何故か女の人に言い寄られるが、他人に干渉されたくないのでお断りしている女勇者が、偶然気の合うパートナーを見つけたら、彼女に惚れてた女神がブチ切れて襲いかかってきた話
とある異世界の女神が、復活した魔王を倒すために、別次元の世界から勇者候補の人間を転移していた。
「おめでとう。あなたはこの世界の勇者に選ばれました」
女神に転移させられた女性は、最初に女神から、特典で何か強力なスキルをあげますと言われたが、断った。
「そんなものがあったら、冒険がつまらなくなるでしょう?やっぱりこういうのは、ギリギリまで追い詰められて、アドレナリン全開の状態で何とかするのが最高に気持ちいいのよ」
「あなた、面白い人ねえ。そんなこと言ったの、あなたが初めてよ」
(それにかわいいし。あらいやだ、私ったら、この子は女の子なのに。もうたまんないわ。だって、見てるだけで心が満たされるんですもの。ああ、どうしよう、好きな気持ちが止まらないんですけど)
「今まであなたが召喚した勇者っていうのは、みんな甘ちゃんなんじゃないの?まあいいわ。代わりにこの世界の言語と魔法の教本をくれないかしら?言葉だけなんとかなれば、あとは自分でなんとかするから」
「そんなものだけでいいの?あなたずいぶんと勇気があるわね。でも、勇気と無謀は紙一重よ。無茶はしないで。心配だから、いつでも私とお話できるようにしておいてあげるわ。何かあったら相談してね。あ、あと、言語の心配はいらないわ。あなたを転移した時に、この世界の言語は転移した時に理解できるようにあなたの記憶を調整しておいたから」
(何よこいつ。余計なお世話なんだけど!!!)
この物語の主人公である女勇者は、その日のうちに、女神からもらった魔法の教本を一通り読み終えた。
すると、目の前に一人の修道士の女性が現れた。
「私は、この世界で、あなたの身の回りの世話を行うように言われているものです。あなたの望むことはなんでも私がしますから、遠慮せずになんでもお申し付けくださいね」
(きっと女神の仕業だわ。ウザい女ね)
この女修道士は自分の胸を強調しながら、なんでも自分の言うことを聞くと言ってきた。
「今、なんでもと言ったわよね?」
「ええ、言いましたよ」
「私はお前みたいなあざとい女は嫌いなんだ。今すぐ私の前から消えろ!!!」
そういって、女勇者は彼女を追い払ってしまった。
しかし、この女修道士はこの後、女勇者のストーカーとなり、こっそり主人公を尾行するようになる。
怒った女勇者は女神と交信した。
「ねえ、女神様。あの女、あなたが差し向けたんでしょう?私はね、ああいう下品な女が嫌いなの。もうこれ以上、あんな女を私に近づけないでくれる?」
そして女勇者は女神に魔物の狩場をたずねた。
「魔物の狩場ですか?」
「そうだよ。魔法の知識はすべて頭に叩き込んだけど、どうやらレベルが足りないと高等魔法は習得できないみたいだからね。この世界にはレベルがあるんでしょう?さっき、自分の能力を数値化できる魔道具を持ってる人がいたからね。だから、今から私はガチるよ。魔物を狩りまくって、レベルを上げるんだ」
「レベルアップを目指すなら、狩場よりもダンジョンに行った方が、ドロップアイテムなんかも手に入って効率がいいですよ」
「私は魔物の狩場を教えてって言ったんだけど。いいからさっさと教えてくれない?」
女勇者は女神から教えてもらった魔物の狩場でひたすら敵を狩りまくった。
十分にレベルを上げたあと、女勇者は狩場で複数のモンスターに襲われている女戦士を見かけたが、あえて無視した。
無視された女戦士が怒って、女勇者を後から追いかけてきた。
彼女は満身創痍の状態で、なんとかモンスターを倒したようだった。
「ちょっと!!!なんであたしを見捨てたのよ!!!あなたどうかしてるわ!!!!!」
「・・・あなたも冒険者でしょ?それなら、自分のことは自分でなんとかするのね。最初から他人を頼るなんて、冒険者失格よ?」
「・・・あたしね、ずっとソロで冒険してるんだけど、とにかく、女の一人旅は大変なの。よく、変な男に絡まれるしさ。あ、そうだ。あなた、あたしとしばらく一緒に冒険してよ」
「はぁ?」
「あたしさ、誰かと一緒にパーティーを組んで冒険するのが嫌なんだ。他人に干渉されたくないからさ。でも、あなたみたいに他人のことを気にしない人なら、一緒に冒険出来そうな気がするの。さっきあたしのことを見捨てた罰よ。しばらくあなたについていくからね」
「ふーん。ま、勝手にするといいわ。で、あなた、どこまでいくつもりなの?」
「ベルグムンドよ」
「そうなの。私も一応ベルグムンドは通る予定だから、そこまでよ」
「ありがとう。あたしのことはまったく気にしないで。あなたの邪魔はしない。一緒にいるだけでいいの。まあ、あなたは気にしないでしょうけど、約束するわ」
「安心しな。私もあなたに干渉しないよ。私も干渉されるのが大嫌いだからね。お互いやりたいことを自由にやる。それでいい?」
「もちろんよ。その代わり、ベルグムンドまでは一緒にいさせてもらうからね。・・・突然いなくなったりしないでよ?」
「ふふ、どうだか。それなら、私に一緒にいたいと思わせてみることね」
「・・・努力してみる」
その後も冒険中に女勇者に好意を持った女性が何度か絡んできたが、すでに連れがいるという理由で全員同行を断った。
(なんで私は女の人にばかり言い寄られるのかしら?あの女神に変なスキルでも押し付けられたのかな?)
その後も女勇者は、なろうあるあるな展開につっこみを入れながら、女戦士と一緒に冒険していった。
◇◇◇
女勇者は、自分に干渉してこない女戦士を気に入ったので、ベルグムンドに到着してからも、そのまま一緒に冒険することを提案した。
「一緒に行っていいのは、ベルグムンドまでじゃなかったの?」
「今度は、私があなたと一緒に冒険したいの。駄目かな?」
「あたし、女戦士だから、身体がゴツくてキレイじゃないし、かわいくもないけど、本当にいいの?」
「私はそんなこと、全然気にしてないよ。逆に、私に不満があるなら、断ってくれても構わないよ」
「断るわけないよ。あたしもずっと一緒に冒険したいと思ってたから。ありがとうね」
女勇者と女戦士はお互いの顔を見つめあった。
「魔物の狩場で最初にあった時、助けてあげなくて、ごめんね。こんなにあなたと仲良くなれるなんて、思わなかったから」
「もういいよ。そのおかげで今、あなたと一緒に冒険出来てるんだからさ」
女戦士は女勇者の手を握って微笑んだ。
その光景を見ていた女勇者のストーカーの女修道士は、怒り狂っていた。
実は、このストーカーになっている修道士は、女神が変身していたのだ。
特典を断った女勇者が心配になった女神は、ずっと彼女についていくことにしたのだ。
そして、女勇者もそのことに薄々気づいていた。
だから、追い払ったはずの彼女が自分のストーカーになっているのを確認しても、見て見ぬふりをしていたのだ。
「何なのよあの子。私の勇者様にあんなにベタベタしちゃってさ。絶対に許さない。許さないんだからねえええええ!!!!!」
女神は、女戦士への嫉妬から邪神のような姿へと変貌した。
そして、女勇者の前に姿を現した。
「ねえ勇者様。あの修道士が私だって知ってたんでしょ?どうして私のことは追い払って、こんな大してかわいくもない女戦士とイチャイチャしてるのよ。おかしいでしょ。だって、私の方がずっとキレイだし、おっぱいだってこんなに大きいんだよ。こんな女に負けるなんて、ありえない。許せない。絶対に許せないわ。私はこんなにあなたのことを思っているのに。許せないわ!!!」
「・・・どうでもいいけど、私に好かれたいのなら、まずは人間の姿に戻ったらどうなの?」
女勇者は、まずは人間の姿になれと女神を挑発した。
「バカにしているの?すぐになってやるわよ!!!」
女神は彼女に言われるままに人間の姿に変身した。
女勇者はニヤリと笑うと、人間の姿になった女神の鼻と口に、すばやく魔法で具現化したスライムのような物体を貼り付けて、取れなくした。
「ねえ、女神さん。人のいうことをなんでもほいほいと聞くもんじゃないよ。もう少し考えてから行動したほうがよかったわね。ま、もう遅いけど」
(えっ!!何よこれ?全然外れないんだけど。これじゃ私、息が出来ないじゃない。ちょっと、外して。今すぐ外しなさい。外さないとただじゃ・・・ああ、苦しい。苦しいです。お願い、外して、外して、外して、はずし・・・は・・・)
「あなたの敗因を教えてあげる。たったひとつ、シンプルな答えよ。あなたは私に自分の考えを押し付けた。私は干渉してくるやつが大嫌いなんだ。それじゃあ、おやすみなさい。永遠にね」
呼吸が出来なくなった女神はその場に倒れ込んだ。
そして、女勇者と女戦士はこの後も楽しく二人で冒険しましたとさ。