本気じゃありませんよ (本気のくせに… by長女)
一部読みづらいと思います。
南方には十数の部族が乱立し、二百年ほど前まで戦争ばかりをしていた。
中でも大規模な四つの部族長がそれぞれの拠点である地方をまとめ、連合として国家を樹立。
それがラーガンディ建国の逸話だ。
有効と平和を保つため、族長達が集まって話し合いをした。
結果、婚姻による血縁を結ぶことが決まった。
オーソドックスで分かりやすく、目に見える形に落ち着いたのはそれが一番だと考えたからだろう。
婚姻は、それぞれの地方にいる部族長の娘(場合によっては息子)を決められた順に代表者の元に嫁がせる(もしくは婿入り)ことが決まった。
さらに、代表たちは北から時計まわりに娘を送り出すことにした。
北代表の娘は、東代表の元へ。
東代表の娘は、南代表の元へ。
南代表の娘は、西代表の元へ。
西代表の娘は、北代表の元へ。
…他人が聞けば面倒なことこの上ないが、彼らにとっては争いをなくすために苦心して出した事案なのだ。
ちなみに、妻が二人、ということになるのではなく、代表者の娘が正妻、部族長の娘が第二夫人、という形である。代表者の娘との間に子が作れなかった場合の予備(言い方が悪いが)だ。
代表者の娘と相性が良く、仲が良ければ部族長の娘は正妻付きの女官という立場になる。
南方での女の地位は低いのだ。仕方無い。
四つの内の二つ、南のジェオダと西のマノーグの長がゲオルグとベアトリーチェだ。
……大陸最強の武闘民族連合、とか言われている以上言わずもがなではあるけれど…。
代表一人で砦ぶっ壊すほどの力があったり…。
…人間やめてるだろ、こいつら。
ミルドレッド女王も非常識(王なのに一人で来たり…魔法は駆使していたみたいだけど…)だったけどなぁ…。
何も壊さなかっただけましだな。それに、開口一番の言葉も、冗談だったし(笑いながらだったからねっ!)。
でも、同じ女王(厳密には違うけど)なのに、これは何なの?
美人だけど、戦士として一流かもしれないけど、ボンキュッボンだけど…………チッ。
あぁ、なんでもないよ? うん、舌打ちなんてしてないって…。
「潰してやっからとっとと出てきな、誘拐犯の国賊」
…直後、魔法をぶっ放さなかった自分をほめたい。
いや、それ以上に魔法を使おうとした私より早く、若造りババァ(名前? 知ったことか)の頭を張り倒したゲオルグ様を讃えるべきかも…。
表情がひきつってたから、もしかしたら来るまでの間に言い含めてたのかもしれないなぁ。
……その後の口ゲンカ(はたから見たら、諭す親とそれに反抗する脳足りんな娘の図だ)を見てたら、それが当たってるのが分かったけど…。
苦労してらっしゃいますね、ゲオルグ様。
……しみじみしちゃったよ。この時だけね。
「アンタが言ったんだろうがっ! ここに住んでる女にガキを取られたって!」
「預けたっつったんだ! このバカがっ。小国ゲンデルといえど一国を守ってきた賢者殿だぞ! 敬意を払え!」
「あぁ?! たかが小娘になんで丁寧にしなくちゃならないんだい! 都市一つ守れる魔導師なんて北方ならいくらでもいんだろうがっ!」
「…この勉強嫌いがっ! ゲンデルがどういう場所かもしらねぇで言うんじゃねぇ!」
………延々と続いた口論。
最終的に、傲慢ババァが剣を抜きかけたから、ゲオルグ様が再び張り倒した。
今度は遠慮容赦なく全力らしく、ババァは気絶した。
それをひょいを担いで、武装を解除して深々と頭を下げ、丁寧(口調はともかく)にあいさつしてくれたゲオルグ様に高感度が上がるのはしょうがないと思う。
ひとまず、ババァも話には必要らしいので起きるまでどこから来た誰なのかというのを聞いていた。
…やはり武闘民族らしく打たれ強いのか、数分で起きたババァはすぐさまゲオルグ様につかみかかり、私への罵詈雑言を含みながら口論を再開させた。
まぁ、ゲオルグ様は疲れたように溜息ついてたけど。その反応に眉を吊り上げたと思えばこっちを見て言いだすし。
…これ、キレても問題ないよね? というわけでキレた(前話)
ようやく手をどかしてもらって顔を上げたババァに、まず言うことが一つあるわね。
…ひとまず、謝ってくれない? 百歩譲って土下座で許してあげるから。
「何で謝らないといけないんだいっ」
人んちの玄関壊しといて何言ってんのバカなのアホなの常識無いのというかゲオルグ様が止めてくれなかったら確実に魔法ぶっ放してキョウとカナメが特攻してリオンが魔法連発してたねああそれともそうなった方が良かったのそれはゴメンネなんだったら今からでもやろうかうんそうだねそうしようその方がすっきりするし話もしやすいよねゴメンネ自殺願望があったなんて知らなかったものだからつい仏心出しちゃったんだよねなんだったら広場で全裸土下座でも良いよ…フフフフ
(↑ ノンブレス)
「…賢者殿、怒りは十分に理解した。賢者殿の怒りは尤もだ。オレらが非礼だった。すまねぇな。この通りだ。こいつはオレが責任もって黙らせるから、勘弁してくれねぇか?」
……良い方ですね、ゲオルグ様。ちょっと言ってみただけですから本気じゃないです。
なんか言った? リオン。え? 言ってない? じゃぁ、きっと「本気だったくせに…」とかは空耳だね…。
「良いか? ベアトリーチェ、いい加減黙れ。話がすすまねぇ。聞いてりゃ、おめぇの誤解も解ける。…それに、次は本気で土下座させられんぞ」
……最後が小声だったのが気になるけど、ババァが黙ったからよしとしよう。うん。
まぁ、ひとまず、ゲオルグ様。リオンの立場と説明を…。
「おう。そうだな。ミ……じゃねぇ、リオンだったな。リオンはオレにとっては弟の娘…姪にあたる。ベアトリーチェにとっちゃぁ、息子の嫁になるんだ」
………………ん?
「順を追って説明するから、待ってくれ」
………なんか、長くなりそうだなぁ。
しょうがない。
リオン、お茶。
…一つにまとめようか、次にしようか思案中…。