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2—2

「お花畑に説明するのも疲れるわね」


 買い物決行日、我が家のムチ担当カトレア母様がフィーラとフェムに外出に守るべき約束を説明――叩き込んでいた。


「お花?フィーラ好きだよ。カトレア母様も好きなの?」


 フェムの方が理解が早くて助かるが、フィーラの方は()()理解に乏しく馬車に乗るまで喋るなと言うのを理解出来ていない。


 庶民スタイルの服を着て、ここから誰にも見つからずに馬車まで向かう必要があるわけで、声でオレたちだとバレないための最善策。


 姿自体は見られても働く親の背中を見学しに来た子供たちってことで誤魔化しが効くが声だけはどうしようもない。

 ちなみこれ、城で働く親がいるなら簡単な手続きさえすれば見学可能で、城で働く人材の確保がどうとか言ってた。


 言葉を変えて3回ほど説明をしていたカトレア母様はため息を堪えて、フィーラにオレがいいって言うまで喋るなとだけ言いつけた。説明するのを諦めたらしい。


「3人とも気をつけて行ってきなさい。フィーラ、フェム、トーレの言うことを聞かなければすぐに帰ることになると覚えておきなさい」

「はーい」

「はい、カトレア母様」

「じゃ、行ってくる。よろしく、母様」


 城への行き来が多い時間を狙ってオレたちは城の外へ出て城下に向かう。

 あとはフェリクスたちが上手くやってくれることを願うだけだ。


「もう喋っていいぞ」

「プハー、喋らないのって疲れるね、フェム」

「え、えっと、そうだね」


 無事に城下について、フィーラとフェムの行きたいところ1軒目に向かう。


 1軒目はおもちゃ屋。

 これは推測だが、フィーラに押し切られてここに決まった感じがする。

 自分の欲しいものを考えれば、ここになるのも頷ける。


「これはどう?」

「フィーラ、それじゃ喜んでもらえないと、思う」

「むー、じゃあこれは?」


 フィーラはあれこれ提案してるけど、フェムは困った顔しながら首を横に振る。フェムは相手のことを考えるからアインス兄様とステラ母様のプレゼントにおもちゃはちょっと違うと思ってるようだ。


 フィーラが拗ねそうなところでおもちゃ屋を切り上げて昼食にする。

 2人には初めてだろう気軽なレストランで食事を済ませていざ2軒目へ。


 2軒目はお菓子屋。

 お菓子の誘惑に負けそうになりつつ正気を保って兄様たちへのプレゼントを探すが、結局今この場で買っても誕生日当日までもたないからやめることになった。

 オレは注文して後日受け取ることも出来ると伝えたが、それは嫌だったらしい。自分たちで取りに行けないから。


 ここはオレが個人的に買い物をして最後の店に。2人にも1つずつは買った。


 3件目は装飾品をメインにしてる宝石店。

 よく城に呼んでる店の本店で、フィーラやフェム相手でも1人の客として接客の手は抜かない。


 ひとまずオレが代表としてステラ母様とアインス兄様への誕生日プレゼントを買いに来たことを伝える。


 フィーラとフェムの意見を取り入れつつ、ステラ母様とアインス兄様の好みを入れたものが目の前に用意される。


 おー、悩んでんな。

 正直、何を選んだとしても母様も兄様も喜んでくれると思うけどな。ステラ母様は特に。


「どうだ、決まったか?」


 そろそろ帰りのことを考えると決めてもらわないとならないので声をかけるとフィーラが蝶の形をした髪留めを指差す。


「フィーラはね、これがいいと思うの」

「いいんじゃないか。兄様はどうする?」

「フェムはこれがいいって言ってた。でもね、いいけどダメなんだって」


 そう言ってフィーラが指したのは赤を基調としたバングルで、目立たない感じに宝石が埋め込まれている。


「そうなのか、フェム」

「う、うん。そうなんだけど……」

「じゃあ買って帰ろ〜」


 と、ここでフェムが沈んだ顔してフィーラを止める。


「フィーラ、ぼくらのお金じゃ買えないよ。もっと安いのを探さないと」


 フェムはしっかりしてるな。比べる対象がカトレア母様にお花畑と言わしめたフィーラだけど。


「フェム、大丈夫。オレが出すから」

「え、でも」

「ありがとう〜、トーレ兄様」


 でもと躊躇うフェムの頭に手を置いてオレはニッと笑う。

 ま、こうなるだろうと想定済みだ。


「フィーラとフェムは選ぶ係、トーレ兄様はお金を出す係。そしたら、ほら3人からプレゼントになるだろ」

「は、はい」

「払ってくるからちょっと待ってろ」


 フェムにフィーラを見てるよう遠回しに言って、オレは代金を払うために少しの間2人から離れる。


 く、財布から金を取り出すのを手が拒んでる。わかってんだよ。これで所持金がほぼ空になることくらい。


 自分と格闘をしつつオレはトレーに代金を置いて、1つ追加をする。


「お釣りで買える安いものでいいんですけど、去年父上が贈られたものと似てるブローチがあればプレゼントにお願いします」


 そっちはフェムへの誕生日プレゼント。

 後日それは取りに行くことにして、オレたちはまた馬車の出入りが多い時間に、他の馬車に紛れて城に戻った。


 ここで終わってもいいけど、誕生日の様子を少々。


 まずはアインス兄様から――。


 実質継承権1位のアインス兄様の誕生日は大々的にやるため忙しいので、家族だけの誕生パーティーを前日にやった。


 って言っても、ホールケーキとアインス兄様の好きなものが並べられた夕食で、プレゼントもその時に渡す。

 各自用意したのを順番に。


「アインス兄様、おめでとうございます」

「「誕生日おめでとう。アインス兄様」」

「これはオレたち3人からです」


 フィーラとフェムが2人で小さな箱を持って、アインス兄様に手渡す。オレはついてくだけ。


「フィーラとね」

「ぼくが選びました」

「ありがとう。フィーラ、フェム……トーレ」


 いま、一瞬忘れてたな。2人さえ忘れてなきゃいいけど。


 その場で開けたアインス兄様はすぐに腕に通してみせて、ぴったりだと笑って明日のパーティーにつけて自慢するのだと張り切ってました。


 それから、ステラ母様。

 家族だけで当日祝う以外はこっちも似たような流れだ。


 1番大きな違いはプレゼントを受け取った時の反応だとオレは思う。


「ステラ母様、大丈夫?」

「今日は楽しい日でしょ〜」


 各自プレゼントを渡して、特に子供たちから渡されたものを見て、ステラ母様は大粒の涙を流してわんわんと泣いている。


 他の母様と違って1人だけ若いステラ母様は外交上数年前に嫁いできたばかりで、未だしっかり受け入れてもらえていると思ってないところがある。


 ま、今年は特にフィーラとフェムが自分たちでステラ母様へのプレゼントを選んだことも大きい。


 こうして2人の誕生日は無事に終了。

 次はフィーラとフェムの誕生日が待ってる。

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