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王位継承権争い

 先王には数多くの息子がいた。そして、その息子たちに王位をかけて競わせ争わせていた。先王に優秀な一面を見せた息子ほど早く夭逝した。


 彼は同腹の兄のお陰で生き延びていた。彼の兄は賢かった。愚鈍を装い(おとうと)と苛烈な王位争いを生き抜いていた。ある程度兄弟が淘汰された時、彼の兄は先王に願い出た。(おとうと)と臣籍降下し、王家を支えたいと。

 先王はそれを許さなかった。彼の兄は結局、王位争いに負け処刑された。


 彼は本当に愚鈍だった。それ故に兄弟から後回しで大丈夫だと思われていた。兄弟の一人が祝いの酒に毒を仕込んだ。解毒剤を持っていた兄弟は毒に苦しむ兄弟に殺された。毒に苦しみながらも生き残ったのは、たった一人彼だけだった。



 父王が死に、たった一人生き残った彼が王位についた。

 彼は血を血で洗うのはもうやりたくなかった。

 だから、二人の息子が仲が良いのが嬉しかった。

 

 ある日、彼の国に渡り人がやってきた。

 渡り人とは異世界からの来訪者。この世界に恵みをもたらす者。

 彼は渡り人の来訪を喜んだ。


 彼の国は作物が病に弱く収穫量が他国より少なかった。

 下の息子の婚約者が病に効く薬の開発と病に強い種を研究していた。

 そして、それは研究成果を出そうとしていた。


 渡り人が来訪した年とそれは重なった。

 彼は怖くなった。

 もし、それで婚約者が力を持ってしまったら。

 息子同士が王位をかけて争うようになったら。


 劇的に増えた収穫量に、誰かが渡り人を『実りの聖女』と呼んだ。

 渡り人は恵みをもたらす者。

 彼は、渡り人を『実りの聖女』とした。


 みんなが『実りの聖女』として、渡り人を讃える。

 下の息子の婚約者を渡り人に変えるように言う。

 彼は怖くなった。

 文献では、渡り人が王になったこともあった。

 渡り人は危険だ。

 下の息子の婚約者が渡り人を助けてしまった。


 下の息子の婚約者は危険だ。

 あの毒をどうにかしてしまうなんて。

 あの知識は怖い。

 どうにかしなくては。


 上の息子が怖い。

 下の息子の婚約者が無罪だと言う。

 彼の決定に逆らってくる。

 力を削がなくては。

 息子同士で争うのは見たくない。


 下の息子の婚約者は処刑した。

 下の息子の婚約者が作り出した物は使えなくした。

 これで下の息子の力となる者はいなくなった。

 上の息子は力を削いで不毛の地に追いやった。

 文献にあった渡り人は男だった。

 彼の国の渡り人は女。大丈夫。


 下の息子の婚約者の研究を続けたい?

 上の息子の不毛の土地で?

 それくらいは許してやろう。

 あの土地では育たない。


 渡り人が宝石が欲しい?

 死にかけたのだから、それくらいは許してやろう。


 上の息子が怖い。

 不毛の地で剣を磨いていそうで。

 下の息子が怖い。

 婚約者だった娘の無罪を公表しろという。


 婚約者だった娘を犯人と言った者たちが殺されていく。

 あの知識を持った娘が悪かったのに。


 武器を兵を集めなければ。

 金がない?

 渡り人の買い物?

 止めさせろ!


 怖い、怖い、怖い。

 収穫量が減少したまま?

 『実りの聖女』が嘘だったんだ!


 怖い、怖い、怖い。

 上の息子の地が豊作?

 下の息子が決めたんだ!

 あの不毛の地で研究を続けると!


 怖い、怖い、怖い。

 悪いのは嘘をついた渡り人。

 悪いのは研究を続けたいと願った下の息子。


 渡り人は処刑した。

 下の息子も処刑した。

 あとは…?


 最後の一人、さいごの…ひとり…。

 おういをつげるのは…、たったひとり…だけ…。


「残ったのはお前か。お前が新しい王だ」


 にいさまこそがおうにふさわしい…

最初、宰相さんの話でした。

現王の兄に仕えていた設定で。

狂王さんの話になってしまいました。

最初から狂っていたのかもしれません。

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