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夏の憂鬱、祭りの活気

作者: シルフィア

時間がなくて、かなりテキトーです。

今日も、暑い日が始まる。







7月末。夏休みが始まって一週間。

わくわくするのは、学生にとって仕方がないことで、はめをはずしたくなるのも自然というものだ。

これから始まる、楽しい休日ライフ。

期待していたのに……





……泣きそうになったのは仕方がないことだと思う。



「えー今日は、ボランティア活動として、夏祭りの手伝いに行きます」


子どもが好きで、孤児院にボランティアに行くことが出来ると聞いて、ボランティア部に入った。

しかし、実際は孤児院に行くのは年に1回ぐらいで、あとは校外のゴミ拾いが大半だ。

そろそろ本気でやめようかと思っていた矢先、今度はこの暑い日に、夏祭りの手伝いときた。



所詮ただ働きだ。






僕が大きくため息をつくと、後ろからよく知る声がかけられた。



「どうした? ため息なんかついて。幸せが逃げるぞ?」



同じクラスのりょうだった。

夏休みだが、補習にでも出ていたのだろうか?

と思って思い直す。



そういえば、学年10位以内に入っていたことを思い出したのだ。



「……夏祭りのボランティアなんだ」



僕がため息をもう一度つくと、良は苦笑して、憐れむ。



「ああ、この暑いのに大変だな。俺も夏祭りにはバイトに行くから。もしかしたら会場で会うかもな」



さわやかに言い放つと、準備があるといって去って行った。


「おい、あかり。おいていくぞ」



置いて行ってくれるなら、それでいいんだが……



僕の名前は永山なかやま あかり

16歳の高校一年生だ。

所属しているのは、さっきも言った通り、ボランティア部。

ごく普通の男子高校生だ。







つくづくついてない。

まさかの、この暑い日に、まさかの、から揚げ屋とは……



暑い熱気の中、ずっとから揚げをあげ続けるなんてただの拷問だ。

もうそろそろ、無心になり始めたころ。


「灯、休憩行って来いよ」


やっと休憩の順番が回ってきたらしく、油のまえを離れる。

少し祭り会場から離れた神社へと続く階段に腰かけて、息を吐く。

ここから見ると、祭りの会場がひどく滑稽なものに見えた。


見渡す限りの笑顔。

手に水風船を持った子供、手を繋いで歩くカップル、子どもを優しげに見守る大人たち。


「くだらない」


子どもは好きだが、親は好きじゃない。

だから、孤児院に生きたいわけだが。



「あれ? 灯。ボランティア終わったのか?」



僕は冷めた目で会場を見ていると、横から声をかけてきた人がいた。



「良……」



ラフなTシャツとズボンをはいた良がかき氷をもって立っていた。

手に持っているのは二つなのでもとからここに僕がいることを知っていたのだろう。


「ほい、余ったから。やるよ。頑張ったみたいだし」


全てを見透かしたような笑顔で、良がかき氷を手渡してくるので、僕は大人しく受け取った。

僕が受け取ると、良は隣に座って、自分もかき氷を食べ始める。


「さっき、祭りの明かりを見て、何を思ってたんだ?」


また会場をそれとなく見ていたら、今度は続きを促すような声が聞こえた。


「別に、ただ、なんとなく……幸せそうだなって」


そう、幸せそうだったのだ。

とても、とても



「お前は、幸せじゃないの?」



そういわれて、思う。

確かに、僕もさっきまではアレの中に混ざっていたのだ。


良に言われて、僕の中にたまっていた黒い何かが、ぱっと霧散していった。

何かお礼がしたかったが、残念ながら今持っているのは、空揚げにつけるマヨネーズだけだ。


「ありがとう」


なんとなくつぶやいて。

僕はまた祭りの明かりの中に戻っていった。







後日、良にはマヨネーズをあげた。

気分を害したら御免なさい。

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