耄碌したかクソババァ (相手は一国の王…イエナンデモ by長男)
長女すっ飛ばして次女編。
東部諸国との同盟締結から一ヶ月。
一の姫がやってくるまで一週間を切ったある日。
ゲンデルの関所を抜けた一人の女性によって、ゲンデルは驚愕と混沌のるつぼに落とされた。
…うちの子供達はチートばかりか。
「ちーと、とはなんぞや?」
いえ、お気になさらず…て、気にしてませんね。
あ、それ長女が作った菓子です。薬草入りですけど…。
「ぶほぉっ?!」
やっぱりダメでしたね…。
五感が鋭い種族とは聞いてましたけどね。
王族はさらに、とも。
味覚まで、ですか…。
さすが、肉体を持つ精霊エルフ族女王でいらっしゃいます…。
「…なんじゃ、バカにされておるようにしか思えんぞ」
そんなまさか。
はるか千年を生きる歴史の生き証人、偉大にして真なる賢者、南大陸の酒蔵を空にしたうわばみ、各国の王子たちを誑かした魔性……えぇっと後は。
「そなた、いい面の皮をしておるの…。それを教えたのは誰……ガラクの若造か」
…まぁ、そこらへんしかエルフの女王をこき下ろした言葉を伝えている種族はないよねぇ…。
「普段通りに話せ、小娘。敬意も抱いておらぬくせに言葉だけ飾るな。不愉快じゃ」
じゃ、遠慮なく。
で、改めて、用件を聞こうかな。
エルフ族の国エーデルパレス、建国者にして当代女王ミルドレッド=サゥラ=ビアトリス陛下。
…わぁ、悪だくみしてそうな笑みがお似合いですね。
エーデルパレスは、ゲンデルより西へ国を三つまたいで大山脈と渓谷を渡り、五つの国をまたいだ先にあるエルフ族の国。…徒歩で行こうとすれば、半年はかかる。片道で。
エルフ族というのは、長寿族以上に長命だが、長寿族以上に繁殖力が低い。五十年に一人子供が生まれたら快挙である。さらに、同族同士で子供を造るのは非常に難しい。
その為、エルフ族は外見が非常に似通っている人間の国(限定的)と友誼を結び、縁組を国同士の政策の一環として行ってきた。
それにより、人口は増えていないものの、安定した出生率を得るにいたった。
この政策を取り入れる前は、エルフは非常に閉鎖的な種族だったのだが、当代女王ミルドレッドが民を説得し、外界に向けて門戸を開き、交流を開始した。
当初は色々と問題が浮き上がったらしいが、現在はつつがなく平穏にやっているのでまぁ良しとする。
ちなみに、エーデルパレスの前身はエディオスという小国である。その国の王と恋に落ちたミルドレッドが女王としての立場を守りつつ、恋を叶えようとしたのが政策の発端らしい。
…真実を知るのは、女王、そしてその側近(生存者は三割以下)のみ。
側近達が墓まで持って行く、闇に葬り去ると決意した(七割以上は実行済み)歴史のひと幕である。
「ぶっちゃけ、そなたの所におる妾の……何番目かの孫が産んだ娘をもらいうけにきたのじゃ」
今、数えようとして諦めたね?
つぅか、数え切れないほどいるの?
貴方の御夫君は人間では?
「うむ。妾の夫はただ一人、確かに人間じゃった。しかし、子は五人ほどおるからのぅ…」
…出生率が低いエルフ、しかも王族でありながら人間の夫(しかも一人)を持っていたとはいえ、五人も産んだのはほぼ奇跡だ。
王族の直系なんて、ほぼ耐えたって言われてたんじゃ…。
「妾で最期じゃった。じゃから、民も受け入れたというのが多いかの」
あぁ、最も難しい王族があっさり(と言っていいのか微妙だけど…)五人も産んだから…。
そりゃぁ、民も納得するわ。
「うむ。……して、小娘。もしや、これでごまかす気ではあるまいな」
…………ちっ。
「先達を敬わん奴じゃな」
やかましい。
いきなりやって来て、親族の権利とか主張されても知らないっての。
あの子は私の娘よ。
「ふむ、そうか。分かった。よろしく頼む」
………いやいや、あっさりしすぎじゃない? しかも、さっさと帰り支度してるし。もうちょっとねばろうよ。
「じゃが、そなたは妾の曾孫を心から娘と思っておる様子じゃ。なら心配もなかろうと思っての」
信頼してくれるのは嬉しいけど、ちょっと座んなさい。
……あのね? 今さらだけど、貴方が自らここにきた理由を私はまだ聞いてないのよ? そもそも、第一声がアレだったから態度が悪かっただけで、ちゃんとそういう態度をとってくれれば、私だって敬意をもって相対してたのよ?
「ふむ……何と言ったかのぅ」
耄碌したかクソババァ。
妾の曾孫を誑かした外道な魔女め! が第一声だったんだから、キョウ達が一斉攻撃しかけて、私が魔法連射しても誰も非難しないわ。
……数秒後には私の魔法を完全に防ぎながらキョウ達を叩きのめして悠然と立っていらっしゃるミルドレッド女王陛下に戦慄したけどね(ノンブレス)
色々と、すっ飛ばしてますが、次は女王陛下の語りです。そちらで説明します。
主人公視点では難しいところが…いえ、特にないんですが。
長くなりそうだったので…。