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伝説が目の前に…(は…? byハリス)

パールとハリスの会談


 長寿族というのは、千年前は魔族として迫害されていた。

 現在に至る強国が異世界から勇者(もしくは賢者)を召喚する魔法を有している理由でもあった。

 一族全員が魔導師で強大な魔力を有し、長寿で頑健となれば恐怖もする。

 さらにいえば、普段温厚である分、長寿族はキレた時が恐ろしかった。

 小国一つを十人程度で殲滅してしまえるのだ。実際に記録に残ってる。


 基本、温厚で優しい性格である為、戦いを嫌って東に雲隠れしたのがおよそ八百年前のこと。

 以来、人前に出てくることがなく、文献でしか存在が載っていない伝説の種族とされてきた。


 その長を目の前にして、パールは賢者(自称魔女)に色々と問い詰めたくなった。

 …出来ないけど。









 まぁ、こちらに来られた理由は分かりました。

 それで、どうせなら同盟を組んでしまえ、と。


「はい」


 …失礼ですが、安直過ぎません?


「普通ならそうですね。ですが、ちょっと事情がありまして…」


 事情…て、もしかしてグランド、ですか?


「やっぱりご存知でしたか」


 いえ、詳しくは知らないんです。

 ただ、うちと仲良くしてくださっている国は方々にある物で…。


「あぁ、なるほど。さすがは古き智の国ゲンデル。縁は深く強いものなんですね」


 …それ、どちらかと言えばガラクでは…いえ、なんでも。

 賛辞は素直に受け取っておきます。


「グランドが各国へ寄せた全文を、ご存じですか?」


 いえ。

 うちと交流のある国には詳しいことは言わなかったようでして…。


「そうですか…。もしかしたら、国ごとに違うことを言っている可能性はありますが…」



 曰く、ゲンデルはグランドの後継者をさらって洗脳した外道な魔女を庇護し、その恩恵によって栄えている。

 曰く、悪しき存在を払った勇者の末裔たるグランドに対し、ゲンデルの態度は敵対行為でしかない。

 曰く、邪悪に染まったゲンデルとそれを先導する魔女を討伐する為、助力を願う。



 …わぁ、バカ。


「全くです…」


 心底から呆れてますね。バカにしてるのがにじみ出てますよ、ハリス殿。

 気持ちは分かりますが。


 確かに、グランドは千年ほど前に魔族(=長寿族)の王を打倒した勇者が建国した国だ。これは間違いない。ただ、千年も前の先祖の威光を現在に持ってくるのはおかしい。バカだろう。

 さらにいえば、その魔族とされていた長寿族に対してこの文面はおかしい。というか、バカか。

 歴史を掘り返すんだったら、こっちも掘り返すぞ。その勇者に戦略を与えた軍師がうちの先祖だと知ってて言ってんのか。あのバカども。


 …うん。バカとしか感想が出てこない。


「あと、おそらくどの国でも知られていないことだと思いますが…」


 ? 何でしょう?


「…グランドの先祖、勇者ですが、召喚者だったんですよ」


 …はい?


「正確には、全くの偶然で呼び出された異世界人だったようですが…」


 わぁ、ほんとにバカ…。


「全くですね」


 というか、ハリス殿はいつ気付かれたんですか?


「…異世界人と我々では、気配が違うのです。種族によっても変化がありますが、異世界人は全く別物なのです」


 異種族であればこそ、ですか…。


「そうですね。だからこそ、賢者殿が悪意ある存在ではないというのが分かったのですが」


 どういうことです?


「…今まで、私が出会った異世界人は賢者殿を含めて三人です。一人は迷い込んだ者、もう一人はグランドが召喚した者です。後者は、召喚時に不手際があったようでガラクの近くに落ちて来たんです」


 …何度も召喚してたんですね、グランド。


「そうです。おそらくは、能力の高さゆえでしょう。私が出会った彼らは、温厚な方々でした。目の前で血が流れただけで恐れるような、戦いとは無縁な存在でした。その気配は、どこまでも平穏と安定を望んでいました。…賢者殿も、同じだったのです」


 …何となく、わかりました。


 結構バイオレンスな人だが、面倒見はいいし優しいし荒事は嫌いだもんなぁ…。


「それに、危険な人物なら、子供達があんなに笑顔でいるはずがありません。洗脳されているのなら、私にはわかりますし」


 …さすが。

 でも、納得です。

 あの子達が、彼女がどれだけ善良であるかの証なんですよね…。


 それが分からないで、欲望だけで突っ走るグランドはどれほどバカなのか…。

 なんかもう代名詞はバカでいい気がしてきた。


「たとえ、あの子が賢者殿以外に親はいないと思っていても、私にとっては可愛い息子です。ですから、よろしくお願いします。パール殿」


 当然です。カナメがこの国の民である限り、国主として全霊をもって守りましょう。

 それに、よろしくお願いしたいのはこちらもです。

 距離を置く国々も出始めておりますので…。


「ご安心を。東部諸国は私の判断に従うと言ってくれました。これより、東部諸国はゲンデルの同盟国にして友好国、味方です」


 …わぁ、眩しい笑顔ですねぇ。


 実は、内心で怒り心頭だったりするんだろうか、このお方。












 伝説の存在を目の前にして怖気づかない俺って、おかしいんだろうか。鈍感なのか…?


「は?」


 いいえ、こっちの話です。










 …あれよあれよという間に同盟締結。普通、何カ月もかけて話し合いとかするんだけどなぁ。

 最初から同盟を視野に入れてましたね、このお方。

 国家交流として一の姫が来ることになるし。

 まぁ、同盟国相手なら普通だし、と思ってのんきにしてたら後々驚愕することになるとか…。

 いや、驚愕の内容もある意味普通なんだけど…。


 十年は後の話なので、割愛…。




 ひとまず、グランドは一発殴りたい。





息子の転送先発覚、と同時にグランドの文書到着。

ハリスさんがピキッとなるのは必然。呆れるのはもはや当然。

バカを連発し過ぎた気がしますが、グランドはひたすらバカに、と思って書いてますので良いんです。(私は)


驚愕の内容、言わなくても分かる人はいると思います。というか、バレバレな気がしてならない。

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