22話 祓野は早起きですが、なにか。
生徒会選挙まで後6日。
朝から起こされた俺に続き2人が帰ったと思ったら。
「カミ起きなさい!!!!」
元気良く朝の6時から俺を起こしにこようとする奴がいる。
しかし、俺は今日だけは準備万端だ。
もっと言うならば、朝からフウカの正体みたいなものを聞かされて脳が驚きのあまりビンビンに目覚めている。
「あらっ、珍しいこともあるもんね。カミが早起きするなんて。」
フウカをきょとんと驚かせる俺の早起き。
俺はフウカが元神様であり、元大魔王ということに驚いている。
この女が我々、人間の創造主である神様。もしくは大魔王であるというのか。
見えない。
さすがに、見えない。
見た目がいいのもあるが、「君、神様に見えるね?」なんて言う奴がいないからね。
「なにジロジロ見てんのよ。ほんと、気持ち悪い。」
悪魔だ。悪魔がここにいる。
空歌フウカの応援よろしくお願いしますーーーー。」
生徒会会長候補者、空歌フウカ様の応援演説で俺は奔走しています。
ただ、これでいいのかという疑問が生まれてきました。
フウカが元大魔王、元神様であったと仮定して、襲名させていいのかな?
こんな自分のことしか考えない、俺のことをおもちゃのように扱ってくるような奴が神様にも、大魔王にもならない方がいいんじゃないか。
もしフウカが神様ならば、人間を作りすぎたり、面白がって人間に大きな壁を作るのではないか。あいつは面白がってなんでもしてきそうだ。
はたまた、もしフウカが大魔王になったなら、人間を駆逐することを楽しみにするだろう。
「そんなの絶対にダメじゃん!!!!」
「まーーた、サボって。しっかりと働きなさい。」
少し考えごとをしていただけで怒られる俺である。
フウカ様には抗えない。
ちょんちょん。
「せんぱーーーい。」
人差し指でちょんちょん俺の二の腕を叩いてくる女は、リケジョからぶりっ子キャラに変化した白霜アカリだった。
白霜は校舎の裏側を指差す。
フウカの視線をかいくぐり、すっと移動を果たす。
「向こう側から、聞きましたか??」
大きな瞳で俺のことを下から見つめてくる。
「あぁ、聞いたよ。」
フウカのこと。三森アカネや今永透のこと。そして、白霜アカネのこと。
俺は一応知ってしまった。
「それは良かった。ご感想はいかがですか?」
「感想って言われてもな………。俺からしたら?人間からしたら?フウカは神様にも、大魔王にもなって欲しくないかな。」
「あっ、ちゃんとお聞きになったんですね。」
白霜は少しの薄気味笑いを俺に振りかける。
まぁ、その反応は最もらしいかもしれないかもしれないが。
「でも、人間からしたら、どっちでも良くないですか?」
「いや、フウカが神様になったしても、大魔王になったとしても、人間には不幸しかないと思うけどな。」
絶対的に不幸なこと、大変なことが起きるに違いない。
フウカは人が苦しむ姿を見るのを何よりも好物としている奴だからな。
「私もフウカ様が実際に大魔王であった時を見ているわけではないので、詳しく言うことは言えないだけど、私のおばあちゃんの話によると、とても良い大魔王様であったらしいですよ。」
いや、そう言われてもなーー。良い大魔王の定義ってものを教えてくれよと俺は思う。
「と言うわけでね、新起君。お手伝いしてるいただけないでしょうか?」
「どういうわけだよ!!」
「カミィーーーーーーー!!!!」
百獣の王の雄叫びに加えて、鬼ような形相で俺の方に走ってくる。
その名は、フウカだ。
俺はそちらに視線を向けることなく、いわゆるノールックで………
逃亡する。
「待てーーー、このサボりがーー!!!!」
「ふふふ、本当に仲良いなぁー。」
俺は反射的に逃げなくてはならないなと感じたが、いざ逃げたとしても今から朝のホームルームが始まると思った。
それはつまり、教室に行くということ。
俺とフウカの席は前後の関係だ。
逃げる事は出来ない。




