21話 空歌フウカは元神様である。
「何言ってるんだ。フウカは、元神様であり、元大魔王であるってことか。」
俺は驚きで口が開く。
そんなのが存在していいのだろうか。
それって、大学で例えると、元東大生であり元京大生。
いるかもしれないが、レアなことは間違いない。
しかし、フウカはそれ以上の存在なのではないか。
「はい。そのとおりですでございます。」
今永は真面目な顔で言う。その姿というのは、真面目すぎてふざけいるようにも見えるが。
俺は、三森に視線を送る。
「はい。」
できれば頷いて欲しくないが、迷いなく頷かれる。
あああ
「もっと詳しく教えてくれないか?」
「今のフウカ様は、記憶を失っておられます。詳しいことは、私どもも知らされていません。」
「なぜ、元神様であり、元大魔王なのか。私達はもちろん、白霜さんもわからないと。」
おいおい、ちょっと待ってくれよとツッコミを入れたくなるが、
「ただ、私たちは明確な目標を持ってここに来ています。」
「明確な目標??」
たしかにそうだ。いくら元神様、元大魔王とはいえ、フウカは今記憶を無くしている。
しかも、彼女は2回目の生、念のために言っておくが一応普通の人間である。
自由にさせてもいいじゃないか。わざわざ監視する必要があるのかという疑問は湧いてくる。
「私たちはここに任務で来ております。」
「監視役みたいなものか?」
フウカを動物に例えるのはどうかと思うが、いきなり暴れないようにしておかなくてはならないということか。まぁ、元神様とか、元大魔王みたいな奴はあぶないよな。
「いえ、違います。」
三森はボソッと否定する。
「じゃあ、何のために???」
「我々からしたら、フウカ様が神様の記憶を取り戻すためにです。」
記憶を取り戻すため?
「フウカの記憶を取り戻してどうするんだ?」
「神様になってもらいます。」
空歌フウカが神様だと、そんなこと起きてはいけないでしょ。
「神様って、一体なんなんだ?詳しく教えてくれないか?」
「神様は……人間が想像しているものであっています。人間の永久的な繁栄を促し、地球だけでなく、宇宙の安全を創造する存在です。」
たしかに、神様っぽい感じだな。
うん。俺の想像している神様と殆どあっている。
しかし、それをフウカがするというのか。
絶対にダメでしょ。
「フウカがやるって………」
「フウカ様は素晴らしい神様であったと先代から聞いています。我々が上から与えられた命令は、フウカ様が神様だけ目覚めるようにすることです。」
「元大魔王だと気づかれてはダメということか?」
「さすが新起さん、賢い。その通りです。我々としては、神様だけの記憶を取り戻して頂き、神様になってもらいたいのです。」
「じゃあ、向こう側の陣営。白霜アカリからしたら大魔王だけに目覚めてほしいということか?」
今永はコクリと頷く。
意味がわからない。そんなことがなぜ俺の周りで起こるのだ。
フウカの1回目の人生は、神様であり、大魔王である。
俺の周りには、天使2人と悪魔1人がいる。
その中でこいつらは記憶を取り戻させるために来たらしい。
天使達は、フウカの神様である記憶を取り戻させたいらしい。
悪魔達は、フウカの大魔王である記憶を取り戻させたいらしい。
記憶の一部を抜き出し、神様にもしくは大魔王に気づいて欲しいらしい。
なぜ俺の周りでこんなことが起こってるんだよ。
俺は2回目の人生だぞ。2回目の人生ぐらいゆっくりと暮らさせてくれよ。
あわよくば、お茶でもすすりながらゆっくりとチョコレートケーキを食したかたってのに。
なんでこんな忙しいことが怒ってるんだよ。




