父親はいないっ!(言い切るな!ほら涙目! by長男)
次男編
四歳の時に拾われ、六歳の時に捨て子だったことを言われ、まぁ母さんが母さんでいるならいいや、と思って今日まで過ごしてきたゲンデルの魔女の次男・カナメだ。
目の前にいる、そっくりな顔の少年―――え?もう三桁越えてる?うそだろ?
「嘘じゃないから」
あ、呆れたように溜息つかないでくれよ、兄さん。
しょうがないじゃん、どうみたっておれらより一つか二つ上だろ?
…あ、泣いた。
「カナメ、ちょっと黙ってましょうか」
…兄さん、怖い。
「当然でしょう。話聞いてましたか?」
うん、聞いてた。
「じゃぁ、もうちょっとちゃんとした対応をしなさい」
えぇっと………うん。
分かった。
涙をぬぐって顔を上げた少年―――ごめんなさい、分かってます。分かってるからその拳を下ろして兄さん。
今度はおれが泣きそうだから。
何とか兄さんに鎮まってもらって、仕切り直し。
……見れば見るほど、似てるよなぁ…。
あ、感心してる場合じゃなかった。
言うべきことは一つ、だ。うん。
「おれに父親はいないっ!」
ちゃんとした対応だろ……って、兄さん、何で斧持ってんの?何で振りかぶってんの?笑顔がすごく怖いんだけど?
え、あの、なんかまずかった……?ちょ、あ、まっ……うわぁぁぁぁぁっ!!
「一回死んでまともな頭脳を持って生まれて来い!この愚弟!そんな本当のことをはっきりと言い切るなよ!ほら涙目!」
(その後号泣したのは、確実にあんたのせいだけどね。キョウ…)
外見年齢十六歳ほど、実年齢一四七歳。長寿族(平均寿命三百歳)の若き長(人間にすれば五十前後、一族的には中年)。
ハリス=ユハニ=コーリカは、カナメと瓜二つな容貌をしていた。
……グランドよりか、百億倍ましだね。
ていうか、捨て子じゃなかったんだ、カナメ。
研究中の転送魔法を勝手に盗み見て勝手に使って飛んで来たって…。
探し出すのに十年近く……そりゃ、泣くわぁ…。
なのに、これはないなぁ…。うん、さすがにない。
キョウ、お母さんが許します。
しっかりきっちり、締めあげなさい。
「許しも出たから、全力で行きましょうか」
「母さんのバカァ―――――――ッ!」
…よし、後で折檻だ。
遠くですごい音してるけど、気にしないでおこう。うん。
とりあえず、ハリスさんに…。
「…貴方の息子さんを変な風に育ててしまってごめんなさい」
土下座で謝っておきました…。
うん、この人には一切非がないから…。
明確な表記はしてませんが、ハリスさんが誰かは分かっていただけますよね…?
長男編とは正反対に…。
グランドのその後とかは次に出てくる予定。
次がいつになるかは未定…。
一ヶ月に一回くらいは更新したいとは思ってます…。