やっぱりお前らか!!(by母)
作った薬や武具(魔獣の牙などを使った高級品)と引き換えに、商人が日用品を置いて行く契約になっている。
これは、都市長が私と交わした契約で、代替わりしても続いている。
ゲンデル全体で、私(最近は息子達)が作る物は人気があるらしい。
物々交換は五日に一度。
ちょうどこの時、子供達はみんな出払っていたので面倒だけど私が応対に出た。
長男のキョウは、都市長からの依頼品(何故か知らないけど子供の遊具)を納めに。
次男のカナメは、いつもなら長男がやっている狩猟に森の奥に。
長女のリオンは、裏手の畑に今日の夕飯の収穫と同時に家畜(主に鶏)の世話に。
次女のカノンは、薬草や木の実を集めに湖周辺に。
………誰々がどこに、て昔話みたいだな。
いや、それはともかく。
そう言った経緯で全員出払っていて、七十後半の商人と物々交換の傍ら世間話をしていた。
まぁ、日課みたいになってるし、世間情勢を知れるから別にいいんだけどね。
意外に話し上手で、昔は傭兵をやってたらしくて博識なんだよね。うん、聞いてるだけでも楽しい。
柔らかな香りの香草茶を飲んでいると、ふいに商人が口にしたのは大嫌いな国の名だった。
「そういえば、街の方にグランドの一行が来とるらしいぞ」
「へぇ……」
「なんぞ知らんが、物々しい雰囲気でのぅ……。騎士達の部隊が使者と一緒に来とるらしい」
「それはまた物騒だねぇ」
「そうじゃのぅ。全く、ゲンデルはここ数十年荒事はやっ取らんのじゃ。他国の平和を乱さんでほしいのぅ」
「……………」
「ん?どうしたんじゃ?お前さんも、平和が良いと言っておったではない」
「ヤン老……。もしも、その荒事が私のせいだったらどうする?」
「どういうことかの?」
「私が受け止めた小さな命が、奴らの目的だったとしたら?」
「……ほぅ、なるほどのぅ」
遠まわしな私の言い方に、年の功か悟った商人―――ヤン老はうんうんと頷いた。
「わしは、小さな命の意志こそが大切じゃと思うぞ」
「そう……」
「安心せい。お前さんが成してきたこと、お前さんが育てた小さな命のこと、わしらはようく知っとる。じゃから、わしらはお前さんらの味方じゃ」
あぁ、そういうだろうと思っていた。
そう言ってくれるだろうと思っていた。
卑怯だなぁ、と思うんだよね。こういう時。
どう返ってくるか分かってて、言ってるんだもん。
ずっと、不安だったんだよ。
キョウを拾った時から。
あの子が持っていた水晶を見た時から。
どこかで見たと思ったんだ。
成長していくあの子の面影が誰かとかぶったんだ。
それは、私が召喚された時、会ったグランドの王子(当時)だ。
長い付き合いじゃなかったが、腹黒いことだけは分かった。
なんせ、あいつは私に隣国侵略をさせようとしていたんだから。
………良い息子に育ってくれたと思って安堵してたら!
私の平凡な願いを打ち砕くのは、やっぱりあんたらかッ!!