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……容赦しなくていいですよね?(by長男)

ちょっと長めです。

 都市長からの依頼品を届けに行った時、このタイミングであることを心底憎みました。


 誰を?もちろん、母さんと都市長です。

 あ、都市長はかなり若い方なんですよ?確か三十歳です。十二歳になる双子(男)と八歳になる女の子、五歳になる女の子、四人のお子さんの父親です。

 ……成人直後(十三歳)にご結婚されたそうで……。


 依頼品は末娘さんのおもちゃ(ままごと用品や木馬など)です。

 何故か、ひどく懐かれています。都市長夫妻にも気に入られているようです。

 きっかけも理由も全くわかりません。


 ………すみません、話が脱線しました。




 お届け物をして、幼馴染(生まれた時から一緒です)の双子と一緒に市場を見ていた時です。

 護衛がいないと外に出られない二人は、護衛が嫌なようで、僕が来た時は僕に護衛を頼みます。

 別に良いんですけどね?

 大人と一緒よりも幼馴染と一緒の方が気兼ねしないのは分かります。

 ですが、それをあっさりと了承するのはいかがなものでしょう?僕も子供ですよ?


 また脱線しました……。


 まぁ、それだけ現実逃避をしたい、ということなんですよね……。


「何だよ、お前ら」


「そうだぞ、ぶしつけにもほどがあるぞ」


 貴方達の態度も結構失礼ですよ?相手が誰か分かってます?

 ……なんて言いません。双子は僕をかばうように前に立って、彼らを睨みつけているんです。

 僕を守ろうとしてくれる幼馴染(僕より小さいですが)に、ちょっと感動しました。

 いつもはわがままですが、基本的には妹思いで優しい双子なんです。


「我らはグランドの使いだ。お前達に用はない。そっちの子供に用がある」


 ……使い風情が、随分な口のききようです。

 確かにゲンデルは小さいですが、れっきとした国家です。というか、グランドよりよっぽど古くから存在する格式ある国家です。

 その後継者である双子に対して、無礼にもほどがあるでしょう。

 ………残念なことに、国力は雲泥の差なので言ってもどうしようもないですが。


「こっちにはない」


 ……確かにその通りですが、どうして君が返答するんです?いえ、別にいいんですけどね。


「お前には聞いていない」


 その通りですね。

 というか、こんな街中で何してるんですかね、貴方達は。


「少年、そのピアスはどうした」


 見下したような視線と言葉に、イラッときたのは秘密です。

 まぁ、双子は気付いたようです。ビクッと震えていました。

 すみません。


「……物心ついた時には持っていました」


「誰からもらった」


「知りません。母曰く、最初から持っていたそうなので」


「母、だと?」


「えぇ、湖のほとりに捨てられていたのを拾って育ててくれた唯一無二の母です」


 はっきりとくぎを刺しておきます。

 ここまでくれば、何となくわかりました。


 かつて、ピアスをもらった時の母の言葉を思い出したのもあります。


 カノには負けますが、僕も頭はそれなりにいい方です。

 この水晶のことは知らなくても、今までのことで予測がつきます。


 ……なんか、使いの輩の顔が輝きだしました。慌てて膝をつき、騎士達もひざまずいています。

 気持ち悪いです。


「お探しいたしました。リヒャルド殿下」


 誰ですか、それ。


「父上―――陛下も心配しておられます。ささ、早く参りましょう」


 にこにこと笑顔ですが、下心が透けてますよ。

 ちっぽけな都市国家の長ごときに頭を下げずに済んだ、とか。

 捜索の手間が省けた、とか。

 従順そう(ただ当たり障りなく接してるだけですが)だ、とか。


 何か知りませんけど、僕が一緒に行くこと前提でいるのは腹が立ちますね。


「何勝手なこと言ってんだ!」


「そうだ!キョウはキョウだ!」


 ……幼馴染達に感動してます。

 まさしく、思っていたことを代弁してくれました。


「それに、キョウがいなくなったら困るんだ!」


「ぼく達の遊び相手をしてくれる人がいなくなるじゃないか!」


 ………前言撤回です。

 立場を分かってるんですか。

 ほら、市場の人達が必死で笑いをこらえてますよ。

 というか、市場の人達も良く笑っていられますよね。

 やっぱり、母さんへの信頼ですかね。


 まぁ、僕も母さんがどうにかしてくれると思ってます。

 僕が選んだら、母さんはそれを応援してくれると確信してますから。


「ゲンデルの小僧ごときが、リヒャルド殿下に何と言う無礼を!おい、つかまえろ」


 使いの輩の一声で、騎士達が動き出します。

 おそらく、双子の正体が分かっていないのでしょう。

 問答無用で幼子に武力行使とかバカですか。

 といか、僕がいつそのリヒャルドだと言ったんですか。


 腹が立ったので、少し本気を出します。


 ドゴッ。


 あ、すみません。武具商のおじさん。勝手に槍使ってしまいました。

 今度、代わりの品(槍とか鎧とか)をお詫びに持ってくるので、勘弁してください。

 ……え?気にするな?でも品はありがたくもらっとく?さすが商人ですね。たくましい……。


 ふっとんだ騎士が目を白黒させてますね。他の騎士や使いも。

 間抜け面ですね。

 まぁ、間抜けでバカなのは確認済みなので、はっきりと言っておきます。





「お帰りください。ここに、リヒャルドなんて名前の子供はいません」





 けして離れませんよ。母さん。


 貴方に恩を返していないこともそうですが……。

 何よりも、僕はこの生活が好きなんです。


 騒がしくも個性豊かな弟妹と、面倒くさがりでも愛情深い母。

 ちょっと困ってしまう幼馴染達。

 可愛がってくれる都市長夫妻。

 親しくしてくれるゲンデルの人達。


 僕の平穏と幸せは、ここなんです。

 だから、奪うのなら、壊すのなら、容赦はしません。





「僕は、ゲンデルの賢者の長男キョウです。さっさと消えてください」





 母さんが不快な思いをする前に。

 ……機嫌が悪くなった母さんは大変なんです。

 どのようにかは言いませんけどね……。




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