ひとまず現在と家族説明(え、何で? by長男)
勝手に召喚しくさったグランドと言う国から逃亡をかまし、魔境と呼ばれるこの森にたどり着いたのは十八年と数か月前。
山と河と谷に囲まれた小さな都市国家ゲンデルの北、当時は生贄を要求する魔物のすみかだった。
まぁ、実際は魔物じゃなかったけど。
退治するからこの森に住んで良い?
構いませんけど?
軽い(私と都市長の)やりとりで、魔物を退治(実際は違うけど)して定住権を獲得。
適当な場所に適当な魔法を使いまくって家を建て、適当な規模の畑を作って井戸を掘って……まぁ、適当に環境を整えてのんびりと過ごし始めた。
途中色々あって、恋愛も結婚も妊娠も出産もすっとばして母親になって、いつの間にやらゲンデルの魔女(ゲンデルの人からは賢者と呼ばれる)と呼ばれるようになった。
意味不明…………すっとばしすぎ?
「母さん、さっきから何ブツブツ言ってんの?」
なんでもない。
というか、狩りに行ったんじゃなかったの?
「それ、朝食の時の話だよね?もう昼なんだけど?」
……おぉ、いつの間に…。
「母さん…」
あ、呆れたように溜息ついたな。生意気。
「い、いたっ!いたいって!つねんないでっ!!」
ごめんなさい、と涙目で叫ぶから離してやった。
虐待したいわけじゃないし。
「……軽い虐待だよね」
よし……カナメ、リオン、やってしまえ。
「えっ、ちょっ、まっ………!?」
「「兄さん/キョウ兄、覚悟ッ!」」
「わぁぁぁっ―――?!」
おぉ、驚いて叫んで慌てながらも弟妹の攻撃をかわして反撃して沈めた。さすが長男。
「いい加減、ことあるごとにカナとリンをけしかけるのやめてくれない?!」
おもしろいからやだ。
………あ、崩れ落ちた。
いいじゃん、別に。これぐらいしか醍醐味ないのよ。子育てなんて。
「多分、大多数の母親は自分の子供で遊ばないよ……」
お腹痛めてないから分かんない。
「そういうことをあっさりと……」
事実だし。
それに、今さらでしょ。
「………そうですね」
あ、またしてるなぁ……そんな顔……。
弟妹を引きずって戻ってった長男に、ため息をつく。
複雑そうで読みづらい表情をするようになった長男に、嫌な予感がある。
……ようやく得た、自由で穏やかで平和(?)な日常……。
壊されてたまるものか……!
あ、一応、家族紹介しとく。
長男:キョウ(14)・狩猟(武器全般)と大工仕事担当、弟妹の躾係、漢字なら『京』
次男:カナメ(14)・戦闘と農作業担当、同い年だけど弟(気にしてない)、漢字なら『要』
長女:リオン(13)・黒魔法と家事担当、活発でじゃじゃ馬だけど乙女、漢字なら『鈴音』
次女:カノン(12)・白魔法と医療担当、無口無表情で一番母似かも、漢字なら『花音』
……改めて言ってみると、上手いこと分かれてるなぁ。
ちなみに、全員血のつながりはないから。
もちろん、私とも。
三話目にしてシリアス要素が入って来た……。何故……。