予兆 - 1
朝おきたら、窓のそとに小鳥がいた。
ほんとうは逆で、小鳥の声で目がさめたのかも?
パンのかけらを毎日あげていたら、わたしになついてくれたみたい。
昨日はとってもよくねむれたよ。
パトが毎日とりかえてくれるシーツはいい匂いがして、ふわふわする。
メイが作ってくれるパンケーキも、おんなじくらいふわふわする。
クレストは……うん、いつもみたいにふわふわしてた。
今日はお部屋のおそうじをしてから、ドライフラワーを作るんだよ。
パトが作りかたを教えてくれるんだって、パトは何でも知っててすごいな。
わたしのと、パトのと、メイのと、クレストのと、よっつ作るんだ。
メイには黄色のお花、パトには、服と同じ青のお花がにあうと思う。
クレストは何色だろう? すごくむずかしいよ。もっとよく考えないとね。
クレストの家に来てから、毎日うれしいことがある。
それでふつうだよってクレストはいうけど、そのふつうが、わたしはうれしい。
でもまだ、わたしだけ楽しくていいのかなって、たまに思う。
メイもパトも、それには答えてくれない。しんそがお望みですから、って答える。
いいんだよって、はっきり言ってくれるのはクレスト。
ありがとうってわたしが言うと、少し困った顔になる。好きだよって言うと、もっと困った顔になる。
……いつも困った顔してるけど。
はじめは、わたしに好きって言われるのがいやなのかと思ったら、そうじゃないみたい。
メイとパトが近くにいる時は、あんまり言わないほうがいいのはわかった。
うーん?
クレストは、ぼーっとしてることが多い。
でも、ほんとうはいつも頑張ってくれてるってわかるよ。
最初に会った時は、全然しゃべらなくて、何もしてくれなくて、ちょっとこわいおじさんだと思ってたけど。
でも、とってもすごいんだ。
それにね、クレストは何もしてくれないんじゃなくって、自分が何かしていいのか、いつも気にしてるの。
えんりょがち、って言うのかな、こういうの?
したいことは全部していいんだよって言ったら、驚いたあと、うれしそうに、ありがとうって言われた。
やっぱりしたかったみたいです。
やっぱりわたしは、クレストのことがよくわかっています。
そのあとで、近くにいたメイとパトに気付いて、なんだか大慌てでちがうちがうって言ってたけど。
さっきと言ってること逆だよクレスト。
……うーん? やっぱりよくわかってないのかも。
ええと、とにかくわたしはここの暮らしが楽しいです。
クレストもメイもパトも大好きです。
めいわくじゃないよって言ってくれるなら、そうしていいよって言ってくれるなら。
ずっと、みんなといっしょにいられたらいいな。




