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時間

作者: 春のうた
掲載日:2026/04/27

琥珀色の秒針


古い時計店を営む青年・かいは、少し不思議な能力を持っていました。彼は、触れたものの「思い出」をぼんやりと光として見ることができたのです。


ある雪の降る夕暮れ、一人の女性・美月みつきが、動かなくなった古い金色の懐中時計を持って店を訪れます。


「これは、亡くなった祖父が大切にしていたものです。どうしても、もう一度だけ動かしてほしくて……」



櫂がその時計に触れた瞬間、まばゆいほどの温かな光が溢れ出しました。

そこに見えたのは、何十年もの間、誰かを一途に想い続けた記憶の奔流。それは美月の祖父が、祖母にむけた無数の「愛の証」でした。


紡がれる二人だけの時間

修理には数週間かかりましたが、その間、美月は毎日のように店を訪れました。二人はストーブの上で沸くやかんの音を聴きながら、他愛もない話を重ねました。


櫂の淹れる、少し濃いめのコーヒー。

美月が語る、幼い頃の夢。

雪が窓を叩く夜の静寂。


櫂は、彼女の笑顔の中に、時計の中に見た光と同じ輝きを見つけます。そして美月もまた、無口だけれど情熱を持って時計に向き合う櫂の指先に、深い安らぎを感じるようになっていきました。



ついに修理が終わった夜。

櫂は美月に時計を渡します。再び時を刻み始めた秒針の音は、まるで二人の鼓動が重なったかのように力強く響きました。

櫂は震える手で美月の手を包み込みました。


「僕のこれからの時間は、僕自身の心で、あなたと一緒に刻んでいきたいんです。あなたの悲しみも喜びも、全部隣で見ていたい」


美月の瞳から、一粒の涙がこぼれました。それは悲しみではなく、あまりにも深い幸福が溢れた証でした。


「私も……。櫂さんと一緒にいたい。。」



外は吹雪いていましたが、店の中は春のような温かさに包まれていました。


二人は深く見つめ合い、優しく唇を重ねます。その瞬間、店中の古い時計たちが一斉にボーン、ボーンと祝福の鐘を鳴らしました。


数年後。


その時計店には、相変わらず仲睦まじく寄り添う二人の姿がありました。彼らの薬指には、金色の時計と同じ、永遠を誓う輝きが宿っていました。

二人が刻む時間は、これからも続いていきます。

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