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チュートリアル

ログインの表示が出た後、急に日本旅館そのままんまの一室に座っている状態だった。


表現が下手だろう?でも畳の部屋に、座布団敷いて座ってるんだよ。掛け軸もあるし、襖もあるぜ?

座ったままそれほど離れていない窓へと視線を移すと、新幹線の車内からよく見た富士山らしき山が見え、思わず立ちあがろうとした時に、部屋の外から声がかかった。


「失礼致します。」

一言断りを入れてから入室してきたのは、

着物を着た黒髪の綺麗な女性で、所作も綺麗であり、思わず見惚れてしまう。


そのまま見ていると机を挟んだ反対側に腰を下ろした女性はにこやかな表情のまま口を開いた。

「この度はユートピア 日本版のご購入ありがとうございます。

わたくしは、チュートリアルを担当させて頂きますハルと申します。


さて早速ですが、お名前をお聞かせ頂けますか?お聞きしたお名前はプレイヤー名となります。

プレイヤー名は【ユートピア】を始めますと変更できませんので、よくお考えになってからお答えください。

また【ユートピア】内で、頭上に名前を公開するか、非公開にするかもご選択ください。名前を公開すると、周りのプレーヤーからプレイヤーとして認識され、トラブルの元となる可能性もありますので、ご注意ください。」


VRゲームを侮っていた。散々プレゼンされたけど、本当にAI搭載のNPCなのか?

すげーなおい。マジでヒトそのものじゃん。

これは期待値がさらに上がるなぁ。

とりあえず名前ね。うーん、、。名前の公開って何の得があるの?NPCは名前あるの?ないから頭上にでないのか?嫌、ハルさんも名前あるけど頭上にないから、NPCは非公開で名前ありが確定だな。名前か、、、。


おもむろに机の上にあった急須に手を伸ばし、お湯を入れてお茶を作り出したハルさん。ずっとハルさんを見ながら悩んでいたからか、クスっと笑うと

「お気になさらず、ゆっくりとお考えくださいね。お茶でもどうぞ。熱いのでお気をつけください。」


恥ずかしい。ってかこれがエモいってやつなのか。惚れてまうやろー!!中学生か俺はっ!


差し出されたお茶をゆっくり飲む。美味っ!現実と見間違えるほど、お茶の味もするし匂いや暖かさも感じる。すげーなVR技術。

いやいやすげーなハルさん。


とりあえず名前だな!名前!

いっそのこと俺の名前もハルにすべきか?いや流石にダサすぎるか?

うーん、素直に自分の名前をとったジンっていうのもつまらんしなー、、、

名前でこんなにつまづくとは恐るべしハルさん。俺の五感をくすぐる表情をやめてくれー!!


だんだん意味不明になってきている。だんだん?ダンダン?

「名前はダンで、非公開でお願いします。」

安直すぎるかもしれんが、そんなに悪くないだろう。お茶飲も。


「お名前はダン様で、よろしいですか?」

頷く俺を見ながらハルさんが続ける。

「プレイヤー名はダン様で決定致します。素敵な名前ですね。

次にご年齢をお決めください。ご年齢はプレイヤーの皆様自身の肌感に反映されます。また後に説明させて頂きます容姿変更での皺やシミを選択する際の項目に増減がございます。

尚、【ユートピア】内では年齢を重ねることはございません。また年齢による有利・不利もございません。

だだし、ハラスメント・犯罪抑止などの観点から、15歳以上とさせて頂きますので、悪しからず。

では、ダン様は何歳に致しますか?」


「質問してもいいですか?」


「はい、何でしょうか?」


「年齢によって容姿変更に差異ができるとのことですが、20歳を選んでも皺は出来ないということですか?

今後、年齢は変更できますか?」


「その通りです。20歳では皺やシミなどは選択出来ません。また90歳で全く皺などがないというのも選択できません。

年齢に関しては変更できる可能性はあるとだけお伝えしておきます。」


なるほど。じゃあ思い切って年上にしてしまうか?今27歳だから、40?いや渋めのダンディ路線で50歳くらいにするか。

「50歳の渋めのダンディでお願いします。。。。いや!渋めのダンディは忘れてください!普通に50歳で!」


「ププッ!

失礼しました。50歳ですね、渋めの!」

笑いをこらえながらイジってくるハルさんとは対照的に、俺は恥ずかしさで顔を真っ赤にして心で涙した。


「次に性別を選択して頂く予定でしたが、ダン様は渋めのダンディをご所望されておられるので、性別は男性でよろしいですか?尚、性別は今後変更できません。」


「はい、男性でお願いします。」

その微笑みが痛いです!ハルさん!!


「では、次にさきほど少しお話しした容姿ですが、まずは身長、体重、筋肉量などの体型をお決めください。イメージしやすいように、ホログラフィーをこちらに用意いたします。ホログラフィー横にあるパネルをさわって頂くと思いのままに変化しますので、操作方法が分からない時は随時おっしゃってください。」


目の前にあった机から現実の俺と相違ないホログラフィーと、その横にタブレットが出現する。

「身長、体重もゲームのプレイに関係ありませんか?」


「いえ、優劣はつかないですが、例えば隠れる時に身長が高いとその分スペースは必要になりますし、体重が重いと誰かに担いでもらう時などは、より力が必要になります。」


質量保存の法則もあるわけだ。じゃあ現実よりも少し高身長で、体重は今のままでいいか。あくまで身長は少しだからな!タブレットをイジって身長が182cmで体重は68kgにしてみる。筋肉量は今のままでいいかな、普通にシックスパックだしね。


ホログラフィーが変化し、理想の体型へと変化をみせる。

「こちらでよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です。」


「では、ダン様が50歳になられた顔を予測した結果がこちらになります。」

うわぁ〜、過去の自分を見ることはあっても未来の自分を見ることってないから、なんか微妙な気分。


「ここから、変化させるでもいいですし、一から作り直してもいいですし、理想の顔を思い浮かべて頂いてそれをホログラフィーに反映させることもできますが、どうなさいますか?」


いずれこの状態になるなら違う未来を歩んでみたいよなぁ〜。でも理想のダンディって思い浮かばないし、適当にタブレットをイジっていこうかな。

「とりあえずタブレットでイジってみてもいいですか?」


「はい、納得されるまで存分に変化させて頂いて構いません。」







あれから結局、俺だけでイジっていてもよく分からない状態になったので、ハルに相談しながら欧米と日本人のハーフっぽい顔におじさん要素を足した顔になった。

「疲れたなー」


「お疲れ様でした。渋めのダンディが出来上がったと思います。

これで容姿変更は完了と致しますね。

ひとまずお茶をもう一杯どうぞ。」


「ありがとうございました。

ハルさんおかげです。」

新しく注がれたお茶を飲みながら、お礼を言う。

渋めのダンディに関しては恥ずかしさは吹っ切れたよ。散々理想のダンディについて語り合った仲だから!(涙目)

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