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…もう何でも来いって感じ…? (byパール)


 千年前の戦いから現在まで生きている存在はこの世に二人しかいない。

 一人は竜人族の王。そして、もう一人がエルフの女王ミルドレッドだ。

 前者は老齢で半分隠居状態のため、表に出てくることはほぼない。

 対して、後者は長命なハイエルフの中でもさらに長命である為か、自ら他国との交渉に出向いたりする。

 それは大陸の西に限ったことであり、東と南北、中央ではその姿を見た者はいない。


 今日この時を持って、その常識は覆るのだが…。









 来るなら来るって行ってほしいんですが…。


「それでは妾がつまらぬ」


 さようですか…。


 生ける歴史に文句は言えない。

 言えるのはサナカだけだ…。


「なんじゃ、遠い目をして」


 いえ、なんでもありません。

 同盟のお話ですよね。こちらとしては願ってもないことですが…。


「こちらとしても色々と理由があっての」


 グランドの件だけでなく、ですか?


「あれはどうでもよい。愚者の愚言と愚行など魔女殿一人でどうとでもできよう」


 …ごもっともで。


「じゃが、その火の粉を我が曾孫がかぶるのはいただけぬ」


 なるほど…。


 すごい説得力…。

 ある意味、ハリス殿以上の伝説だからなぁ…。

 傍若無人で身内主義なところが『孤高の鋼女王』と呼ばれたゆえんだろうし。


「それに、そなたの祖先とは顔見知りじゃ。少しばかり手心を加えてもよかろう」


 ありがとうございます。

 差支えなければ、そちらの理由を聞いてもよろしいでしょうか?


「嫁さがしじゃ」


 ………はい?


「じゃから、嫁じゃ。別に竜人であろうがドワーフであろうが構わぬのじゃが、ここらでこちら側と縁を持っておきたいと思っておっての」


 …御子息方はご結婚されていらっしゃいますよね?


「うむ。孫じゃ。末娘の末っ子での。曾孫とくっついてくれればよいのじゃが、本人達の問題ゆえ、友好の証と留学、ついでに嫁さがしを名目にしたいと思っておる」


 …非常に納得しました。


 他国の王族が他国に留学する際は、見合いを視野に入れていることが多いからな。

 普通のことか。

 ましてや、西側は大山脈と渓谷のせいで『西大陸』とさえ呼ばれるほど関わり薄いからなぁ…。


「外交上、いつまでも身内で固まっているわけにもいかぬ。これを機に、中央や東側と友誼を結びたいと思っておるのじゃ。…東は良い思いはせんじゃろうがな」


 いえ、特に気にしておられなかったので、問題ないかと…。

 一つおたずねしても?


「そうか。…構わぬぞ?」


 顔見知り、というのならグランドの先祖も、では?


「ふむ。その通りじゃな。妾も、あやつは嫌いではない。じゃが、子孫は嫌いじゃ」


 あぁ…。


「友人の子だからといって、どんな悪人も受け入れることはできまい? そういうことじゃ」


 なるほど。

 お答えいただき、ありがとうございます。


「よい。そなたは祖先と違って礼儀を忘れておらぬようじゃからのぅ」


 …なんかやらかしたんですか、うちの先祖…。


「あそこまであからさまに見下してきたのはそなたの祖先だけじゃ。慇懃無礼とはこのこと、と納得したものじゃ」


 申し訳ありません…。


「祖先は祖先。そなたはそなたじゃ。謝罪は無用。それに、そなたの祖先は妾達と対等に渡り合った稀有なる人間。多少の尊大さは構わぬ」


 ありがとうございます。


「気にするでない。ところで、都市長殿」


 はい?


「そなたには娘がいるとのことじゃが、いくつになるのかの?」


 …八歳と五歳ですが。


「…さすがに幼すぎるのぅ」


 お相手には無理かと…。


「まぁ、十年くらいは妾達にとっては短いものじゃ。今後の交流に期待するとしようかの」


 はぁ…。



 王族の相手が人間―――問題ないのか。忘れてた。

 幸せになるんなら別に良いんだが、エーデルパレスはちょっと遠いよなぁ…。

 つーか、ガラクの一の姫が来るんだから、そっちの方がつり合うんじゃ…。

 うちはちっぽけな都市国家だしなぁ。

 歴史はあるけど金と権力はないし…。


 …本人達に任せるとしようかな。















 多分、ハリス殿とミルドレッド殿は真逆だ。

 だが、何故だろう。

 二人はきっと気が合うという確信がある。


 つーか、二人とも根回し良すぎるから。行動早すぎるから。何度も言うけど、一日で同盟締結ってありえねぇから。




 ミルドレッド殿の言葉が現実のものになるとは、この時は思ってもみなかった。

 ……ちくしょうっ(泣)






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