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14話 演説とは

「生徒会候補として、選挙活動を行ってください。」

岡本先生からの一通りの説明は終わった。生徒会選挙で選ばれるの1人だ。当然といえば当然・・・

副会長、書記に選出されるわけではない。会長に選ばれた人が、すべての役職に合う人を選ぶ。

だから、勝者は1人なのである。ということを詳しく説明された。


「生徒会長候補少ない4人、なんて・・・」


そう、生徒会長候補が4人もいる。少ないか?

俺のもといた学校なら、毎年1人しかいない。よくて2人といったところだろうか。いわゆる出来レースだった。だから4人というのは多いのではないのかと思った。

フウカと気が合ってもしかたがないだけだからまぁいいだろうか。


「去年は、浅倉さんと佐藤さんの一騎打ちみたいなものだったからね?」


浅倉千聖は去年中学3年生で生徒会長だった。その人間が高校2年生に勝ったのだからよっぽどすごいことだろう。中高一貫校だからというものもあると思うし、それ以上に浅倉の信用獲得度というものは凄いものがある。


「奇跡ですよ。まさか、勝てるとは思ってなかったから。」


浅倉は人差し指で唇をさわりながら、愛おし色気を醸し出している。これが1年間生徒会長を全うしたものの余裕というものなのか。まわりの、ものとの落ち着きの差は見るからに当然だろうか。


「あんな大差で勝っといて、まだ謙遜するとはさすが浅倉だな。」


「いや、奇跡です。本当に奇跡ですよ。」

岡本先生も浅倉に関してはほめることしかない。才色兼美という言葉がふさわしく似合う。


「何%くらい、浅倉先輩が票数を獲得したんですか?」

ひょいと俺の隣から手を挙げる今永。こういうことを自然とできるから、この男は怖い。良い意味で空気を呼んでいない。俺にはできない芸当だろう。人種が違う。


「えーーと、たしか圧倒的な勝利だったよね。90%の票数を浅倉が獲得していたんじゃないかな。」


90%だと!!!!

そんな支持率みたことないぞ。

いくらなんでも高すぎないか?だって投票には候補者2人以外にも、支持者なしという項目もあるはずだ。ダメだと思えば、指名されない。それにもかかわらず浅倉千聖という女は

昨年生徒達の90%もの投票を獲得したというのか。さすが浅倉千聖と言うべきなのか。

圧倒的人望と言うしかない。


「せんせぇーえ。浅倉さんだけじゃなくて、私たちにも話ふってくださいよぉーー。」

可愛らしい声で、先生におねだりするような声をもたらしているのは白霜だ。先生としても女子高生にこのように言われるのはうれしいものだろう。


「あっ、ごめんごめん。白霜さんだっけ・・・。そうだね、余計な話はこのくらいにして。」

白霜は自分に注目が集まらないことにイライラしていたのだろう。肘を机につけながら右手で頬を抑えている。イライラしているときに女子がよくするテンプレである。自意識過剰の思い


そして、もう一人三森あかねは本を読んだまま静かにしている。一言も話そうとはしない。

白霜とは違い話に入れなくても何も感じないのだろう。むしろ、話したくはないのかもしれない。では、なんでそんな奴が生徒会長に立候補しているのか、さらに言えばなぜ今永のような陽キャと友達であるのか納得がいかない。合っているようにみえないからな。ただ、フウカとも仲良くする姿をみていると不思議な子としか思えない。


「後ろの応援演説の祓野、いい演説とはどんなものだと思う?」

「はい?」

話を聞いていなかった。いきなり岡本先生に指名されて困惑してしまっている。

演説とはいったいどういうものか?抽象的な質問だな答えるの少し困る。


「人の心を動かすものです。」

くさい言葉だなと思いつつも、俺はそのように伝えた。


「小さいわね、もっと大きな声を出しなさいよ!!!!」

前から大きな声でフウカが怒鳴りつけてくる。怖い視線で睨みつけてくるフウカ。


「人の心を動かすものです!!!!!」と腹からの大きな声を出す。

「お・・・、そうだな。そういう大きな面からみれば人の心を動かすものかもしれないな。ただ、なんか普通・・・。浅倉はどう思う?」


「演説・・・私にとっては、伝えるということでしょうか?自分がどのようにこの学校をよくするのか、どう生徒の生活をよくしていくのかを、私の考えをしっかりと伝えるものだと思っています。」

浅倉らしい丁寧な回答だなと思った。人のを動かすみたいな、かっこつけた発言ではない。「伝える」ということを一番にしている。その言葉はシンプルである一方、大切な何かを示している。


「白霜さんはどう思う?」

「私は演説を・・・恋愛だと思ってます。私のことを好きになってもらう。10分な演説にはなると思いますが、それでどれだけの人を魅了できるか、それが全てだと思っています。」

たしかに、投票してもらえばよい。それには投票権のある人に好きになってもらえばよい。恋をさせるという表現は確かに正しいのかもしれない。


「三森さんは?」

うん?なにこれ全員に聞くやつ?


「・・・無・・・・・・・・・」


む!!!! 静かな中で、マ行の「む」という単語だけが聞こえてきた。



「む、ってどういうこと?よくわからんないだけど。」

「私は、みんなの前で話す。だけど、何も考えない。脳にストレスがかからないようにしないと、疲れるでしょ。こんな風に思われているとか、こんなこと言いたいとか考えると、無駄でしょ疲れるもん。だから、私は「む」でいることを意識している。」


うーん。わからんでもないがわからない。やはり、三森はなにか変な子なのだろう。

そういうことで納得するしかない。そうだ、そうしよう。


「じゃあ、フウカさんはどう思う?」

「はい。待ってました!!!!!!」


フウカは手を上げて、元気よく返事をする。いちいちめんどくさい奴である。


「私の思う演説とは、勇気です。」


この後、フウカは20分話したらしい。俺は寝ていた。












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