相談です。
昼ご飯の食器を洗いながら、俺はぼうっと昼寝をしているばーちゃんを眺めた。
Tシャツの袖から覗く腕は折れそうに細い。
俺が小さい頃よりも確実に痩せている。
「どうしたもんかな……」
『飯を食わせればいいだろう』
小さな呟きに答えをくれたのは、赤織様だった。いきなりのことだったので、皿を落としかける。
『そんなに驚くことか?』
「ビビるっつーの、そんなに急に出てこられたら!」
ふうむと白い手を細い顎にかけ、赤織様は考え込む。
『成る程、食ってほしくても食ってくれんという訳か』
「そうなんだよ。なんかいい方法ねーかな?」
うわ、妖怪に普通に相談してる俺って……。
そんな俺の心を読んだのか、彼は少しだけ眉をしかめたが、一瞬で元の顔に戻った。
『食いたいと思わせればいいんじゃないか?』
「だからそれをどうしたらいいかって訊いてんの」
『宮ノ佑が作ればいいのよ!』
会話に加わって来たのは、氷室だ。
「俺がぁ?」
正直面倒くさい……。
『お世話になっているばあさんの為だろ、面倒とか思うな』
「う、」
言われてみればその通りだ。
『そうなると、次は何を作るかよね!』
『私は鯉の煮しめが食べたい』
「それは赤織様個人の希望だろ」
『あたしはオムライス!』
「だーかーらー」
ああもうこいつらはっ。
奴らに聞いていても、なにもいい考えは浮かんでこない。
ちょうど最後の皿を洗い終えたところだ。
『ちょっと、どこ行くのよ』
「料理本探してくる」
ばーちゃんも料理本の一冊や二冊、持っていた筈だ。
確か本棚にあった筈……と、俺はごそごそと棚を漁り始めた。