なまえ
“思い付かない…………”
子供の名前が思い付かない。
在り来たりな名前しか思い付かない。
女の子が生まれることは幸せ。
名付けることは苦痛が混じっている。
名前はこの娘の人生を左右する。
名前は印象を左右する。
妻の由衣も頭を抱えている。
様々な痛みが襲っている。
娘を抱き抱える前に決めなくては。
パソコンに入力する。
“これもダメか…………”
人名権なんて無くなればいい。
漢字や読み方が全く同じ名前がダメ?
そんなのおかしすぎる。
唯一無二の名前も確かに良い。
だが想いがこもっていなくてはダメだ。
想いが一番大事なのだから。
名字を変えることが出来ないので被るのは仕方がないこと。
妻は珍しい名字だったから“由衣”という昔からある一般的な名前になれた。
被らせないため、結婚しても別姓と定められていて妻は珍しい名前のままだ。
妻とは違い、僕も娘もごく普通の名字。
母は僕に“純”と名付けようとした。
当然ダメで結局“ジユン”になった。
カッコよくて違和感もなくて気に入っている。
娘には可愛い愛のこもった名前を付けてあげたい。
パッと思い浮かんだ名前をパソコンに入力する。
“被ってない。やった…………”
「なまえちゃん、パパですよ」