13話 緊張感
次の日も俺はその日のノルマをきちんとこなした。朝早起きをし、昼にもフウカに連れられて応援演説をすることになった。自分で言うのもなんだがえらいのではないか。頑張っているそんな気がしていた。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。
俺はその日もフウカに連れられて応援演説に行くという風に思っていた。
しかし、フウカから出た言葉は意外なものだった。
「今日は選挙活動はしないわ。」
フウカは俺にそのように言った。その一言は俺を幸せを呼び込んでくれる。
選挙活動をしないなんて自由を手にするようなものである。
うれしすぎる。こんなことがあってよいのか。
俺は身支度を済ませ、すぐさまに帰路へとつく準備をする。
「ちょっと、待ちなさい。帰っていいとは私言ってないわよ。」
俺の足が外に出かかったとき、フウカはそのように言ってきた。思わず、俺も土から初めてでてきたモグラのような顔をしてしまう。それくらいに驚いてしまった。
「いや、今お前帰っていいって言ったじゃないか。」
「選挙活動をしないとは言ったわ。ただ、帰っていいとは言っていない。」
そのような言葉遊び真面目にやめてほしい。誰も得をしていないではないか。いや、フウカだけは楽しんでいるのだろうか。俺をもて遊ぶことによって。
「いや、選挙活動をしないってことだろ。もう今日は他にすることないじゃないか。」
「あるのよ、それが。」
そう言って、フウカは俺の耳をつまみながら教室の外へと連れていく。
見当もつかない。どこか、拷問に合うというのか。恐ろしくてしかたがない。
そのまま地面に擦られた状態で、俺はどこかに連れられてしまった。
俺の摩擦のそこは、ある教室だった。
「たのもー。」
フウカさん別に道場破りではないのでね、たのもーとかはいらないですよ。と一言俺はアドバイスをしたが一度ちら見をされただけで無視された。
「こんにちわ。フウカちゃんー。」
「あっ、あかりちゃん。」
フウカがいきなり声のトーンを少し上げて陽気な返答をしている。その相手は白霜あかりであった。このテンションに合わせる感じ、フウカもなかなかのやり手だろう。
「新起君。こんにちわ。」
微笑みながら挨拶をしてくるのは、今永だった。そして、隣には三森がいる。
ここにいるメンバーを見たときに、なんとなくわかった。生徒会長候補を集めているようだ。
そこには、浅倉千里もいた。
「新起くーーーん。こっちに座ろう。」
陽気なイケメン今永トオルは明るく接してくる。俺が苦手なタイプであるが、あまりに明るく接してくるので文句を言うことはできない。
「隣きちゃいなよ。来てきて。」
これが陽気なノリなのだろうか。なんとなく隣に座るのは心がはばかれたので、1つ開けて座ることにする。
「同じ応援演説者として頑張ろうね。」
いきなりをかけてきた今永。馴れ馴れしいというしかない。人種が合わないからだろう、なんだろうめんどくさい。はははと話を合わせるだけで精いっぱいである。
「ねぇ、新起は誰が良いと思う??」
「えっ?」
「4人もいれば、1人くらい気になる子がいるんじゃない。」
いきなり今永は話題を吹っかけてきた。女子たちは前で談笑をしている。
フウカにかまわれないことはいいが、なんとなく誰か助けてほしい。
「生徒会長に誰がふさわしいかって意味で聞いてるよね?」
今永は少し俺に対して少しの嘲笑をかざしてくる。
俺はそこに対して文句を言わないが、少し嫌な気持ちにはさらさられる。
なにかまちがったことを言っただろうか?誰が良いか?
「誰が1番可愛いと思うか聞いてんのよ。」
このイケメンは俺に何を一体聞いているんだと心の中で俺はツッコミを入れるが、今永は俺を弄ぶかのようにニヤニヤ顔である。わざとこんなことを聞いて、俺の反応を見て楽しんでいるような気がする。
「浅倉千聖さんは健気で可愛いよね。真面目な所はもちろんだけど、怒りの部分も兼ね備えてるじゃん。そういう人ってドキッとするよね。」
俺に共感を求めてこないでほしい。浅倉についてどう思うかと言われても優秀な人間としかイメージがない。中学3年生の時から生徒会長なるなんてことそう簡単にできるもんではない。ましてや、2年連続で生徒会長になろうとしようとする思いというのは、俺から見れば凄いとしか言いようがない。どう思うかと言われても、尊敬している人間だ
というのが一番しっくりくる気がする。
「そうですね。きれいだと思います。」
まぁ、このように回答するのが一番まともだろう。このような女性を評価するようなこと、俺なんかがしていいのかと思うとおこがましい。嘘は言っていないから別にかまわないだろう。
「なんかありきたりだね。もっと攻め込んできなさいよ。」
なぜか今永に怒られる俺である。そんな簡単に踏み込んだ話はできない。
本人が目の前のいるんだぞ。そんなこと
「すいません。ここ応援演説の方の……」
「あぁ。ここですよー。応援演説の方ですか。」
なにやら静かそうな女子がここに来た。丸眼鏡をかけていて、淑やかな雰囲気を醸し出しているその雰囲気からして浅倉千聖の応援演説だろうか。
「はい。千聖の応援演説であります。丸香澄と言います。」
この子は最初からここにいたのか?俺とフウカが入ったあとに誰かやってきたか?いや、そんな音はしなかった。すでにそこには全員がいた。そうだ、全員がいた。
この女はここにいたのか?いつからここにいた?影薄すぎないか?
「あの・・・・あれ名前なんて・・・」
どうした俺の脳。彼女の名前が思い出せない。今聞いたはずだよな・・・
「ちょっと後ろの方うるさいぞ。静かにせい。」
あっ、怒られてしまった。生徒会選挙担当の先生、まさかの岡本である。1年B組の担任の岡本だ。偶然か奇遇か、まぁやりやすいからいいだろう。
「では、それでは説明させていただきますね。」
前に生徒会長候補4人が座り、俺と今永と・・・女の子は後ろに席を陣を取る。
やはり名前が思い出せない。