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君のいる世界  作者: 田鰻
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予兆 - 14

あんまり外に出ないクレストが森に出かけていったけど、ちゃんと帰ってきてよかった。

最近クレストは前より暗い顔をしてることが多くて、どこかに行っちゃうんじゃないかって心配だったよ。

帰ってきた時には、ちょっぴり明るくなってた気がする。

うれしい。よかったねクレスト。


あと、お家に新しい人が来たよ。

おじさんも売られたの?って聞いたら、嫌そうな顔された。

わたしとは違ったみたい。そのあとで、オレはまだオジサンじゃねえってぶつぶつ言ってた。

もしかしてこの人が来たから、クレストの落ち込むのがなおったのかな。

それならちょっと悔しいな。わたしじゃだめだったのかなあ。

お客さんなの?って聞いたら、クレストはああとかううとか言っていました。

クレストの、こういうはっきりしないところはダメだと思う。

メイやパトはそうですって言ってたから、お客さんだって思っておこうっと。


「で、具体的にはどうすんだよ。

あんたの思ってるように簡単にはいかねえぞ」

「うん、世の中うまくいかないよね……」


お客さんが、クレストとそんな事をしゃべってるのを聞いた。

あっ、そういえばまだわたし、お客さんの名前聞いてないや……。

あのお話は、たぶん、わたしが町で暮らせるように相談してるんだと思う。みんなが前に言ってたから。

うーん、わたしはここにいるのが楽しいのにな。

でも、みんながわたしを森の外に帰そうとがんばってるのは知ってるので、わたしがわがままを言っちゃいけないよね。

いつかは帰らなきゃいけないけど、いつかが来る日が、もっともっとずっと先だったらいいな。


お客さんはじろっと睨んできて、なんだかこわい。

初めて会った日に、頭をつかまれてぐるぐるされた時は目が回っちゃった。

言葉づかいもらんぼうで、クレストと話してると、クレストがいじめられてるみたいに見えてかわいそう。

けど、お客さんは悪いひとじゃないって思うな。

わたしの家に来てた人たちは、お客さんみたいにらんぼうにしゃべったりしなかったけど、わたしとわたしの家の人たちを見る時の目が、すごく冷たかったから。

お客さんはわたしをくそがきって呼ぶけど、あんなふうに、物を見るみたいな目でわたしを見たりしない。

たぶんわたしのすいりだと、あれは素直じゃないひねくれもの、ってやつなんだと思う、うん。

明日か明後日になったら、わたしからもっとお話ししてみようかな!


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