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王位なんて遠慮します  作者: メグル
トーレと日常あれやこれ
9/19

ミア 子供たちには平等です

「次は私の番ね」


「はい、よろしくお願いします。ミア母様」

「レスト様。ミア様からのお届けものです」


 部屋を訪ねてきたレストがそう言って渡してきたのは、一枚の写真。

 同じものが兄様たちにも届けられてるらしい。


 ミア母様に抱えられた泣き顔のオレと、頭を抑えてうずくまるアルク兄様、カメラを向けられたことでバツの悪そうな表情をしているアインス兄様が映っている。


 父上が持ってるとばかり思ってたが、ミア母様が持ってたのか、これ。


「……こんなこともあったな」

「覚えてるんですか?」

「まぁな。こんときゃかなり怒られて、一週間くらい外で遊ぶの禁止にされて見張りまでつけられたからな」


 この時のことは今でも鮮明に思い出せるほどだ。散々怒られたことによるトラウマとか、そんなんからよく覚えてる。


 まだ今よりも幼い頃、オレはよく兄様たちの後ろをついてイタズラなんかもよくやった。


 王子だって言っても生まれもった立場が違うだけで中身はごくごく普通の子供と変わらない。


 だから、イタズラをすれば怒られたし、好き嫌いをすればちゃんと食べなさいって注意が飛んできた。テストで悪い点を取って怒られることもある。

 もちろん良いことをすれば褒められて、たまにあるサプライズのご褒美は頑張りが認められてるみたいで嬉しかった。


 オレは1人で飲むのもつまらないとレストをお茶の相手に指名して、ミア母様から渡された写真の日について話を始める。

 レストも知りたがってみたいだからな。


「確かオレが3歳か4歳くらいのときの写真なんだよ」

「大体10年前ですね」


 兄様たちは誕生日を迎える前のはずだからアインス兄様は7歳で、アルク兄様は6歳だったか。


「レストはグルーシャの秘密基地って本知ってるか?」

「知ってます。昔流行りましたから、それで子供たちの間で秘密基地作りが流行ったんですよね」


 そう、あの写真の頃に発売されて大人気になったグルーシャの秘密基地って絵本がある。

 内容はグルーシャって少年がツリーハウスの秘密基地を作って仮想の敵を退治するってもので、ごっこ遊びだ。


 秘密基地作りが当時の子供には受けて、当時あちこちに子供が作った不器用な秘密基地が溢れたらしい。


 その本を読んだ兄様たちもそれに漏れず、庭に秘密基地を作っていた。しかも絵本と同じようにツリーハウスを。


 6、7歳の子供だけで立派なツリーハウスが作れるかと言うと出来るはずもなく、まともなものなんて作れるわけもなかった。


 オレは写真の上部を指差す。


「ここ、兄様たちが作ってた基地の一部」

「その歳の子にしてはかなり上手ですね」


 一部しか写っていないのでまともな評価は出来ないが、それでも一応それなりに形にはなっている。


 でもまあ、秘密基地とは言うものの使用人たちの間では公然の秘密だったらしい。城から出ないのであればと黙認されているところもあったようで、子供らしいとか見守られてたとか。


「で、写真の経緯だけど」

「はい」

「基地からツタを持って飛び降りたり、ツタからツタに飛び移ったりとかして遊んでるのが母様たちに見つかってな」


 そういう遊び方はしないようにキツく言われていたらしい。オレはあの日初めて秘密基地に行ったから知らなかったが。

 まぁ、オレは兄様たちの真似して遊んでだけで危ないとかは特に考えてなかった。


「来たのはカトレア様でしょうか?」

「いいや、ミア母様。全員揃ってゲンコツ落とされた」


 その場で3人揃って正座させられて、ミア母様からのお叱りを受けた。


 ミア母様はオレたち子供に対しては平等に接する人で、自分が産んだ子と側妃が産んだ子で区別も差別もしていない。

 オレたち全員、自分の子なのだと公言している通りに。だから3人一緒に怒られた。

 ゲンコツについては年齢による力加減はされていたようだが。


「それでトーレ様が泣き顔なんですね。でも怒った人に抱えられてるのは変、ですよね?」

「あーそれな。この後、基地の片付けは明日にして帰ろうとしてたら上にあったコップが倒れたみたいでな……」


 コップの中にあった水が流れてオレの上に降ってきた。それに驚いたオレは軽いパニックになって基地のあった木に勢いよく顔をぶつけて、痛みに堪えきれずに泣き出しミア母様に抱きかかえられた。


「なるほど。それではアルク様は?」

「兄様はそのコップが転がって、頭に落ちてきたんだよ。で、そこに庭の様子を映すためにカメラを持ってた庭師がパチリ」


 これがレストが持ってきた写真のことの顛末だ。


「なかなかに大騒動ですね」

「おかげで記憶に残ってるけどな。今思えば、来たのがミア母様で良かったと思う」


 イクル母様だとオレは怒られたか分からないけど、兄様たちはもっとしっかり怒られただろうし。イクル母様はのほほんとしてるけど1番怒らせたら怖い人だから。


 カトレア母様は怒るかは分からないが、なんとなくやるからには徹底的に作らせそうな気もする。止めはせずにやらせるって感じだな。


「確かにそうですね。その頃ステラ様はまだいらっしゃる前ですが、仮にその現場に出くわしたとしたら――」

「収集つかなくなってたかもな。ステラ母様はあまり怒れない人だから」


 同時に嫁いだ母様たちと違ってステラ母様は数年前に嫁いだばかりで、立場的にも性格的にも血の繋がった我が子(リウ)しかほぼ怒れない。


「トーレ様、陛下には叱られなかったのですか?耳には入っているはずですよね」

「父上か。父上なら確か……」


 当時の記憶を辿る。

 そういや、あのあと兄様たちが作った基地より立派なツリーハウスが出来てて、ああそうだ。


「子供心を忘れてない庭師と一緒に立派なツリーハウス作り上げてたな」


 満足げにオレたちと母様たちを呼んで見せてきたっけ。


 重要事項があるとか言われて仕事押し付けられたカトレア母様が父上やフェリクスに対してかなり激怒して、家族、使用人全員でカトレア母様を宥めるのに苦労した記憶がある。


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