我が家の朝
もう朝か。まだ眠いんだよ、起こすなよ。
今日くらい休みにしてくれよ。昨日は一日中つきあってやったろ?
年中お前の言うこと聞いてやってるんだからたまには俺の話も聞いてくれよ。
昨日の疲れがまだ取れてないんだよ。
な、だから今日は休みにしてくれ。
おまけに俺はな、今すこぶる機嫌が悪いんだよ。
え?何でかって?
そりゃあ俺様自慢の美しいボディをお前が昨日汚してくれたからさ。
いくら魚釣りしたいからって穴場だか、山場だか知らないけど、
あんな沼地みたいなところに連れていきやがって。
ボディどころか顔から足からケツまで泥だらけだ。なんか魚臭いし。
こんな格好でまた出かけたら他の奴らの笑いものになるだけじゃねえか。
恥かかせる気か?
今日も天気はよさそうだけど、とてもでかける気にはなれないね。
聞いてるか?おい。
今、機嫌悪いとか言ってるわりにお前がそのスイッチをひねりゃあ、
俺がとたんにやる気出すとでも思ってるのか?
おい、やめろ。今日の俺ははテコでも動かねえぞ。
そこをひねるなって。強制するなよ。
また荷物まで持たせる気か?これまた重てえな、おい。
くそっ、段々体が温まってきやがった。
俺は動かねえって言ったら絶対動かねえからな。
今日は断固拒否してやる。
おいおい、そこに座るなって。
うわ、今、お前そのレバー触ったろ?それ触ると体と足が連動しちまうんだよ。
本当に勘弁してくれよ。
うん?足元も軽くなったぞ。
どうしても行けってんだな。
わかったよ。ちくしょう。
じゃあ、せめて帰り道に腹いっぱいの飯食わせてくれ。
あと、全身ピカピカに洗ってくれ。
お前が俺をよく連れていくスタンドとかいう店で。
ほら、お前の嫁が玄関から手を振ってるぞ。
いってらっしゃいって。