金平糖
金平糖、星形の可愛い飴。食べたことありますか? 金平糖は、不思議な体験ができる飴です。
「にーちゃん!にーちゃん! やって。やって。」と大きな声で目を覚ました。
あー俺寝てたんだ。さっき弟達とスイカを食べて種飛ばし競争して、それから、テレビ見ながら寝てしまったのだった。 目の前で騒いでいる下の弟は、悠太。
「どした?ゆうたん。」
「パスタやって。」と冷凍パスタを手に持ってキッチンを指差している。
俺は、まだ夢っぽく悠太を見ながら昼メシ時間かと時計を見た。寝ている俺じゃなくもう一人頼むヤツいるだろって思ったが、雅太は、ゲームに夢中で周りの声が、聞こえないモード。 そういう自分は、まだ夢から覚めていない気分がする。弟と2歳づつ離れていたはずだが、この二人やけに小ぶり。
仕方なく悠太のパスタを温め、自分の分も温めた。そうだオカンが、日頃「野菜、野菜。」と呪文の如く唱えるので冷蔵庫を開けると3つの器にサラダが用意してあった。そう言えば、出掛けに言ってた。
「サラダ用意したから、食べるのよ。忘れないで。」
この間、食べ忘れて怒鳴られたっけ。
「うさぎみたいじゃん。」と反論したら、
「お肌ざらざらじゃ、女子に嫌われるよ。」と言われたっけ。
悠太と食べようとした頃、やっと気付いたゲームヤロウもパスタを解凍し始めた。
「まさひろ、届くか?サラダは、冷蔵庫だぞ。」
やっぱりコイツなんだか、小柄。
「そこのイス持って行って乗ればいいだろ。」と言ってみたが、おぼつかないので手伝いに立ち上がる。
二人で回る電子レンジを覗いてみる。
「にー、知ってる?ヒロ君の家の電子レンジ回らない最新式なんだよ。」 「回らないのに温まるんか? そうか。アイツの家は、金持ちだよな。」それにしても背伸びする雅太に
「まさひろ、チビだな。」と言うと
「先に生まれた兄ちゃんよりデカくならないように気を使ってるんだ。」と返された。
パスタを三人で頬張り、ゲームの話をしていたら、
「あっ! 俺、出掛ける予定あったんだ。」と思い出した。
「どこ行くんだよ。」
「昨日の大学祭の打ち上げだよ。」
テーブルの上にある金平糖の袋が開いたままで、ずいぶん減っている。俺がもらってきてまだ食べていないのに。
「ずいぶん食ったな。」
「食って良いって言っただろ。」
「言うわけないだろ。」
「何寝ぼけているんだよ。」
「ちっちぇな。オヤジのパチンコ景品だろ。」と悠太に言われると兄として情けない。
パチンコ景品か?ゆきちゃんがこっそり俺だけにくれた金平糖じゃないのか?そっとハンガーに掛かっているジャケットのポケットを探すとゆきちゃんの金平糖があった。
顔を見合わせる二人の口のまわりがパスタのトマトソースで赤くなっている。
「おい、食べ終わったら、シャワーするぞ。」と金平糖の件は、誤魔化す事にした。
小ぶりの悠太を頭からシャンプーをかけ、泡々にして遊んでみた。
「目しみるか?」
「大丈夫だよ。」と返事についつい楽しくなる。
「そろそろおしまい。」と言われてしまう。
シャワーをかけて騒いでいると雅太もいつの間に入って来た。また同じくシャンプー泡々をしてやる。悠太も手伝い3人で笑い転げる。久しぶりに無邪気に笑った。
二人を残し、風呂場を出てバスタオルで体を拭く。さっぱりした。ゆきちゃんからもらった金平糖を舐めてみた。
続いて弟達も上がって来た。バスタオルを被った弟達に金平糖をお裾分けする。
「ゆきちゃんの金平糖。」バスタオルの上から、頭を拭いてやるとなんだか大きくなった気がする。
「目の高さが変わらないな。」
「大丈夫か?にー。僕達を子供扱いしてない?」
「俺、成人式終わってるもん。オマエ達まだだろ。」
「ちっちぇな。大して変わらない。」と生意気を言うのは、悠太だった。
シャワーして頭がスッキリして、少し予定より早くに出かけようと思い身支度をする。
「どこ行くんだよ。」
「新宿だよ。昨日の打ち上げ。」
「打ち上げってなんだよ。」
「ヒュー、ドッカン!ハラハラァ。」と雅太が言うと「違うだろ、それ打ち上げ花火だよ。」
正解を説明するのも面倒になり、玄関を出た。知らない間に夕立ちがあったのか、虹が見える。
立ち止まり虹を見上げていると、何だか頭の中がクリアになった気がする。
何処までが、夢だったのかな。
ジャケットのポケットには、ゆきちゃんからの金平糖があるからこれが現実だと確信して駅に向かった。
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