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10話 祓野新起への寝起きドッキリ

今日は朝から雨のようだ。外に響く雨音が聞こえる。


雨の雫が俺を目覚めさせた………と、そんな綺麗なことを言いたかったが、


俺を起こしたのは明らかな暴音だった。

ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

鳴り止まないインタホーンに、耳を伏せぐ。俺の脳は怒りに溢れ返る。


必然的に出るしかない状況を作りだされたが、午前6時に俺は布団から身体を出すことはできない。

ただ、眠い。


無限になるインターホン。

2分ぐらいが経過したくらいのことだろうか。

ピンポーンというのが鳴り止んだと思うと、10秒くらいの間が起きた。さすがに悪の権化は帰ったのだろう。


そう思ったのだが………


「うわっぁああああああーーーーー。」


津波がやってきたのかと思った。俺の頭に目覚まし代わりの大量の水が襲ってくる。

髪の毛もびしょ濡れ、服もびしょ濡れ。湿った感覚だけで最悪なことがわかる。


思わず目をパッと目を見開いた。

俺の目に映るものは、できればあまり見たくないものだった。


空歌フウカ。


彼女は俺と同じ、2度目の人生を生きる民。

天国行きの切符をわざわざ蹴って、この辛い悲しみに溢れる現世へと案内人に文句を言ってわざわざ戻ってきた人間。その理由はと言うと、神様になりたいらしい。なにやら矛盾が生じているようだが、フウカ曰く、1度目の人生の時に彼女の目で神様という存在を見た。だから、彼女は現世にいるという神様に弟子入りし、神様になることを目標とする女の子なのだ。


だが、神様になると言っているわりに、俺への態様は明らかにおかしい。全ての人間に平等愛を与えるのが神様というものだろう。


「なぜ、フウカが…ここに?」

1人暮らしの男性の部屋に、午前6時から鍵を開けて入ってくる女鍵をどこで手に入れたのか聞くことさえも面倒くさい。こいつの一挙手一投足というのは俺に予想することができないからだ。


「さぁ、行くわよ。」

明らかな、裏に何かを抱えたような微笑みスマイルで話しかけてくるフウカ。無理やり人を起こしといて何を言っているのだろうか。


「いやっ、どこにだよ!?」

朝から、なぜか俺の声音もフルパワーだが、フウカは後ろを振り向き聞いていない。聞いていない。俺の言葉を聞いていない。

朝6時から、こいつはいったい何してるんだ。

俺の目覚めの脳で予想をすることができない。


「今日から、生徒会選挙活動していい日なのよね。だから、やるわよー。」


生徒会選挙活動……………

フウカは俺の目に、鍵をぶらぶらさせながら、意気揚々とさせている。

俺はそのフウカの行動に観念してしまったのだろう。

これは、いくら抵抗したところでフウカ独断での決定事項に対して俺は納得するしかない感じた。


何も口にだすことなく、俺は起き上がり。

フウカに何も語ることのないまま、そのまま彼女を一旦外に出し、

着替えを行う。

フウカも俺の観念した表情を見た後は何も言わなかった。



「おい、準備できたぞ。」

「ふん、おそっいわよ。」


玄関で仁王立ちで待ち構えている少女は怒りを示しているがそこは流す。

これでも15分で準備したんだからな。許せ。


午前6時15分 雨。

雨が降っている。朝から傘をさし、湿気の多いじめじめした所を朝から通ることにイライラしていたが、俺の目の前をどそくさと歩く女がいるんでね。俺もついて歩くしかない。



学校についた。午前6時30分、まだまだ眠い。

この朝早い時間に学校にきたことなどなかったためか。あまりの静けさに驚く。ただ、生徒がいないわけではなかった。

廊下で腕立て伏せをしている生徒達、野球部の姿である。

こんな朝早くから、練習をしているのか。そのことを今日初めて知った。野球部とはどこであっても大変な部活なのだな。それを横目に見ながら、校舎の中へと入っていく。


階段にも人がおらず、半分不法侵入かのような気持ちにさせられる。

1年B組の教室へと3Fまで登る。が、朝一番ということもあって教室は空いていなかった。

いつもは当たり前のように、教室は空いていて、そこに人がいるのがあたりまえの光景だった。

新鮮な情趣にかられている。


「鍵、取ってきなさいよ!」

その光景に少し観賞を感じていたのに。フウカはすぐにそれを妨害してくる。ほんと悲しい奴だよ。

ただ、俺はその鶴の一声に、文句を言わず鍵を取りに職員室へと向かう。


ガラガラ。

と、職員室は空いているようだ。ただ、ほとんど先生はまだきていない。

1人いる先生に会釈をして、俺は即戻ろうとする。フウカがお怒りだからな。


廊下をはやばやと渡る。何か静けさのようなものを感じていた。異様な雰囲気。

静寂がここを包み込む光景というのは、この時間にしか見れないのだろう。

なにか違和感がそこにはあった。


どくん!!


俺の心臓がいきなり何かにつかまれた感覚とらわれる。いきなり俺の後ろに不穏な物を感じ取った。

それは、何か怖いものかのように。人の気配がないからより一層、不穏な気持ちがよりたかまってくる。


気配を感じた。


恐る恐る俺は後ろを振り向く。

しかし、そこには誰もいない。


見間違えかと思い、もう一度振り向くがやはりそこには誰もいない。背中を誰かにさすられるかのような感覚に包まれる。


ただ、誰もいない。


念のためもう1度振り向くが誰もいなかった。幽霊かなにか・・・、いや、まさかな。

ただ、俺は2回目の人生という奇妙な体験をしている。幽霊ぐらいいてもおかしくもないかもしれない。

しかし、俺の目には怪しいものは見えなかった。


不穏な場を後にして、俺はすぐさま教室へと向かう。



_________________________________

「何やってんの、遅いじゃない!!」


と、めちゃくちゃ怒ってきたが、そんなものは知らない。フウカは俺の持ってきた鍵を奪い、勢いよく教室の扉を開ける。まちがっていなかったことが確認できてほっと一安心する。

そして、カバンを机の上に置き、何かを取り出す。


「ほらっ、あんたも巻きなさい!!」


俺の目の前に腕章がわたされる。そこには、生徒会長立候補空歌フウカ応援演説と書かれている。


「あんたの分も私が作ったんだから、真面目に働きなさいよ。」


俺の分・・・。

たしかにこの腕章をつけることによって、この地味な俺も何をしているのか理解しやすくはなるだろう。フウカにしては珍しく、気の利いたことをするではないか。


「おっ、ありがとな。」

朝の校門でいきなり立っている人間がいては生徒もひくだろう。この腕章つけることによって俺のアイデンティティみたいなものがしっかりと確立される。


「さぁ、いくわよーー!!」

フウカの耳には俺の感謝も届いていないみたいだ。彼女の目には大きなグランドラインしか見えていないのではないか。いや、グランドライン見えるなよ。


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