メイド長
メイド長は朝の5時には起きている。
髪を整えて、化粧をし、メイド服を着て準備をする。
そしていつもの朝礼を行う部屋に向かうと、机の上に手紙が置いてあった。
「あたし宛?」
何かなと思い中身を見ると、手紙にはこう書いてあった。
「メイド長へ
急なお知らせになってしまい、申し訳ありません。
私、アイシャと妹のエリスはこの国を出ていかなければならなくなりました。
連絡する時間もなく、何の音沙汰もなくなってしまえば心配をお掛けしてしまうかと思い、せめて手紙だけは残していきたいと思います。
たった2日の仕事でしたが、とても楽しかったです。
どうかお元気で、そしてルギナ様にもよろしくお伝えくださいませ。
ありがとうございました」
メイド長は朝礼の代役を任せて町に出た。
まだ間に合うかもしれない、そう考えながら町で二人を探して回ると、似たような二人を見つけて声をかけた。
「す、すまない!あんた達・・・ってエルフ?」
「えっと、どちら様ですか?」
「あ、ああ、あたしはお城でメイド長をやってる者さ。
君たちに似た新人がこの国から出ていくと連絡があったんだが・・・すまないけどあんた達の名前を教えてくれないかい?」
「私はミーシャといいます」
「リアです」
全くの人違いだった・・・メイド長は項垂れてしまった。
「なんてこったい・・・ルギナ様にもなんて言えばいいんだい」
「あの、少しいいですか?」
「なんだい?」
「きっとその二人も、あなたには感謝していると思いますよ?」
「どうしてわかるんだい?」
「何となくわかるんです。
例え離れたとしても、気持ちは常に一緒にあると私は思いますね」
「そうかい・・・仕方ないね。
王子にはあたしから直接説明しようかね。
時間を取らせてしまったね、すまない」
「いえいえ、では私達はこれで失礼しますね」
メイド長は二人を見送りながら、「あの二人に本当に似てるねぇ」と感じながら城に戻って行った。
「ああ!メイド長!新人は見つかりましたか!?」
「いや、もう国を出て行った後だったよ。
惜しい人材だったけどねぇ・・・もういない人を頼るわけにはいかないよ」
「そうでしたか・・・ルギナ様も楽しみにしておられたのに」
「そうだねぇ、でも寂しくはなるけどあたし達でお支えするんだよ!さあさあ、準備しな!」
「「「はい!」」」
メイド達は一斉に動き出した。
その中でメイド長は王子になんて言えばいいかを考えながら部屋に向かった。
「ルギナ様失礼致します。
至急お伝えしたいことがございます」
「入ってきて」 「はい」
部屋に入るなり、王子は何やら手紙を読んでいた。
「ルギナ様、実はお世話係についてお話がございまして・・・」
「うん、二人ともこの国を出たんでしょ?」
「え?どうしてそれを・・・」
「二人から僕宛に手紙が来たんだ。
この国から出ていかないといけなくなったって」
まさか、もうルギナ様に連絡を入れていたとは!
「その・・・この二人に関してなのですか・・・」
「ん?僕は大丈夫だよ。
何となく二人は只者ではないと思ってたからね。
いずれはこうなる予感がしたんだ」
ルギナ様はこのことを予想されていたなんて・・・
「僕にはみんながいるから大丈夫だよ!
二人にもきっと何かやるべきことがあって出たんだと思う。
だから、引き止めるつもりはなかったし、その分みんなが頑張ってくれるんでしょ?」
「ルギナ様・・・」
「もちろん僕も頼ってばかりではダメなんだ。
一人前になって立派な王にならなきゃいけないんだ」
「ご立派に・・・なられましたね」
メイド長は涙でその場に崩れてしまった。
「僕にも、あの人達のような姉や妹が欲しかったなぁ・・・」
誰にも聞こえない声で、少年は大きく成長していく。
将来、現国王を超えると言われた一人の男がここに誕生したのである。




