどうだろうか?
頑張ったからといって努力が全て報われるわけではない。
そういう話であるならば、何もしなくていいと言われるかもしれない。
だが、それでも頑張るのである。
フウカ本人は頑張っているつもりはないかもしれないが。
フウカは夢を持っているから強いのだろう。
もしかしたら、フウカからすると努力ではないのかもしれない。
馬鹿みたいに生き生きとした人間であるからな。
ただ、そんなフウカでも緊張するとは。
「なんで勝てると思う?」
「お前は頑張ってたじゃないか。誰にでも気軽に話しかけて、仲良くなろうとしただろ。そんなこと俺は絶対にできない。」
自分でも驚くほどにフウカのことを褒めていた。
というのも、応援演説としてしっかり準備していたため、言えることである。
良い面しか言っていないがな。
「そう、ならいいわ。あんたしっかり応援演説しなさいよ。」
一言多い気がするが、まぁいいだろう。
それこそが空歌フウカと言ったものだろう。
「まぁ、頑張らせていただきますよ。俺なりにね。」
そのようなたわいもない話が、とても大切だと思った。
俺はフウカと人影の少ない朝の道路を2人で歩く。
学校が始まった。
伊藤先生が朝の朝礼で話し始めていた。
「皆さん、おはよう。」
「おはようございます。」
まばらに返事が聞こえる。
まぁ、クラスの全員が返事をすることはないからこんなもんだろう。
「今日は昼からの授業はなしで、生徒会選挙があるから、お昼休憩の間に体育館に移動しておくように。」
「はーーい。」
適当にあしらうような返事が教室内にはびこるが、俺からするともっとみんな真剣に聞けよと思う。
この学校を代表する人を選ぶという大事なときだろう。
と、いかにもまじめな生徒になってしまっている。
1回目の人生では、こいつらと俺は何にも変わっていなかった。
俺も生徒会長なんて、誰でもいいと思っていた。
なぜなら、誰がやってもおんなじである思っていたからだ。
しかし、今この状況に置かれると思う。
1人1人の人間は違う。
空歌フウカ、浅倉千里は全然違う。
白霜あかりであっても、三森アカネであっても、同じ学園はできないだろう。
しっかりと選ばなくてはいけないと思う。
学校の未来のためにも。




