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28話 知ってる人は知らない人

目が覚めたとき、そこは見たこともない部屋だった。


「どこだよ……」

俺は意識を取り戻していたが、そこは見たこともない所だった。

なにやら一軒家のようだが、怪しい雰囲気を醸し出している場所だ。

ただ、言えるのは俺の部屋ではないということだった。

「あっ、お目覚めになりましたか。」


明るい表情で、なにやら洋菓子をお盆に乗せてやってきたのは丸だった。


「おい。ちょっと待てよ。ここは?」

「ここは、WHOです。」


さっきまで……俺は、丸と話していたよな。たしか、そこは誰もいない真っ暗な夜道だったはずだ。

おそらく、俺は丸香澄に眠らされてここに連れ出されたのだろう。

俺の隙というか、どこか悲しいものがあるなぁー。


「まぁ、まぁ、そんな悲しい顔しないでくださいよ。」


丸香澄がニヤニヤして話せば話すほど、俺の心は虫まばられていくから不思議なものだ。

勘弁してほしいものだ。


「俺の身柄を拘束して、一体どうするつもりですか。」

「WHOのリーダーが、新起君に会いたいって言われましたので。」


WHO 私のフウカを押し倒せとかいう変な団体。

なにやらフウカの、元神様、元大魔王の記憶、どちらも思い出さずに人間の平和を保つことを中心に考えているらしい。


フウカから人間世界を守ろうとしている団体だ。

ただ、俺は何となくかか承認やできないでいた。


「新起どうだ?ささしっかりと目が覚めてきたか?」


なにやら親しみをこめた口調で話しかけてくるのは、誰だろうか。

俺は声のする方をまじまじと見つめる。


「なんで、伊藤先生がここにいるんですか?」


ぽちゃっとした体型に優しそうな見た目をした姿。

いかにも中年のおじさんといった感じの、人物ではある。

「思ったとおりだと思うよ。」


まさか、伊藤先生がWHOの管理人だというのか。

いやいや、あの温厚な人間に限ってそんなことがあるのだろうか?


「私は、WHOの支配人。伊藤努だ。勝手に連れて切れてしまい申し訳ないな。」


いつもよりキリッとした表情で俺に問いただしてくる。


「なんだか、いつもの先生と違いますね。まだ1ヶ月くらいしか経ってませんけど。」

「そうだなー。いつもは、こんな感じだろ。」


にこやかな表情に加えて、少しぬけているような柔らかい感じ。いつもの伊藤先生だと感じる。優しさが身体中から溢れている感じがある。


「まぁ、普段は自分の身を守るというかな。誰にも疑われないようにだな、このような立場だということをな。」


この1ヶ月、伊藤先生に対してどこか信頼を置けないという風に感じていた。

朝のホームルームにしても、授業にしても、どこか適当でのほほーーんとしているという風に思っていた。


まさか、わざとだったとは思わなかった。


「すごいですね。全く疑うということもしませんでした。」


いや、そのことに関して言えば。丸香澄もそうか。

丸香澄もつい昨日、話しかけられるまで、存在に意識を持つこともなかった。

この人達は、凄い。


「そうだろう。疑わなかっただろー。」

「フウカのことをことを監視していたんですか?」


伊藤先生はうんうんと頷く。


「空歌フウカは中々すごい奴だな。生まれながらのポジティブというかな、新起も大変だなーー。」


「そうですね。フウカは自分のことしか考えていないようなやばい奴といえば、そうですからね。」


「ははははははははっは」



3人で笑いあう。

フウカという共通のネタで笑いあえるというのは、なんとも楽しい。


「我々は、今この現状の平和を願っている。空歌フウカが、記憶を取り戻すことは神様であろうと、この世界を破滅させることになると思っている。」


俺は頷く。

その通りだ。フウカが上の存在になることは良くない。そう思う。



このWHOと、俺の考え方はあっている。

だがしかし、まだ解けていない謎がある。


どうしてこいつらはフウカが元神様で、元大魔王なのか知っているのか?

どこからその情報を手に入れたのか。

丸香澄は教えることはなかった。

ここに入らないと教えてくれないというふうに言われた。

その謎が解けていない。


「どうして、フウカが選ばれた特別な存在だと知っているんですか。」


すこし動揺の顔を感じる。

伊藤先生もそこには一番触れてほしくないようだ。


「それは、言うことができない。」

「なぜ、なんですか?」


俺は問い詰める。しかし、そこには問題があった。

その時だった突然地響きが起こり、あたりが揺れる。










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