ケロビン将軍との作戦会議
「ねえ、シンちゃん。頑張ってるとこ悪いんだけど、ちょっといいかな」
「なんだケロビン。……ああもう、なんで眉毛なんていじらなきゃならんのだ」
目標達成の為なら面倒と思うことはない。ただ、とにかく大変だ。
こいつら女性というものは毎日こんなことをしているのか?
なんだか男と女の間に深く刻み込まれた深淵を見せ付けられた気分だ。
「大切なんだよー、眉毛の印象って。って違う。自分を磨くのもいいんだけど、君の行動には肝心要のことが抜けてるね。間違いない」
「なんのことだ?」
「だからさ。赤嶺さんと付き合いたいんだろう? なら、赤嶺さんに自分を知ってもらわなきゃいけないと思うんだよね、私は」
「……その通りだ。だが、今の俺ではまだ彼女に太刀打ちできん」
「どこの武士だ君は」
「言うなれば俺は今レベルを上げているところで、赤嶺さんは魔王だ」
「おいおい。その例えはいくらなんでも失礼じゃないか。想い人が魔王とは、随分とひどい勇者様だね。最後は涙を流しながら彼女を倒して世界でも救うつもりかい?」
「……確かに不適切な表現だったな。だが、俺がまだ実力不足なのは事実だ」
「まあ、君の言いたいこともわからないでもない。でも、人が人を好きになるってそういうことじゃないだろう? ただ自分を鍛えるだけじゃあ、白馬に乗った王子様を待ってるだけのお姫様さ。はっきり言って、女々しいよ」
「……ぐうの音もでないよ」
ケロビンの言うことも一理ある。
いくら俺が理想的な男になったからといって、それでホイホイ靡くようなものだろうか?
恋愛というものはそういうものではないことくらい俺にもわかる。
思えば俺も赤嶺さんのことを詳しく知らない。
表面、誰からも見れる部分を見て好きだと言っているだけだ。
いや、自分の好きという感情を否定する気持ちはこれっぽっちもない。
ただ、赤嶺さんのことをもっと知りたい、と感じる。
この想いこそ好きと表現するものなのだろう。
じゃあ、赤嶺さんに俺のことをもっと知りたいと感じてもらう必要があるのか。
それはなんだか、途方もなく難しいことだな。
「で、どうする。なんなら私がちょっと動いてやろうか」
「いや……なんというか、それはそれで女々しくないか」
女友達に助けてもらうのは確かに効果的だろう。
けれど、直接手伝ってもらうのも狡猾というか、どうも卑怯さを感じるような。
「意気地なし」
「ぐっ」
「臆病者」
「ぐぐっ」
「ばっよえ~ん」
「ぐーっ!」
「……うっわ、高校生にもなってカーくんの真似とか、恥ずかしくないの?」
「畜生!」
おのれケロビン!
自分だって高校生にもなってその口調、国民的パズルゲーム主人公の影響丸出しのくせに!
散々あのゲームで俺と対戦した仲なのに!
声の出る3D迷宮のゲームも貸してやったのに!
「ともかく。君が直接動かないのなら、何もしなくても女々しいし、私の力を借りても女々しい。同じ女々しいなら、どっちが得か考えるんだね」
「……俺が動くというのは」
「つい先日振られたばかりだろう? それは男らしいを通り越して、蛮勇だよ。さっきの話じゃあないが、君は石器時代の勇者様でも目指しているのかい? 赤嶺さんがどう感じるかはわからないけれど、私ならそんな無神経な男はお断りだね」
いちいち一言多いが、もっともだ。
ケロビンはいつも理路整然としていて、俺はいつも負けっぱなしだ。
それに俺は、赤嶺さんと仲良くなる可能性が目の前にあるのに、それを振り払うことなど出来なかった。
「……すまん。頼めるか」
「うん。私も個人的に彼女とは友達になりたいと思っていたんだ。渡りに船ってやつさ。だから、特にお礼とかはいいや。タダでやってあげる」
「助かる」
「くふふ、お礼はいいと言ったけど、感謝はいくらでもしてくれていいんだよ」
「感謝はするが、それは結果次第だ」
ケロビンに限ってそんなことはないと思うが、やぶ蛇になっては困るので感謝は保留しておいた。
上手くやってくれたらいくらでも感謝する。なんならケロビン大明神様として祭り上げてもいい。
頼むぞ、ほんと。
(ばっよえーん。ケロビンに助けてもらえることになった真司。いずれ三角関係になるのかな? いやいや、三角じゃ頂点の数が足りません。そして次回は図書館少女再登場。図書館少女とちょっとだけ仲良くなります。なんかこういう風にちょっとずつ好感度上げるのって、そういうゲームみたいですね。メインヒロイン(仮)の番はいつの日になることか。ついに(仮)が付きましたがメインヒロインはラスボスですから、そうそう主人公の前に姿を現せないのです)