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吸血鬼少女たちの最期の戦場  作者: 兎乃鬼ぃちゃん
第一章 排除篇
13/14

オムって?オムって!

サブタイ思い付かない!


サブサブタイを入れました。


あ、サブサブタイを入れたから、サブタイ思い付かなかったのか。


□立ち話はどうですか。



「……何の用、?」


 橋の上で空を見上げていたボーダートップスにベージュパンツ、グレーコートを合わせた、茶色ロングヘアーの女が、ふとそんなことを言った。

 しかし、どこにも、彼女以外人の影はない。

 と、女の影が揺れた。本来、あり得ないことだ。影が自分から動いたのだ。


『ふん。監視だ』


 どこからか、男の声が聞こえてきた。その声の発し場所は、女の影の中からだった。


『なに、監視と言っても、仕事の進捗具合とかだ。お前の生活などにゃ興味がない』


 そう言って、ふんと鼻を鳴らした。

 そう、と女は呟いた。

 息を吐いて、辺りを見渡す女。


 時間は、早朝。人影は、ほとんどなく、犬の散歩をしているお婆さんしか歩いていない。自動車の通りも少なく、静かであった。

 今日が休みだからなのだろう──いつもなら、この時間帯、車や人が通る。


 風が強く、女の髪がゆさゆさと揺れ動いた。


『安心しな。結界を張ってある。それに、人はあまりいない。好都合だ』


 その言葉に女は、そんなことは心配してない、と思ったが、口には出さなかった。ただ、風景を見ただけであった。


「それで、なに」


 機械にプログラムされたような柔らかな静かな声が、風に流れていく。


『なに、とはなんだ。言っただろう。監視だと』

「、監視なら、声をかけない、はず」

『まさしくその通りだが、しかし“イーター”よ。私の命令には、監視対象と話してはいけない、というものは含まれていない』

「、屁理屈?」


 “イーター”と呼ばれた女は、首を傾げた。


『違う』

「そう」

『それにだ。お前、一人だと寂しいだろ』


 そんな、男の気遣いなど無用などと言うかのように、


「否定」


 と、即答した。

 つまり彼女は、寂しくはない、というわけだ。

 それを聞いた男は、暫く黙りこんでしまった。


「、面白い」


 彼女のそんな声が、風に流れた。


『なにがだ』


 男は、答えを求めた。


「なんでも」

『その言葉の意味はなんだ。なんでも、ってのは』

「なんでもはなんでも」

『お前は、わからん奴だ』

「あなたも」


 そうかい、と男は嗤いながら応えた。 

 

「仕事、頑張る」

『なんだいきなり』


 なんでもない、と彼女は、前髪を指でくるくると巻き取るような感じで弄びながら言った。


「ただ、なんか、嫌な感じが、する」


 イーターは、右手で胸辺りの服をギュッと握りしめた。目線は、風景一直線。


『どうしてだ』

「わからない」


 だろうよ、とそのセリフの後に煙草に火を点けようとするオヤジのような感じの声で言った。どんな声なのかは、わからないが。


『ま、お前がそう感じるって言うなら、そうなんだろう』


 彼がそういうのには、根拠があった。前に、嫌な感じがすると言った数日後、イーターが住んでいるアパートの近くにある家が火事になったのだ。


『信じがたいが、そう感じるなら、気を付けろ』

「うん」


「……」

『……』


 そんな、未だに話がまともにできないでいる恋人同士の会話みたいな会話が少し行われ、


『じゃ』


 という男の声で、その会話は終わりを告げた。

 監視に戻ったのだろう、男の声はしなくなった。


「、帰ろう」


 イーターはそう呟くと、家へと踵を返した──何故か疼いた、もともと左薬指があったところを押さえながら。






□取り敢えず、話を進めましょう。



「天河音。取り敢えず、こっちを向いてくれ」


 天河と鶴乃が起きた後、二人の悲鳴が部屋中に響いたが、鳴海は気付かなかったようで、その場は直ぐにおさまった。

 何がどうなっているかわからない二人は、キョロキョロと辺りを見渡し、鶴乃は、ここが俺の部屋であることがわかると、安堵したのか崩れ落ちるようにうつ伏せに倒れた。天河は、どこかわからない上に知らない人が二人もいたからなのか、部屋の隅へ素早く移動した。

 俺はそんな彼女たちを見て、クスクスを笑うと、二人に簡単な説明をした。

 夜に鶴乃と天河が俺の家の前に倒れていたことを話すと、何故そこにいたのかなどと呟き始めた。

 取り敢えずと、鶴乃には、家に行くか電話してこいと部屋から出した。

 わかったと元気よく階段を下り──転けた音がした。

 さてと、と天河を見るとまだ隅にいて、しかも壁側を向いていた。

 そして今ここ。


「勝手に話を始めるが……俺は魔術師、橘霞だ」


 そう言うと、ビクンッと体が動いた。そして、恐る恐るこちらを振り向いた。


「……本当ですか」

「ああ、お前を助けたのは俺だ」


 はっ、と目を見開く天河。

 ズルズルと、近づいてくる。


「あ、あの……」

「礼はいい。お前を助けることが出来たのは、偶々だ」


 そう、偶々だ。結界が張られていなければ、気づかなかったのだから。

 それでも、と彼女は言ったが、俺が耳を塞ぐと黙りこんだ。


「よし、それでいい。礼を言われるのは、好きじゃないんだ」


 そうは言ったが、それは単に恥ずかしいからである。人に礼を言われると、むず痒くて仕方がないのだ。


「ま、それはどうでもいい。今回の件について話せ。出来るだけ詳しくな」


 天河は先のことで、まだ顔を赤く染め俯いている。

 話が進まねぇー。

 そう呟くと、


「す、すみません……」


 と謝ってきた。


「いや、謝れてもな、こちらとしても反応に困るんだが……それはいいんだよ。敬語、やめてくれ。あまり敬語で話されると、むず痒くて仕方がないあと、俺のことは、霞でいいからな」

「わかりました……ん、わかった」


 いや、ただ単にいいキャラになると思って言っただけなんだが。


「さて、話してくれ。鶴乃が来るまで少しは話したい」


 天河は、顔を上げてこちらを見、わかりましたと言った。

 やっと話せる。といっても、少ししか話せないだろうから、後でまた話すけど。


「えっと、まずはじめに、私は、“魔法使い”じゃありま、ない」


 “魔法使い”。それは、呪文詠唱なしで術を発動できる者のことである。今の時代、術式を詠唱する“魔術師”しかおらず、魔法使いは、世界の理から逸脱した存在として魔術師からは非難されている。


 ──というのは、ただの馬鹿どもが考えることだ。


 そもそも、魔術も世界の理から逸脱している。

 それに、魔術も無詠唱で発動できる。


 術式とは、世界全体に巡り張っている“魔回廊”と呼ばれるものに干渉しやすいようにするためのものであり、“記憶領域”から術式を引き出せば、詠唱なしでも発動できるのだ。


 魔法の場合、既に術式が術の名前に構築されている。よくアニメとかで魔法を発動するときに技名を叫ぶが、そういうことなのだ。また、魔法陣に術式を構築しても発動できる。これは、魔術にも言えることで、これを魔術界では“ルーン(語)”と呼ぶ。

 “ルーン”は、“魔回廊”に干渉しやすく、基本的には、魔法も魔術も“ルーン”をしようする。

 つまり、根源は同じなのだ。ただ、方法が違うというだけ。まあ、魔術か魔法どちらが優勢かと聞かれたら、もちろん魔法だ。

 魔法は、魔法使いではなくば使えない。魔術は、魔法使いでも使える。

 まず前提が違い、魔法の方が先に作られた。それを簡略化したのが、魔術である。


 さて、天河の場合は、魔術師である。

 無詠唱なのは、記憶領域から術式を引き出しているからであって、普通の魔術師である。

 でもあれだな、魔法と魔術では技などが違うため、すぐに魔術師か否かわかるはずなんだけれど。その魔術師、結構な馬鹿だったのだろう。

 俺も知らない魔術はあるが、天河がそこまでの技量があるとは思えない。いや、()()()()()()()()()。肉体に耐えられない?そうかもしれない。なにしろ──今はよそう。

 

 さて、術の話だったか。

 例を挙げると、身体強化ならば、


魔術は【身体強化(フィジカルブースト)


魔法は【corpus(身体)confortans(強化)

(ラテン語です)


である。でも、魔法の場合、言語は違っても問題はない。では、術式はどうするのかと疑問に思うだろうが、それこそが、魔法使いしか魔法を使えない理由である。


 俺は、天河が言ったことに頷く。


「知っている」


 天河は驚いて、知ってるんですか!と声を出した。敬語だぞ。

 

「そりゃあ、な。魔法使いなんて、ぽんぽんいてたまるかっての。それに、俺だって、無詠唱できるし」

「ということは、やっぱり魔術師なんだ」


 今、やっと信じた!?とはツッコまず、ああ、と肯定する。


「そんで続きだ。話によれば、魔法使いだと疑われ、拝火教ゾロアスターに終われているらしいな。あと確か、アーミスト・ウェンベルもか。手を組んでるって言ってたな」

「そこまで知っているの?なぜそれほどまで情報を知っているのか……」

「なあに、日本で、しかもこの街に魔術師がいるって聞けば、調べもするさ。それに、“情報屋”からだから、俺が調べなくとも教えてくるのさ」

「凄い情報屋がいるんですねぇ」


 これくらい普通だと思うがな。情報は、魔術師にとって、命と呼べるからな。相手が何者なのか、などを調べ、弱点を見つける。基本的な戦法だ。


「では、続きを話します」


 と、天河が言ったとき、部屋のドアが開いた。鶴乃である。

 タイミング悪すぎねぇか?全然、というか全く情報を引き出してねぇんだがよ。引き出すって言うと、取り調べとかをしてるように聞こえるな。拷問させて情報を引き出す。これ、フラグになりそう。今回の件で出てこなければいいが。


「なに話してたのー?」


 呑気に聞いてくる。そういえば、碧さんがこいつのこと魔術師とか言ってたな。しかし果たして、鶴乃自身気づいているのだろうか。ま、気付いてはいるのだろう。周りと自分の違いを。

 しっかしなぁ、いつも魔力感知しないんだけどな。俺も全ての魔術を知ってるわけじゃないから、そういう魔術があってもおかしくない。それに、戦闘とか、魔力を使わないとわからないし。

 でも、魔力の漏れとかはある筈なんだけれど。何も知らないほとんどのペーペー魔術師は、魔力漏れが起こる。しかし鶴乃の場合、ない。

 キャパに対しての魔力量が少ないのかもしれないが──。

 基本的に、キャパと魔力量は、相応しているため、そんなことはほとんど起きないが、稀に存在する。らしい。というは、俺の知る魔術師にはいないからだ。


 さて、こいつに天河を紹介して、と。

 

「ああ、名前とか聞いてただけだ。こいつはな、天河音っていうんだと。で、天河、こいつは鶴乃だ」


 まあ、嘘は言ってない。


「どうも、天河音です。よろしくお願いします」

「こちらこそー。上平鶴乃だよー。鶴乃でいいから」

「では、私のことも音、と」

「んー!」


 はい、仲良くなりました!

 普通、その場で仲良くなんかなれないよな。な?


──────────(ねえ、鶴乃さんって)──────────(私を襲ってきた人…)──────────(…だよね?)


 天河が小声で俺に聞いてきた。今さらかよ!遅すぎねーか!?とはツッコまず。


──────────(ああ、そうなんだけど)──────────(、あのときの鶴乃には)──────────(情報体が入っていて、)──────────(鶴乃の意思じゃなかっ)─────(なかったんだ)


 そう言うと、理解したのか、相槌を打った。

 鶴乃の方をみると、不思議そうに見ていたが、突然、ぽんっ、と手を打った。


「っと、そうだ!鳴海がいたんだけど!」


 おっと、言ってなかたったっけ?


「鳴海……とは?」

「鳴海か?俺と鶴乃の幼馴染み。親がいないってんで、泊まってるのさ。家は隣だけど」

「そんなことはどうでもいいから!私を見た途端、白目剥いて倒れたの!」


 あー、驚いたんだな。仕方がない。下に行くか。



◇◇◇



「おーい、飯できたぞー!」


 俺は、鳴海の耳元で言った。大声で。しかも嘘。ご飯は出来ていない。


「っん!?う、五月蝿っ!?───って、なんだ、霞か……ってそうだ!つつ、つつつつつつつつつつつつ」


 ガバー!と音がするくらいの勢いで床から起き上がった鳴海は挙動不審な動きと共に不可解な言葉を言った。

 いやまあ、言いたいことはわかるんだけどさ。

 いや、つしか言ってねぇじゃんかよ。

 そんな鳴海の頭にチョーップ!正気に戻れぇ!

 って手が痛っ。自爆してどうすんだ俺。


「ちゎ、」


 何語だよ。朝からツッコませんな。


「わかってるって、鶴乃がいたんだろ?」

「そそそそそそそうなんだ!!」


 はいはーい、両手て俺の両肩をバシバシ叩かない叩かない。

 えっと、鳴海さんのキャラがぶれてます。


「いやまぁ、なんというか。連れてきたの、俺だし」


 バシンッ!


「って痛っ!?何故!?」


 急に鳴海が俺の頬を叩いてきた。


「いつだ!?いつなんだ!?」


 近い近い。顔近づけんな。怖いから。

 鳴海さんのキャラがぶれてます。


「今日の深夜。十二時過ぎてた筈だから」

「なんで、お前が連れてきたんだ!?」


 近い近い!だから、近いって言ってるだろ!?って、唾唾!飛んでるから!唾飛んでるから!

 鳴海さんのキャラがぶれてます。

 そんな鳴海をふむんぎゅ!と手で押し返す。


「えーっと、たまたま外に出た時に俺ん家の前で倒れてた」


 無論、嘘である。嘘つかないと、無理だろ。どう言えと?魔術師うんたら~とか言って、頭おかしいんじゃないか?って言われるだけだし。魔術使えばいいのだろうが、鶴乃いるし。警察とかに通報されかねん。


「……不思議だな」 

「ん、不思議」


 鳴海と鶴乃が二人してそう言った。

 まっまくもって、同意見です。

 

「まずだけど、私、記憶ないんだよね」


 そりゃあ、そうだ。とは言えず、そうなのか?と聞く。


「うん。だから、なんで私が行方不明ってことになっているのかがわからなかった。その私がなぜか、かすみんの家の前にいた……それって、どういうこと?」

「かすみん言うなかすみん。それはわからないが……」


 あなたたち二人にとっては不思議ですよね。


「記憶ないのか?」


 鳴海は、腕を組んで聞いた。


「ないのよ。ぽかーって」


 ぽかーって可愛いなおい。


「じゃあ、俺たちを俺の家に呼び出したことは?」

「あ!それは覚えてる!ごめん!っぽかした!」


(解説:「っぽかした」は「すっぽかした」です)


「いや、事情がわかればいい。しかし不思議で妙だ」


 同じこと言ってどうする。

 いやぁ、結構な事件になってるなぁ。どうすっかな。分身……アバターを一体造って、そいつを誘拐犯として立てるか。動機はどうしようか。あと、身元とか、潜伏先とか。

 あー面倒くさっ!後処理面倒くさっ!

 いっそのこと、しないってのは……んー、なんか後味悪い。

 っとあ!もういっそのこと碧さんに任せちゃうとか!いいね。それで行こう。あとは……


「────い……おーい!」

「あ!?」


 なんだなんだ。うるさいぞ。


「めーし!」


 鳴海がそう言い放った。


 いやさ、さっきまで混乱してたのにもう飯のことで頭がいっぱいですか。そうですか。こっちが悩んでるときに飯ですか。いいご身分ですね。まあ、鳴海は今回の件については関係ないわけだからいいのだけれど、もう少し考えて欲しいものだね。


「……わかったよ。椅子に座って待ってろ」


 溜め息をひとつ()き、キッチンに向かう。

 鳴海とすれ違う際、なに今の溜め息!?と聞こえた気がしたが、空耳だろう。


 何がいいかねぇ。鳴海の好物は夜にするとして、こういうときは人に聞いた方が早いんだよな。

 そう思い、目線をシンクから前へと移す。すると、天河がこちらに来た。どうやら、着替えが済んだようだ。


 天河は昨日の戦闘で服がズタボロで、()()()()()()()()()()()()()()が、俺の服を着せて寝かせたのだ。しかし……そのままは嫌だというので、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を渡した。

 その服とは……


「……ね、ねぇ、こ、この服は……」


 天河が顔を赤くして来た!

 なにをそんなに恥ずかしくしてんだ?

 まぁ、確かに、普通の人ならば()()()()()()()恥ずかしいとは思うが……そんなにか?()()()()()()


「お、おかしいですよね?」

「いや?似合ってるけれど」


 本音である。

 鶴乃の場合、貧うごほん!なので、(顔はいいのだけれど)似合わない。天河の場合、平均より少し大きいのと顔がいいので、めちゃくちゃ似合う。


「はぅ~……」


 (解説:霞の脳は麻痺しています。霞の姉がよくバニーガールの姿で家をうろうろしていたために麻痺してしまったのです。……いや、霞姉さん、ヤバいですね。それよりもヤバいのが霞。……っぷ。失礼。もうひとつ情報が。霞は、バニー服を着たことがあるそう、でっすっ(笑))


 ん?なんか聞こえた気がしたが……気のせいか。しかもなんか、馬鹿にされた感じがしたし。まぁ、それはただの気のせいであって、現実ではないだろうけれど。


 いやぁしかし、こうしてみると、似合うもんですなぁ。姉貴よりバニーガールっぽさは欠けてるような気もしなくもないが、わるくない。あれだな、姉貴と比べたら駄目だな。天河だったら、メイドの方が似合うんじゃないか?確か、クローゼットに姉貴のメイド服があったような……。まぁ、姉貴は何着ても様になるからな。パッツンパッツンの執事服とかメイド服とか、あとは、スク水?水着はちょっと、過激的かなぁ。


「……ぅぅ~、い、今、変なこと考えてましたよね……?」


 な!す、鋭い。

 それはさておき。飯だよ飯。


「なあ、天河。朝ごはん何がいい?」

「朝……ご飯、ですか?そうですね……」


 敬語に戻ってんぞ。ま、喋りやすいのでいいけれども。


 ん~、と腕を組ながら唸っている。

 やがて、決まったのか、あ!と声を出して、表情がパァァアア、と明るくなった。


「オムライス!」


 ででーん!と効果音が出るような、そんな感じで言った。

 ふむ……オムライスか。最近食べてないなぁ。ふわふわぁのとろとろぉのオムライス。

 よし、オムライスにしよう。食べたくなってきてしまった。


「じゃぁ、オムライスにしよう」

「まじですかい!?」


 誰だよあんた。口調がおかしいぞ。


「ふぇ……」


 どういう意味だそれ。

 いやそれはいいや。兎に角、オムライスに決まりだ。


「霞!?だ、誰だその女は!?」


 鳴海の登場!

 鳴海さんのキャラがぶれてます。

 気付くの遅いなぁと思いながら喋っていたが、ようやくお出ましのようだ。

 それで……どう説明しようか?なんも考えてなかった……。


「はじめまして。私、天河音といいます。霞さんに……」

「あ、ああ、天河はな、鶴乃と一緒に俺ん家の前で倒れてたんだ。多分だけど、鶴乃と同じく、誘拐されてたんじゃないかな、うん」


 焦って早口で言ってしまったが、大丈夫だろうか。何気に鳴海のやつ、勘がいいからな。


「うむ。そうなのか。警察に言った方がいいな」

「あ、ああ」


 良かったわ。ばれてないばれてない。

 天河は、安堵したのか、息を吐いた。


「なになにー?なんの話~」


 鶴乃が来た。

 目ー、閉じてるぞー。

 完全に目を閉じてる。見えてるのか、それで。こぇよ。


「見えてるよー」

「みえてんのかよ」

「因みに、寝てるときは、目を開けてるよー」

「初耳だそれ!?」

「嘘だよー」

「だろうね!」

「因みに、今、寝てるよー」

「喋ってんじゃねぇかよ!」

「所謂、寝言だよー」

「所謂とかじゃねぇだろ!すげぇな、お前の寝言!」

「嘘だよー」

「だろうね!」

「因みに」

「まだあんの!?」

「今、目開けてるよー」

「いや、完全に閉じてますよね?」

「いえいえ、マイナス千ミクロン開いてるよー」

「なんだそれ!?意味わからん!」

「嘘だよー」

「だろうね!てか、そんな人間いんのか!?」

「いるよー」

「いるのかよ!?」

「そう……あなたの、後ろに!」

「恐怖なこと言うんじゃねぇよ。怖くないのに怖くなっちまったじゃねぇかよ」

「意味わからない」

「ああ、俺も意味わからない!」






「さーて、オムライスを作っていきましょう」


 材料は、

 ・とりもも肉

 ・卵

 ・牛乳

 ・玉ねぎのみじん切り

 ・マッシュルーム(スライス)

 ・温かいご飯

 ・サラダ油、塩、こしょう、トマトケチャップ、バター

 その他、お好みで具材を入れてください。


 では、作り方です。

 1. まず、とり肉は余分な脂を取り除き、1cm角に切る。マッシュルームは缶汁をきる。


 2. 次に、フライパンに油を入れ熱し、玉ねぎをしんなりするまで炒める。とり肉、マッシュルームの順に加えて炒め、火を通す。ご飯を加えて炒め合わせ、塩、こしょう各少々をふり、ケチャップを加えてなじませる。お皿に盛っておく。


 3. ボウルに卵を割入れ、全体が黄色くなるまで溶く。塩、こしょう各少々、牛乳を加えて混ぜる。


 4. フライパンに油を入れ熱し、3の卵液を流し入れ、強火で手早く混ぜる。


 5. ゆるめの半熟状になったら弱めの中火にし、手前1/3を折りたたみ、フライパンの向こう側に寄せる。バターを入れ、溶かして全体にいきわたらせる。


 6. 5のフライパンの柄を逆手に持ち、ひっくり返しながら、2のご飯の上にのせる。すぐにナイフで1本切り目を入れる。残りの卵液も同様にし、ケチャップ適宜をかける。


 7. 完成。


 8. 人数分作って、みんなで食べましょう。






「ふぅ~ん、なんほどねー。記憶喪失なのね」

「ああ、そうだ」


 嘘だけれど。

 オムライスを食べながら、そう思った。


「そうだった。十一時頃に私と音ちゃん、かすみんで警察行こう!」


 元気よく言われてもね。


「お母さんが警察に電話して、なんか、警察の人が聞きたいことがあるって言ってたらしくてね」


 それ、拒否できませんかね。第一発見者なのは重々承知しておりますが、だからといって、俺が行かなくてはならないわけではないでしょう?


「何故に丁寧に!?そうだけどさ、私たちのためと思って」


 そうだよなぁ、魔術にいきついたりしないようにしなければな。


「わかったよ。了解した。十一時頃と言ったな?それまでに準備しておこう。天河もわかったか?」


「ふぁい」


 口モグモグしながらのお喋りはだめですよ。ま、俺が聞いたからなんだがな。


 さて、と思って、オムライスを食べる。なかなかの旨さだ。自分で言っても恥ずかしくない。

 左横に座っている天河は、満足そうに頬張っている。あーあ、右の頬にケチャップがついてる。何も言わずにティッシュで拭いてあげる。


「ふぉぁ!?」


 天河が慌てふためく。そんなに嫌だったか?

 鶴乃は、頬を膨らませている。何がしたいんだお前は。

 鳴海は……

 オムライスと一緒に作ったスープをおかわりに行っていた。


「それにしても、かすみんのご飯は美味しいですなぁ」


 いや、どこの人だよ。

 ま、そう言ってもらえると、作った甲斐があるってもんだ。


「はむ、美味しいです」


 おぉ、天河よ。そんな満面の笑顔でこっちを見ないでくれ。






□聴取はスキップしましょう。




「で、なんで俺までここにいるんだっけ」


 現在の場所、警察署のとある部屋。

 部屋の真ん中には、長机が二つ並列に並んでおり、椅子は二十はある。出入口は二つあり、その両方のドア近くには、ホワイトボードが二つずつあった。


「私と音ちゃんを見つけたのがかすみんだからでしょ」


 

 答えたのは、鶴乃。

 くそう。俺がこいつらを助けなければ!

 それはそれでなんか嫌だ。


「あー、くそ。鳴海のやつは、いいよなぁ」

「当たり前でしょ。鳴海は、この件にはいっさい関わってないんだから」


 そうだけどさ。

 今頃、俺ん家で寛いでるんだろうな。俺ん家で!自分の家じゃなく、俺ん家で!


 コンコン。


 と、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 キィ、と微かに音を出しながら、ドアが開いた。

 そこから入ってきたのは、女性の人だった。警察の方だろう。

 相手が少女の子(俺を除き)だからなのだろう、甘徒大和あまずやまとさんか藤堂有馬とうどうありまさんが良かった。


 そう思ったとき、俺の心を読んだのかのように、


「甘徒先輩と藤堂くんは、外に出ているので、私、海老名夢唯澪(えびなめいれい)がお話をお伺いします」


 さっき入ってきた女性警官が、そう自己紹介をしてきた。

 一瞬、エスパーなのかと思ったわ。

 

「では、始めます」


 海老名さんは、俺たちの向い側に座り、長机に置いた分厚いファイルを広げた。


「まず───」


 長くなりそうだ。

オムライスが食べたくなってきました。

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