9話 新起は働かされる
それから1周間。俺は仕事にしそしんだ。仕事とよばれる雑用というものだろうか。フウカのポスターであったり、フウカの紹介文を書いたりしていた。
「今日も生きている。」
それがなによりも嬉しかった。ブラックバイトと言わんばかりに俺は働かされた。なんで、文句を言わないのか。圧力である。ある女の視線とは本当に怖いものである。
神様への感謝を忘れずに、俺は生きている。 そう感じることができるだけでよかった。
フウカが生徒会選挙に出ると決めた日。 俺がフウカの応援演説者にされた日でもある。
その日から俺は文句の1つ、10つ、100つを噛み殺して、フウカからの命令に従った。
空歌フウカと名前を書くところ生徒会長選挙の募集用紙を準備した。
その用紙を手に入れることさえ、学校内の事務室にまで取りいかなくてはならなかった。
「君が生徒会選挙に出席するの???」
と、事務員のおばさんに尋ねられた。
「友人が立候補するんですよね。あははははは。」
俺は笑ってごまかそうとする。しかし、事務さんの目はどこか淀んでいた。
見解は次のとおりである。君みたいな、陰キャ選挙にでるなよである。
デブでもガリガリでもない中途半端な体型。身長も平均なみの、普通の顔。
イケメンというには程遠く、だからと言ってブサイクというわけでもない。
言葉に表すのが難しいイメージ、だから表情に悲しみが生まれてしまう。
俺が友人と言って、生徒会長になるのは自分ではないというアピールをしたものの、 友達までもが陰キャという判断をされたのだろう。
悲しいといえば悲しい。
生徒会長になろうとしている奴は、とても女の子らしくない破天荒な人なんですけどね。
そんなかんだで、なんとなくだが心の傷をえぐられる俺。
フウカになど勝ちたくはないが、なんとなく比較されるとかなしいものがある。
問題はまだ続く。その用紙をフウカに渡したのはいいものの、几帳面さのなさには目を見張ってしまう。
名前はかろうじて書いているが、わからないところは全て空欄にしてフウカはもってきた。
いかにも俺に書けと言わんばかりの圧。
本人に直接文句は言わないが 。
記入させられたり。選挙用のポスターの写真撮影。ポスター制作。その他の雑用。 我ながら中々の仕事量をこなしていると思うよ。1回目の人生だったら、途中で投げ出していたかもしれない。
「・・・・・・はぁぁっぁああああーーーーー」
とうとう選挙用ポスターが完成した。
このポスターの90%くらいは俺が作ったものだが、最後の微調整をこいつはやり出したいと言い出した。
それにも関わらず、私が全て完成させました感を出すのにいささか不満だった。 料理において塩だけかけたようなものだ。それで料理を作った自慢はやめてほしい。
一度トイレに行くのに席を外して、戻ってきた時に小さな木っぽガッドのお菓子が1つだけ置かれていた。
フウカは何も言わなかったが、これが彼女なりの感謝なのだろうか。
俺は納得いっていないがな。
5月24日晴れのち曇り
その日が生徒会長立候補受付の最終日だった。
「やっときた。あなた達で2人目よ。」
受付にいたのは、おそらく生徒会の先輩達であろう。
「1人目は誰なの?」
「浅倉千聖さんよ。」
フウカはその言葉をそのまま受け入れた。
「浅倉千聖……さんって、どんな人なの?」
現生徒会1年生会長浅倉千聖は2年連続での生徒会長を狙っているらしい。
俺は1回目の人生18年間生きていたので、2年連続で生徒会長になろうとする16歳同級生の気持ちはわからない。人間力の差だろうか。
話しによると。
浅倉千聖は、生まれながらのリーダー基質らしい。
創立50年の歴史のあるこの桐皇学園の中で、中学3年生で生徒会長になったのは彼女が始めてらしい。
昨年は、高校2年生4人、中学3年生1人の中で50%の票数を集めて生徒会長になった。
周りを引き込む話し方、自信に満ち溢れた立ち居振る舞い、凛とした美しさ、まさに完璧な女性と言ってまちがいないだろう。才能といえば、才能だろう。生まれながらのリーダー基質。
今年の生徒会選挙は、浅倉千聖に勝てるやつはいないという考えから、今年は他に誰も申し込まない。
浅倉千聖の独壇場だと考えられていた。
普通ならば・・・・・・・・・
「では、よろしくお願いします。」
フウカは意気揚々と、道場やぶり感。
選挙本部と言われるところに、生徒会選挙立候補のプリントを提出しにきた。
こいつらは浅倉千聖の近くに普段からいるからこそ、今年は他に誰も立候補しないとふんでいたのだろう。トランプをしている。
一応、1年生設定ということを守ってほしいものだ。
なぜ、タメ口で話せるのだろうか。
おそらく先輩であろう。受付の人にフウカは相も変わらずタメ口で話す
少しだけイラッとするが、ここでフウカに怒ってもしかたがないのでね。
俺は大人だ・・・・・・、この野郎。
2度目の人生は、優しい心を持とうと思っている。
女性の先輩は、その資料に目を通し、数分眺めた後
「はい。たしかに受け取りました。」
「じゃあ、私は生徒会長ってこと??」
「え・・・・・・・。いや、生徒会長に立候補しただけですよ。まだ、これからですよ。」
「わかってるわよぉーーーー、ボケよボケ。はっはっはーー。」
そのようなもの誰も求めていない。
なんのボケなのだろうか?