クリスマスの夜、白いおひげの友達からもらったもの
人はみんな、死んだらお星さまになるんだと。お友達のジョンが言っていました。
暗くなったお空に、きらきらと浮かんでいる、あのお星さまのことです。
僕だけじゃなくて、ママも、パパも、お星さまになるんだと。
だから怖くないよねってジョンは言いました。僕はよく分かりません。
ジョンはいつも、夜になると僕のところへやってきます。
僕はジョンにたくさん、お話をします。ジョンは僕のお話をたくさん、聞いてくれます。
ママが僕の話を聞いてくれないこと。パパがお家に帰ってこないこと。全部お話しました。
ママもパパも怒ってるんだと思います。僕が言いつけを守らなかったから。僕がダメだよって言われたのに走っちゃったから。
だから僕はママとパパにごめんなさいをしないといけないってジョンに言いました。そしたらジョンは、黙ってしまいました。僕はしまったと思いました。でも、もうおそくて。
パパとママとおんなじで、僕はせっかく仲良くなったジョンも怒らせちゃったのかもしれません。
ジョンは僕の話を最後まで聞いてくれます。でも、その時ばかりは「じゃあまた」と、いつものお別れの言葉を言って消えてしまいました。
お空が冷たくて寒かったあの日も、僕はママに話しかけました。でも、やっぱりママは返事をしてくれません。
ママはパパからもらったくまちゃんをギュってします。僕のことをギュってすればいいのに、僕のことは見てくれません。
僕のくまちゃんなのに。僕のママなのに。だから僕は何だかちょっとムッとします。
「ねぇ、君。今日はクリスマスだね」
ジョンはその時もまた、いきなりやってきました。
「クリスマスにはクリスマスプレゼントが必要だ。どんな子供にもね。だから、僕から君に一つプレゼントをしたい」
僕はジョンをじっと見つめます。
真っ白なおひげと、真っ赤なお洋服が、真っ暗なお部屋の中できらきらしていました。
「でも僕、いい子じゃないよ?」
「どうして、そう思うんだい?」
僕は少し考えました。
白いベッドの上でずっと寝ているパパのことを。
くまちゃんをギュってしたまま、僕を見てくれないママのことを。
「だって、僕がパパを殺しちゃった」
その言葉は、僕のお腹をキュッてさせます。
「うん……そうか。でも、それは、本当にそうなの?」
「え?……どういうこと?」
ジョンは真っ白なそのおひげをわしゃわしゃとなでます。
「僕はね、君に勇気をプレゼントしたい」
「勇気?」
「ああ。でもね、ごめんなさいをする勇気じゃない。君はもうすでに持っているからね」
ニカッて笑うジョンの歯は、なんだか、おひげよりも白く感じました。
「僕が君にあげる勇気は、ママにギュってしてほしいって言ってもいい勇気だ」
お空のお星さまは遠くできらきらと輝いていて、遠くなのにすごくまぶしいです。
「……。そんなわがまま、言ってもいいの?」
ジョンは顔をくしゃくしゃにすると、返事の代わりに僕の背中をポンッと叩きました。
のどの奥が、グッてして、出せたのは小さな声でした。
「ねぇ、ママ……。僕……」
声を出すと、僕の目が熱くなります。
「ママ……。ギュって、して」
ママがハッとして僕を見ました。ママの手が僕のほっぺたに当たります。その手がじんわりとあたたかくて僕は目を閉じました。
「勇太、ごめんなさい……!」
ママの声が聞こえます。僕をギュって抱き寄せて、だから僕のからだ、全部にひびきました。
ゆっくりと目を開けると、目の前のお部屋はぼやけて見えます。
お星さまも、お月様も、くまちゃんも、ママの目も、ママの声も、手も。真っ暗だったはずのお部屋は、まばたきするたびに全部がきらきらとしていきました。
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