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グランドの事情(…どうでもいいんだけど by母、ですよねぇ… by長男)

 二十年前、北方の大国グランドは強国だが極寒で厳しく豊かと言い辛い国内環境のため、他国の侵略を決めた。

 文献にたびたび登場する異世界から召喚された勇者や魔導師の伝説に目をつけて、召喚を行う。


 ひとえに、自国の民が傷つかないようにするために。


 召喚されたサナカにとっては迷惑で外道な思いだが。


 十代の少女であることに落胆しつつも、そう何度も召喚(十数人の魔導師や神官で行う大魔法)はできないので、妥協(失礼)してサナカを鍛えようとした。


 だが、疑心暗鬼になって、大人や持ち上げようとする人間が信頼できないサナカは、勉強や技術習得には意欲的(帰れないと分かったので生きていくための術を吸収しようとした)だったので、その能力の高さはすぐさま知れ渡った。


 率先して魔法を教えたが、一向に心をひらかない。


 懐柔の為に、周辺国に美男子と名高い王太子が接近した。

 だが、自分の容姿が平凡であると自覚しているサナカにとって、笑顔で近づく美形は疑わしい存在以外の何物でもなかった。


 そういったもどかしい状態(グランド側にとって)が続いて、およそ一年。

 魔導師の一人が、外に出ることさえ嫌がるサナカにブチ切れて、召喚の目的を暴露した。


 戦争のために呼ばれ、しかも、その理由が理不尽極まりないものであることを知り、今度はサナカがブチ切れた。


 本で覚えた魔法を連発し、魔導師を追い出して、目につく金目の物を袋に入れて、住んでいた離宮をぶっ壊して逃亡した。


 平穏と平凡が良い、と思っていたのに、戦争のために呼ばれたのはショックだった。


 さらに、自国民を傷つけたくないから、という君主としては慈悲深いかもしれないが異世界人にとっては腹立たしい理論を突きつけられたので、怒髪天をついた。


 あらゆる魔法を駆使して逃亡し、半年間逃げ回ってたどり着いたのがゲンデル。


 以降、サナカはのんびりしながら現在、魔女(ゲンデル内限定で賢者)と呼ばれるようになった。






 グランド側にとって、サナカを捕まえることはできなかった。


 離宮をぶっ壊したのは反逆罪に問えるが、サナカは異世界人で、しかもグランドの戸籍を与えていなかったので、反逆者の捜索として各国に軍を入れることができなかったのだ。

 しかも、途中から全く足取りが負えなくなった。


 いたしかたないので、再び召喚できるようになるまでを待つことになった。


 その間に、王太子には妃と妾の間に子が生まれた。


 正妃とは政略で愛情はなく、義務感から何日かに一度は寝所を共にしていた。

 それ以外、王太子の寝所にいたのは寵姫である妾だった。

 王太子の乳兄妹だった妾が懐妊するのは早かった。

 生まれた子は女の子。これが十六年前。


 事件が起こったのはその二年後。

 再び妾が懐妊した。

 生まれたのは男の子。


 さらに二年後、正妃がようやく懐妊した。

 正妃は部下の魔導師に、その子供を殺すようにと命じた。

 第一子を生まれたことでも悔しいというのに、第一王子の生母にまでなられては、正妃としての立場がなかった。


 魔導師は自身の命が惜しかったから頷いた。

 王太子から王族の証としての虹水晶を渡され、きつく握りしめていた幼児を機会を見計らってさらった。

 その後、魔境と呼ばれるゲンデルの森なら確実だろう、と魔導師は幼児をその森へと転送した。

 すでに魔境ではなく、ゲンデルにとっては賢者の住処となっているとは知らずに。


 もちろん、王宮内は騒然となる。

 妾は半狂乱となり、王太子は烈火のごとく怒り狂った。

 第一王子の捜索を国を挙げて行おうとしていた王太子は、王より叱責を受けた。


 その頃、正妃が陣痛を起こして産屋に入っていたのだ。


 自身の子供が生まれようという時に、寵愛している妾の方にばかり目を向ける王太子の目を覚まさせた。


 王宮の誰もが王子の誕生を望んだ。

 そうであれば、王太子の怒りも何もかもが鎮まっただろう。

 だが、二日にわたる難産の末、生まれたのは王女だった。


 王子の行方を案じ、捜索しようとする声は上がったが、それはすぐに静まった。


 王太子妃が、出産後の肥立ちが悪く亡くなったからだ。

 それから半年、喪に服した。


 その三年後、妾が王子を出産した。


 さらに二年後、王太子は王になった。

 十三歳の成人を待って、王子を王太子にすることを発表した。


 そして、現在から二年前、グランドはあらたに異世界人を召喚した。

 だが、翌年、妾と王子が不慮の事故死を遂げる。


 王妃を迎えていたが、こちらも政略に過ぎず、王子は生まれていたので全く夫婦としての生活はなかった。その為、子がいなかった。


 グランドでは男子以外が王位につくことはできない。


 そこで、浮上したのが十二年前に姿を消した王子リヒャルド。


 妾の子である為に、血筋は少々悪くなるが、運良く、王太子時代、正妃が生んだ第二王女が存在する。

 わずか十二歳だが、来年には成人し、生母に似て美しい。


 第二王女と婚姻させれば、血筋的問題が解決する。


 グランドでは、伝統的に王族男子の正妃は王族の血筋ではなくてはならないとされている。

 基本は従姉妹だが、筆頭王位継承者(王太子)の正妃だけは、異母姉妹と決まっている。

 亡くなった王太子妃も現在の王妃も異母妹。


 法的には何ら問題はなかった。


 当時、一番怪しかったのは王太子妃(故)だったので、その周辺を探れば、魔導師の一人に行きついた。

 尋問(という名の拷問)の末、ゲンデルの魔境に転送したことが知れた。

 今では魔境などとは呼ばれていないことはグランドもさすがに知っていた。


 大臣の一人を使者にして、騎士の一部隊を連れて王子を迎えに行った。






 当然、帰ってくるものと信じ切っていた。


 自分達の思い通りに行くのが当然と思っていたから、帰ってきた使者達のから話を聞いて、王達は王子リヒャルド(キョウ)の精神を疑った。

 何とも自分勝手な考えだ。


 いくどかの会議の結果、王達はある結論に行きついた。


 ゲンデルの賢者などという得体のしれない存在に惑わされているのでは、と。



 そして、彼らは決定する。


 自分達の王子を救うため(勘違い)、ゲンデルの賢者などという怪しげな存在を使うゲンデルを裁くため(何様か)、勇者(異世界人)を伴った軍を派遣することを。


 グランドのゲンデル征伐(勘違いも甚だしい)。


 それに、各国は揺れた。

 ゲンデルだけは呆れかえっていたが。


 十八年に及ぶ、ゲンデルの人々とサナカとのつながりは強固だった。




 そして、やってきたゲンデルで、グランドは打ちのめされることになる。






征伐……罪のある者や反逆者、悪党などを攻め討つこと。


悪党はグランドです。

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