Side Mio 1 青春ゆえ致し方なし
とある男子に告白された。
相手のことはよく知らない。けど、爽やかそうで、結構印象の良い人だった。
緊張しすぎて、思わず一秒未満で振ってしまった。
いや、お断りするのは当然といえば当然なのだ。
私は彼のことを知らないし、いきなり付き合ってくれと言われても困る。
けれど、まあ、なんというか、あんまりな断り方をしてしまったことが気になる。
せめてお友達から、という選択肢もあったのではなかろうか。
男子から告白された経験なんて初めてだったのだから、仕方なかった、と自分を慰める。申し訳ないことをしたなあ、とは思う。
頭の中がモヤモヤする。彼、月島真司くんのこと。
特別な感情があるわけではないが、まさか私にこのような青春イベントが訪れるとは思っても見なかったのだ。
妙に寝付けなくなって、枕元の本を手に取る。
私の趣味、ライトノベルだ。
手にとった本は、私よりも幼い少女が拳銃を手にとり強く生きていくバトル物。
『ガンズ・オブ・バッドレディ』。私のお気に入りの一冊だ。
彼に告白された興奮を、小説による興奮で上書きする。
やっぱりライトノベルって最高だわ。この少女の強さと繊細さをかね合わせた性格に憧れを抱く。
もし仮に私が、彼女のように強かったら、告白されてもこんなモヤモヤしたりしないのかしら?
いやいや、彼女はそんなキリングマシーンみたいな性格じゃない。
表面上は変わらないだろうけど、内面では結構な葛藤をするんじゃないだろうか。
ちょうど、今の私みたいに。
……なんだか妙に恥ずかしい想像をしてしまい、枕に顔を埋める。
ああ、これはだめだな。
この本に集中するどころじゃない。
別の本を手に取る。
『スカーレットメロディ』。このライトノベルは、ミステリーを主軸にした学園モノ。
女主人公がとにかく格好良くて、高校生なのに大人の女性の魅力って感じで、私は日常生活で密かに彼女の真似をしているのだ。
なんというか、痛い子だなあ、私。
まあ、でも、この仮面が外で割れたことはない。
というか、別にキャラに成りきっているわけではない。普段の、ちょっと澄まして格好つけている私も、素の私そのものだ。
あくまでも、彼女を参考にしている、というだけ。
その小説の女主人公をホームズ役としたらワトスンくんな役回りの青年が、ちょっとだけ月島くんに似ているような気がした
どこがというわけではない。単なるイメージだ
だいたい私は月島くんのことを何も知らないんだから。
いや、一つだけ彼について知っていることがあった。
私のことが、好きってこと。
……また枕に顔を埋める。多分、顔、赤くなってる。
やれやれ。どうやら私は、人生初の告白に、かなり舞い上がってしまっているらしい。
(作者言 プロローグ以来のメインヒロイン赤嶺澪登場。内容は彼女視点のモノローグ。次回は、もともと仲の良い金髪幼馴染ともっと仲良くなります。ちなみに作中に出たライトノベルですが、参考にした作品はありません。自作小説をモチーフにしたものですらありません。でも探せば多分そんな内容の作品も結構見つかると思います。面白いものを知っていたらこっそり作者に教えてやってください)