さぁ、面白そうだ(母さんが、ですよね… by長男)
「何か、勘違いしておられるようですね」
大衆の陰から見てると、中々に愉快な状況だなぁ。
あ、パール(ゲンデルの都市長、三十歳・童顔)、腸煮えくりかえってるな。あれは。
「何が勘違いか。賢者などとのたまっているが、その実、外道に落ちた魔導師か何かであろう。それを賢者として讃えるなど、古き国家ゲンデルも落ちたな」
ふんと鼻で笑うグランドの将軍……。
腹立つな。ていうか、国家元首であるパールを馬上から見下ろすって不敬にもほどがあるだろ。
「……かの賢者は、徳高き方。我らの力となり、魔境と呼ばれた森を神聖な物としてくれた偉大なる方です。異国の方に、罵倒されるいわれはございません」
……少し、雑になったな。言葉遣い。
「卑しきはぐれ魔導師ごときを敬うとは……」
しぐさが嘘っぽいぞ。芝居がかってるけど、大根役者もいいとこだなぁ…。
カナメとリオン、連れてこなくて良かったなぁ…。絶対爆笑してるな。
というか、キョウとカノン、静かだな…。
チラッ……。
……この子達、グランドに興味がないね。
「何?母様」
いや、興味ないの?
「特に?」
じゃぁ、何でついてきたの?
「パールおじ様の政治家姿は珍しいから」
確かに……。なるほど。
「母さん、納得しないでください」
滅多に拝めないよ?
「それには納得ですけど、それで終わらせたらパールおじさんが可哀そうですよ」
別にどうでもいいよ。で、あんたはどうしているの?
「一応、当事者なので」
……変に責任感が強いなぁ。
「変って……」
落ち込むほどのことは言ってないけどなぁ…。
まぁ、がっくりしてるキョウはほっとこ。
あ、なんか、若いのが出てきた。
高校生くらいかなぁ?
「コーコーセー?」
あぁ、こっちの話。気にしなくていいよ、カノン。
「将軍、もしかしたら、都市長殿はその賢者とやらに暗示でもかけられているのでは…?」
あ、なんか、あほらしいこと言い始めた。
パールだけじゃなくて市民の人達も呆れたような表情になってる…。
「おぉ、勇者殿!さすがです。きっとそうに違いありません」
大仰に頷いてるけど、絶対バカにしてるよね。
ただ都合の良いことを言ってくれたから乗ってるだけだよね。
ていうか、勇者って……。
「失礼だが、貴方は?」
「まだ名乗っていませんでした。俺はユウキ=ロフィカーレ=サエキ、グランドの勇者をしています」
まるで当然みたいな言い方ね。
つまり、ここ二年、周辺小国がグランドに併合されている要因ってことでしょう?
どういう嘘を吹き込まれてんだか知らないけど、堂々と勇者って言うのね。
「……召喚された方ですか」
お、パールが本気になったわね。
目の輝きが違うわ。
ちょっと、面白いかもね……。フフ。
……何かな?キョウ。その気持ち悪い物を見るような目は?
「いえ、別に……」
……いいよ。今回は見逃してあげよう。
面白くなりそうだしね。
って、静かだと思ってたら、カノン寝てるんだけど……。
「……いったん、家に連れて帰ります」
了解。
さて、どうなるかなぁ……。
パールは一筋縄じゃいかないよ?グランド、そして、グランドの勇者様。