表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/38

1話 祓野新起

十分な光がない ・ 暗い ・ 周りが見渡せない ・ 杳としてようとして ・ 暗いくらいかげりがある・光が十分でない   まっ暗やみ ・ 暗い ・ 闇夜 ・ 文目も分からない ・ 冴えない ・ みすぼらしい ・ くすんだ ・ しょぼい 陰気な どんよりした ・ やぼった見栄えのしない ・ 華がない ・ 見劣りのする 夜陰 ・ 薄闇 ・ 暗夜 ・ 光の届かない 照度ゼロ ・ 墨を流したような ・ 黒々とした  視界不良 ・ 視界が晴れない ・ 視界が悪い ・ どんより ・ 暗欝な ・重苦しい  灰色 ・ 鉛色 ・ 曇天 ・暗色  あやめも分からない ・ 漆黒の闇  暗やみ  不可視 ・ 見えない ・ 無明の闇 ・夜の闇 ・ 夜のとばり ・ 黒々と ・ 漆黒 ・ 黒色を帯びた ・ 目につきにくい 暗闇くらやみ ・ 暗がりくらがり 真っ暗まっくら  小暗いこぐらい ・ 闇やみ ・ 暗黒あんこく ・ 暗いくらい ・ 暗澹あんたん ・ 薄暗がりうすくらがり 仄暗いほのぐらい真っ暗闇まっくらやみ ・ 蒼然そうぜん ・ 薄暗いうすぐらい 光が(少)ない ダーク(だーく) ・ 灰色はいいろ ・ 暗鬱あんうつ 黯あん ・ 暗々 ・ 闇黒 黯澹あんたん ・暗あん ・ 黯淡あんたん ・ 闇々 一寸先は闇いっすんさきはやみ 冥冥めいめい 幽冥ゆうめい 暗がるくらがる 昏い  冥くら 闇くら………これくらいだろうか。


目の前が真っ暗だ。俺は眼輪筋に力は込めている。

しかし、どうしても見えない。

俺の目は・・・どうしたのだろうか?


悪魔に俺の目は食いちぎりられてしまったのか、

それとも、俺の目は天使に気に入られて、他の人間に移動してしまったか?


はっはっはっはっはっはっ。

中2病発言は自重して置きます。


まず、自己紹介をさせていただきますね。

名前は祓野新起といいます。俺の年齢は18歳。

高校3年生だ。

中2病を発動しているからと言って、中学2年生というわけではない。


どちらにしても、18歳の若さで

視力を失ってしまったようだ?


失明・・・・・・


昨日までは見えていた。


一本道に続く赤信号も、

朝日が照らす水溜りも、

見返り美人のパンティも、

この目は全て捉えていたはずだ。


それなのに………………

黒色一色に染まってるんだ。



見えてくれ!!!!!!!!


どれだけ願っても、見えない。

俺は目に対して話しかける痛い男だ。



その時だった。


「新起のバカヤローーーー」

突然、何かが聞こえてきた。

新起と聞こえたよな?俺の下の名前だ。


そして、今理解できたことがある。

確実に耳は生きている。

反射的に俺は喜んでしまった。

耳の神経は生きている。


よかった目は見えていないが、耳は聞こえるようだ。

生体機能の確認ができることに満足する時が来ようとは。


しかし、目は見えない。

さらに新しいことに気が付いた。

声が出ない。


俺の声帯に震えが起こらない。

俺の名前を呼んできた相手に対して、きちんと返事をしたいのに、

声が出ない。


耳は聞こえるが、目と口がやられてしまった。

俺の身体は今どうなってるんだ。


「新起・・・バカ・・・・」


新起。


新しいこと起こす、と書いて新起。親の希望が手に取るように伝わる名前だ。

小学生の頃から、新起、新規、神姫と馴れ馴れしく呼ばれたものだ。

中学、高校は祓野君と呼ばれることが多かったから、懐かしい呼ばれ方のような気がする。


俺の名前をいきなり呼んだのは誰だろう?

目が見えないというため、誰かわからない。


だが、確かにその声は聞こえた。

その声の主が小学生の時の親友、じんちゃんならいいな。


もしも、じんちゃんなら

バカと言われた仕返しに右太ももへの、

ドロップキックをお見舞いしているとこだった。


しかし、目が見えないから確認できない。



「なんで、祓野君・・・」

健やかな声だ。

美しく心地良い、アロマの香りを放つ感じがする。


おそらく女性。しかも美人な人だと思う。


声だけで判断するのはいかがなものかと思うが、

知り合いの中にそんな人はいたかと思考するが、

瞬間的には高校2年生の時の同級生の恵美ちゃんしか思いつかない。


クラスメイトとなった1年間、1度たりとも会話をしたことはないが。

この声は恵美ちゃんじゃないかな??


恵美ちゃん(仮)は、クラスのマドンナみたいな存在だったなぁ。

俺とは不釣り合いな存在といったらいいか。


だからといって、イケメンと仲良くするわけでもない。

女子達と、たわいもない会話をしている所しか見たことがない。


そんな彼女を、俺は傍目から見ているだけだった。



「はやすぎるよ……」


うーーーん、次の人は男?女?どっちだ?

高いトーンの声にも聞こえるが深みがある。

声だけで男女を判別できない珍しい声だな。


仕方ない、オカマと認識しておこう。

これは偏見でも、差別でもない、本当にそのように聞こえるのだ。


「はやすぎる?」とは一体何のことを言っているんだ?

俺に対して話しかける上で


早すぎる………早すぎる………早すぎる………早すぎる………


俺は50m走8.9秒、遅い。

母親手作りの弁当を食べきるのに昼休憩の全てを使ってしまうほど、遅い。

早いとは…………あっ、あれだ。就寝するのが早いということか。

普段から9時に寝るからな。

小学生的の時からなぜか俺は変わらなかった。


それを言ってるのかな?

そんなことわざわざ言う必要が無いだろう。


目が見えないから誰かもわからない。

声が出ないから、会話もできない。


ただただ、この状況に苛立ちを覚える。



「新起。なんで、こんなに早く死んでんだよ。バカヤローーーーー。」


うん???

聞き間違いだよな?


死んでる??ってどういうことだ?


「なんで、車に突っ込んだんだよ。」

「ねぇ、祓野くん。」

「新起―。」


あっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ああああああああああ


俺の脳の中に生きている、全てのニューロンが今この瞬間に結合した。

ドクンッ!ドクンッ!って感じだろうか。


急に怖くなった。怖くて怖くてたまらなくなった。

今、俺がこの状況に置かれている理由。



死んだんだ。


だから、目が見えない。

声が出ない。

身体が動かない。


思い出した。


昨日、俺は家に帰路の途中。

50メートル間隔でコンビニが3つも同じ通りに並び立つ大通り。

あえて、その3つのコンビニの真ん中で微々糖のコーヒー、ブラックに近いんだけどブラックではない、少しの優しさという甘さを持つコーヒーを1本だけ買って、俺は帰路につこうとした。


俺はそのコーヒーをすぐ様開けて、口に含む。

いつものように、苦さの中にある最後の甘さに感動を覚え、幸福に満たされていたのに。


その時、突然、後ろから大きな衝撃が俺を襲った。


おそらく誰かに、後ろからタックルされた。

今思い返せば、クラクションが鳴っていたような気がする。

俺はその衝撃で、大通りに吹っ飛ばされた。


その後の記憶はない。

車に轢かれたのか。



死んだんだ。


死んだとするなら、全てのことがしっくり来てしまう。


仮説

この目が暗闇に包まれているのも、俺が死んだから。


みんなが声をかけてくれるこの状況、

俺のおばあちゃんが亡くなった時に似ている。


小学生の時の親友?

高校2年生の一度も話したことのないクラスのマドンナ?

オカマ???


そんな懐かしいメンバーがわざわざ俺に話しかけてくる状況


=葬式


泣いてもいいですか?

俺は死んだってことなのか……

信じたくない。

できればそんな仮説したくない。

したくたい。


特に可もなく不可もなくの平坦な人生だった。

正直、これでよかった感はない。

いざ死ぬとなると、後悔ばかりつのる。


生きたい。


まだ、俺はピチピチの18歳男子高校生3年生だぞ。

人生これから楽しくなっていくんじゃないのか。

悔しい。

どうせ死ぬのならば………何か凄いことをしたかった……

何か凄いこと??って一体なんだ?

自分がどれほど人生について何も考えず生きていたのかを痛感させられる。

したいこともなければ、なりたいものもない。

欲しいものさえ、数少なかった。


そんな虚無的な人間だったのか・・・


ここに来て自分の本質を知ってしまう。

思い返すこともない人生。

つまらない人生。


「くっ・・・・ぐすっ・・・・」

俺の耳に人間の泣き声が聞こえる。

あなたは、なぜ泣いている?


どこの誰かは分かりませんが、あなたはなぜ俺のような人間に泣くのですか?

人を感動させてきた人間が、悲しみを与えることができるのはわかる。

総理大臣であったり、スポーツ選手であったり、映画監督であったりならば理解できる。


しかし、何もしていない俺になぜ泣くんだ?


俺には理解できなかった。



そのことを考えながら最期の時を過ごした。

悲しいことに意識が薄れているのもわかった。

あー、俺はもう・・・

生きたい。

今さらながらもっと生きたかったと思う。


しかしもう遅かった。

もう遅いんだ。


ならせめて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ