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4—2

本編はこれで完結です。

 朝食はみんなで――。


 父上の決めた我が家のルールから、朝食は家にいる全員が揃って食べる。

 今日もそんなわけで朝食は揃って食べる。特に変わったところはない。


 ちなみに今日のご飯はロールパンとスクランブルエッグ、ソーセージとサラダだ。

 いわゆる定番系で、それぞれ量や中身が少し違っている。


 食べ終わって部屋に戻ろうとしたところでミア母様に呼び止められた。


「トーレ、後で部屋に来てもらってもいいかしら」

「はい、大丈夫です」

「それなら、午後のお茶の時間に来てもらえる?」


 母様の中では1番気が合うミア母様とは時折こうして一緒に過ごすことも多く、お茶を飲みながら家族についての話し合いなんかもすることも良くある。

 多いのは父上の天然による暴走で使用人からの相談とかで、オレたちは対処もしくは対処法を教えたりだ。


 ちょうどいい、ミア母様がアインス兄様をどう思ってるかそれとなく聞き出す機会だよな。


 それまでに教師陣から宿題終わらせちまおう。町に行くのは今度でいいや。


 1人だとグダグダとして時間がかかるのはみえてるので、今日は調子がいいと言うアルク兄様を見張りに据えて、本日の作戦会議をしつつオレは宿題を終わらせる。

 ついでにレストも呼んでおいた。


 さてと、ミア母様のところへ行きますか。


 ☆☆☆


「皆様お揃いで」


 オレがミア母様のところへ行くと両親揃い踏みだった。


 ステラ母様だけが申し訳なさそうな顔をしてて、カトレア母様にシャキっとしろと小突かれている。それはいつものことだ。

 両親におかしな様子は見えない。


「来てくれてありがとう、トーレ。この際だからトーレにはちゃんと話しておこうと思うの」

「えーと、どうしてアインス兄様にあんなことをするのかってことでいいですか?」

「ええ」


 マジか。

 推測が推測じゃなくなっただけでもかなりのショックがある。

 だからと言って、ここで膝をついて泣きわめくってわけにもいかないよなぁ。それでやめてくれるような相手じゃないのは確かだし。


「さっさと座りなさい」

「はーい。カトレア母様」


 オレはちょっとだけ乱暴に母様たちの対面に用意されたソファに座る。これが圧迫面接ってやつか。

 なるほど、威圧感が凄すぎてまともに喋ることすら難しそうだ。


 そんなことはどうでもいい。

 いま必要なのは、母様たちを阻止してオレの理想のために頑張ることだ。


「父上や母様たちはアインス兄様に継がせたくないって話、ですよね」

「ええ、そうよ。前から言っているでしょう、トーレ。あの子には相応しくないの」


 カトレア母様が今更何を言っているのとでも言いたげに言った。


 いやまぁ、カトレア母様は前々からそんな風に言ってたし、上昇志向が強いんだろうなって思うことにしてたけど。

 最終的には父上が決めることだから、母様の無駄な足掻きくらいにしか考えてなかった。


 チラリと父上の方を見れば、父上はオレの方を見て大きく頷いた。

 この時の父上の顔は仕事モードのときの表情をしていて、それがどれだけ本気かを物語っていた。


「しかし、私の一声だけで周囲が全て納得するわけでもない」

「なのでぇ、アインスが相応しくないって思わせることにしたんです〜」


 緊張、重責に弱いとなれば、確かに王としての素質は疑われるだろう。

 大事な会がある度に毎回腹を下すようなら、この先やってけるとは思わなくなるだろうし、幸いなことに多くの弟妹がいるからアインス兄様に固執することもない。


「でも、兄様は別に……悪いことはないはずではないのですか」

「アインスにはそのうち誰もついてこれなくなる」

「そんなの……」


 オレは即座に否定をしようして、イクル母様がのんびりとした口調で喋り始める。


「トーレ君がアインスを慕ってくれてるのは母として嬉しい限りですよ〜。でも、あの子は柔軟性が足りなすぎるんですぅ」

「何事にも全力で取り組むのは長所だけど、それについていける人がどれくらいいると言うのかしら」


 母様たちから飛んでくるアインス兄様への情け容赦ない言葉の数々。

 どこまでも規律に沿って、生真面目で真っ直ぐすぎると。


「それで1番まともにこなせそうなトーレに白羽の矢を立てたのよ。あなたは10歳の儀も出来ていたじゃない?」


 消去法みたいな選び方かよ。

 10歳の儀を根拠にするならこれからそれをやることになるフィーラたちにも選択肢に入るはずだ。

 それにこれから先性格が変わるってこともあるだろうし。大きく変わるかって言えば微妙と言うが。


「それならフィーラたちにも可能性はありますよね」

「無理だ。あれらに達成出来る余地はない」

「父上!」


 仕事モードの父上は冷たくフィーラたちを切り捨てる。

 父上からすればやってみないと分からないってのはあり得ない。出来るか出来ないかはすでに結果として見えているのだ。

 これを覆すには父上の想像を超えてみせるほかない。


 ちなみに説明しておくと10歳の儀ってのは、命の大切さを知るためって名目でやる狩りのことだ。

 大昔は泣いても喚いてもやり切るまで終わらなかったらしいけど、もう今は途中棄権ありの儀だ。


 これは後からフェリクスに内緒で教えてもらったことだが、出来る出来ないの評価よりも窮地に――追い詰められた時の行動についての方が見られているらしい。それは逃げることの出来ないような重責を前にと言う意味合いがあるとか。


 護衛はついているけど、一人で鹿や鳥を仕留めて捌き、料理をして自分の口に入れるまでがセットで、もちろん指導者はつくし、危険そうな箇所は大人が手伝ってくれるが基本的には自分で全てをやらなければならない。


 アインス兄様は涙こそ見せなかったが途中で出来なくなったらしく、アルク兄様は一応やったみたいだけど身体が弱いからオレたちと全く同じってわけでもなかったようだ。だけど、かなり真摯な対応されてたと聞く。

 オレも実際にやることになってかなり躊躇いや恐怖と戦ったし、今でもいのちを奪う感触は残ってる。


 ただ、これはあくまで噂だが父上は顔色を変えずにやってみせたと言う話がある。傑物はこの頃から既に傑物と呼べる器だったらしい。


 それらを踏まえてオレも弟妹がクリア出来るかどうかは疑わしくは思っている。

 フィーラはお花畑なとこが未知数だけど血とか苦手だし、フェムは優しすぎて傷つくのも傷つけるのも嫌がるし、リウは今のところ臆病な子だから、まあ難しいと思う。


 まぁきっと、あの儀式に関して言えば立ち向かうなんてのは出来ないような気がする。もし仮に出来たとしても、平静でいられるような弟妹じゃないとは思う。それこそ心に深い傷を負うくらいには。


「……それでオレを、と言うわけですか」

「そうだ。相応しい者が相応しい場所に着くべきだ」


 両親の視線は揃ってお前しかいないのだと訴えかけてくる。

 さも当然だと言わんばかりのそれは、オレの意見とは大きく食い違っているものであって到底すぐに了承できるものではない。というか、了承してたまるか。


 なぜならオレの将来の夢は兄様の手伝いをしながら、のんびりゆったりと暮らすことだ。(オレにとって)訳のわからない理由で潰されてたまるかってんだ。


 だからと言って、ここでオレが何を言っても話は平行線になるのは目に見えてるわけで、オレにできることと言えば――。


「それならオレは、アインス兄様が相応しいと思わせて見せますからっ‼︎」


 と、宣戦布告するくらいしかなかった。


 もし、もしも父上たちが考えてを変えてくれるとすれば、両親たちの期待を良い意味で裏切ってみせるしかないのだ。

 それ以外の道がオレには思い浮かばない。


 宣戦布告してオレは両親の反応を待たず、逃げるように部屋を出たからこの後のことは知らない。

 ただ言えるのは、オレにとっての受難の日々は続くってことだけだ。

次回からはトーレと主に家族の家族の話です。



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