実の親?知りません、そんなの。てかいたんですか?(長男 ver)
僕が母さん(名前は知りません。教えてくれないんです)に拾われたのは、二歳の時です。
もちろん、記憶なんてありません。
カノは生まれた時から記憶しているそうですが、僕にそんな人外能力はありません。
母さんが森に住み始めて六年と数ヶ月後のこと。
森の奥、かつては魔物(母さんが退治した)が住んでいた湖のほとりに捨てられていたそうです。
絹のおくるみに包まれ、小さな水晶を握っていました。
光に透かすと虹色に輝く不思議な水晶は、母さんが魔法でピアスに加工してくれました。
成人する十三歳の誕生日(拾われた日ですが)に、耳に穴をあけて初めてピアスをつけました。
その時、母さんが言った言葉を忘れられません。
「いつか、選ばなくてはならない時がある。その時、迷わずに自分の道を選びなさい」
……いつも適当で、いつだって好きなことしかしなくて、生活しなくちゃいけないから必要なことはやるけれど、自分の思うとおりにしか動いてこなかったのに…。
改まった口調で、真剣な表情で言われて、どう反応していいのか分かりませんでした。
四歳の時に、弟ができました。
その翌年に妹、さらに翌年にもう一人妹ができました。
二人目の妹ができた時、母さんは僕達全員に、僕達が捨て子だと言うことを告げました。
ショックでしたが、母さんは母さんです。
顔も知らない両親よりも、母さんの方がずっと大事です。
母さんだけが僕の親です。
剣や弓の使い方を教えてくれました(かなりスパルタで死にかけました)。
魔法や勉強を教えてくれました(間違えた時はお仕置きがあるので怖かったです)。
家事とか大工仕事とか教えてくれました(どこで学んだんでしょう?特に大工仕事)。
……だから、母さん。
僕が思う通りに選べと言うのなら、僕は母さんを選びます。
たとえ、実の両親が迎えに来ても…。
「お帰りください。ここに、リヒャルドなんて名前の子供はいません」
その両親が、母さんが大嫌いなグラントの王族ならなおさらです。
しがみついてでも、離れませんからね?母さん。




