ヘアピンがなければこの話は成り立たない
目がああぁぁぁ!!
というわけで短いです
鶴乃から連絡が途絶えて三日が経った。
家にも連絡がないらしく、当然その姿もなかったそうだ。
帰っていないとなると、誘拐や考えたくもないが、殺害された可能性も否定は出来ない。
昨日、鶴乃の親は、行方不明届けを出しに行ったとのこと。
「しかし、何故鶴乃が・・・」
そう喋り出したのは、横を歩いていた鳴海だった。
俺たちといえば、学校をサボって街をぶらぶらしていた。
「いや、ぶらぶらしているわけではないのだが」
そう言い出したのは、やはり鳴海である。
そう、別に二人してサボっているわけではない。俺はいいにしても、鳴海の優等生は、サボるなんぞしないのだ。
「しっかしまぁ、あいつを探すっつってもなぁ。俺たちに何ができるってわけでもねぇし。ちったぁ、証拠でも落ちてりゃぁいいんだけれど」
──俺たちは今、鶴乃の捜索中である。
「ぐちぐち言うな。お前から言い出したんだろうが」
そうですが!それがなにか!だって、そうは言っても見つからないんじゃ、ねぇ?こうもなるよ。
たっくよー、どっかの変態野郎の仕業じゃないのかな?
因みに鶴乃は、貧乳である。あいつには、絶対言うなよ。これまでその話題に触れてなかったからさ。そっとしておこう。
「ほんとなんで鶴乃なんだ?」
誘拐や殺害されたとは、限らないとはいえ、不安なのは変わらない。
捜索開始から、二時間。現在の時刻は、十時ジャスト。
「鳴海ぃー。そろそろ切り上げよう」
俺は、道の隅っこでなにやらゴソゴソしている鳴海に言った。
ねぇ、なにしてんの。
「諦めが早いな、お前」
しゃーないだろうが。所詮、子供のやることだ。警察でもなんでもねぇーやつだからよ。なんもできんのよ。あとは、警察に任せよう。
「まぁ、そりゃそうなんだがよ」
あんだよ。こんな俺でも心配なのは同じさ。只、できることには限度があんだよ。だからそれを見極め・・・ってなに言ってんの、俺。
「お前の言いたいことは、わかるよ。要は、素人の俺たちが首つつっこんで厄介ごとを増やすなってことだろ?」
その通りです、ええ。
・・・今、そんなこと思ってなかっただろ、と思ったやつ、俺がそんなやつに見えるかい?
「なら、帰るか」
そう鳴海が言い出した。
「そうだな、帰るか」
帰ることになった。さもあっさりと。
・・・
・・・
・・・
──そして会話が続かない。
だってなに話せばいいかわかんないんだよ!鶴乃がいないってのに普通に帰ってんだぜ?どうしたらいいのさ。
鳴海のやつは・・・っておい。なに持ってんだ。
「なにって、鶴乃のヘアピン」
えーっと、それはどこで?
「どこで拾ったかってことか?さっきだが」
「ってちょおおぉぉぉ!!」
「!なんだよ。ビックリするぞ。というかしたぞ」
いやいやいや、だってお、おまっ!
「言えよ!!」
俺は、がしっ、と鳴海の両肩を前から掴む。
いつ拾ったんだ?そういえば、俺が帰ろうって言ったたきにゴソゴソしていたが・・・。もしや、そのときか!けれど、そのときに言えばいいはずでは・・・。
鳴海は何か言いたげな顔をする。
なんだよ。
「いやだって、帰るかって言ったからよ。だから・・・」
「だからなんなんだよ!」
「だから、じゃ、帰るかって思った」
・・・
・・・
・・・
「──ってそれだけかよ!?」
「なにが?」
なにが?じゃ、ないんだよ!!
「なあ、鳴海さんや」
「な、なんだ」
俺は、自分の目頭を押さえて言う。
「お前はもう歳だ。いい医者教えてあげるから、病院行け」
「なに言ってんだお前」
それはお前だ、とは言わない俺であった。
なんか今日の鳴海は、少しばかり──いや、だいぶおかしい。
基本的に俺よりも頭いいし、難しいこともわかるし、運動も俺よりもできる、そんなやつだ。良いことと悪いことがちゃんとわかって(当たり前なんだけれど、だから尊敬しちゃう?的な)何気に優しいし、完璧超人なやつなんだけれど。
「うん、本当に病院に行けよ。鳴海に倒れちゃ、こっちが困る」
「──さっきからお前は何を言っている?」
いや、だから、病院の話───ってちゃうやんか。
俺は、ぶるぶるっと首を振る。
と、そんな俺をじっと見てきて────
「お前の方が病院行ったらどうだ。俺からすれば、今日、お前の方がおかしいぞ?」
そんなわけあるか。いたって平常だが。
「勿論、全部が全部お前じゃないってことではない。
いつもなら、どうでもいいことはしないし、言わない主義だろ?」
それが何か?てか、それだと、していたってことになるが。
「自覚してないのか?してたろ。言ってたろ」
そんなわけあるか。
とことこ、と歩く。
「まず第一に、鶴乃を探そうとしていた」
そりゃ、当たり前だろ。どこが変なんだよ。
「お前の場合、「俺が探したとしても素人にできるわけないでしょうが。それは警察の仕事だろ?」とか言って学校──もしくは、家でのんびりと過ごす筈だ」
お前、普段どう俺のこと見てんの?
家に帰る前に鶴乃のヘアピンをわたしに交番に寄る。
交番内には、二名の警官がいた。黒のスーツを着た人──甘徒大和というらしい──と手にスーツを持ってシャツだけの人──藤堂有馬というらしい──だった。その人たちの話によると、鶴乃の捜査に所轄が動いているらしく、今はその最中でここに来たらしい。
「それはほんとかい?」
二人に鶴乃のヘアピンが落ちていたことを話すとそう言った。
俺は、捜査の方は順調かと聞いた。
「いいや、めぼしい証拠や痕跡は今のところなくてね。ああ、一つだけあった。」
甘徒大和さんはそう言って胸ポケットから手帳を出して開いた。
「二日前──帰ってこなかったっていう日のことなんだけど。コンビニで鶴乃さんを見たっていう人が五人ほどいたんだ」
「コンビニで?」
「そ、ここの近くのコンビニで。」
ここを左に曲がって五分ほどしたところにあるコンビニか。
「いいんですか?民間人にそんな情報を話してしまって」
鳴海が聞く。そうだな。秘密事項じゃないのか?
「ほんとはあまり喋っちゃ駄目なんだけど、情報提供者だし、行方不明の子は君たちの同級生だろ?だから、少しぐらいは教えておこうと思ってね」
わぁお、優しい人でよかった。
「それじゃ、捜査に戻るか」
甘徒さんは、横にいた藤堂さんにそう言った。
「そうですね。それじゃあ、気をつけて帰れよ」
あ、藤堂さんが喋った。初じゃね?
「情報ありがとな。じゃ」
二人が外に出ていく。
「捜査お願いします」
俺たちはそう言って出ていくのを見ていた。