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3話.魔法と呪術


 この世界において、四人に一人が持つとされている魔法の力。魔法を使える者は“魔導士(まどうし)”と呼ばれている。

 魔法を使えるか使えないかの見分けは簡単。瞳の色がグレーか、それ以外の色かだ。魔法が使えない場合は瞳の色はグレーに、使える場合は瞳の色がグレー以外の色になる。


 魔法には8つの系統があり、その者が使える魔法は瞳の色によって決まる。

 赤色の瞳を持つ者は、炎の魔法を使える。

 青色の瞳を持つ者は、水の魔法を使える。

 緑色の瞳を持つ者は、風の魔法を使える。

 金色の瞳を持つ者は、雷の魔法を使える。

 茶色の瞳を持つ者は、土の魔法を使える。

 橙色の瞳を持つ者は、光の魔法を使える。

 黒色の瞳を持つ者は、闇の魔法を使える。

 紫色の瞳を持つ者は、重力の魔法を使える。


 つまり、金色の瞳を持つヴィンセントは、雷の魔法が使えるということだ。

 魔法の系統は、基本的には親の系統で決まるが、親ではなく祖父母や先祖の系統を継承する者もいる。

 一般的に、魔法は一人一種類しか使えないとされているが、極希に、二種類以上の魔法を使える者がいる。二種類以上の魔法を使える者は、瞳の色はオッドアイ、または中途半端に混ざったような色にある。ルカは青色と紫色のオッドアイ、ギルバートは赤と金オッドアイ。ルカは水と重力の魔法が、ギルバートは炎と雷の魔法が使える、ということだ。


 この世界には魔法の他に、“呪術”と呼ばれるものが存在する。

 呪術とは、自身の魔力を(もち)いない(わざ)であり、(すべ)ての(もの)が使うことができる。魔法が攻撃に用いるものだとすれば、呪術はどちらかといえば防御や補助に用いるもので、結界を張ったり、身体能力を上げたり、他者を呪ったりすることができる。

 呪術を使うには、魔力の(こも)った石などの媒介(ばいかい)が必要。媒介は、魔力さえ籠っていれば何でもいい。

 魔法を使う者を魔導士と呼ぶとすれば、呪術を使う者は、“呪術士(じゅじゅつし)”と呼ばれている。


◆◆◆


「呪術、か…」


 興味深そうにルカの話を聞くギルバートとヴィンセント。


「400年程前にできたものだよ。媒介が必要になるが、誰にでも使える」


 510年もの間二人は眠っていたため、新たに出来たものについて彼らは知らない。

 4日後に行われる話し合いの為、ルカは目覚めた二人に現在の情勢や510年前にはなかったものなどを教えていた。


「できたもの、とは、他人事のような言い草ですね。ルカ様」


 眼鏡をかけた知的な印象のメイドは、クスリと笑いそう言い、主人(ルカ)の前に音を立てずにティーカップを置く。


「どういう意味だ?フォス」

「400年前、呪術を作り、民に広め、一般化させたのは貴女様(あなたさま)でしょう。我が主よ」


 メイド——フォスは、クスクスと笑って自分の主を見た。


「言いふらすことではないと思っただけだよ」


 ルカは大した事ではないと、静かにカップを持ち上げ口元へ運んだ。


「その呪術のおかげで町の守りが万全になったというのに。貴女様は事の重大さをわかっておられないようだ」

「なにしろ400年前のことだ。いちいち覚えてなんかいられないよ」

(まった)く、貴女という人は…」


 進められていく主従の会話に、戸惑うギルバートとヴィンセント。


「まあ、それはさておき…、今言ったように、呪術は戦闘でも私生活でも使える便利な代物だ。覚えておいて損はないだろう。二人の側近にも教えてある。時間があるときにでも教わるといい」


 音を立てずに紅茶を啜り、ルカはカップをテーブルに置いた。


「…ルカ」

「何だ?ヴィンス」

「…俺に、側近は、いないぞ?」


 510年前、王都からルカの領地へと逃げてきたのは7名。ルカとその側近のフォス。ギルバートとその側近のキース。レイチェルとその側近のハリエット。それからヴィンセント。

 ヴィンセントは王族だったが、側近はいなかった。それは、幼少期だった頃に側近だった者に毒を盛られたという事件が関係している。毒を盛った者は捕まり、死罪となったが、その事件が起こるまで、ヴィンセントはその側近に懐いていた。事件のせいでヴィンセントは側近を置かなくなったのだった。


「一応つけただけだ。気に入らなければ必要ないとでも言えばいい。ただ、アイツはヴィンスも知っている奴だ。問題はないと思うよ」

「…アイツ?」

「ザック。来い」


 ルカの手の平の上に小さな黒い蝶が浮かぶと、次の瞬間にはルカの背後に跪く者が現れた。


「呼び声に応じ、参上しました。ご用件を、我が主」

「アイザック・ウィスタリア。フォスの兄だ。覚えがあるだろう?」

「ああ。…なるほど」


 ヴィンセントはルカの背後に跪く者を一瞥すると、納得したように頷く。


「ザック。以前から言っていたように、今からお前はヴィンスの付き人だ。いいね?」

「拝命いたします」


 ザックは立ち上がり、ルカにぴっしり90度腰から頭を下げると、ヴィンセントの背後へと移った。


「ヴィンス、ザックなら問題ないだろう?」

「ああ。問題ない」


 ザック——アイザックは、代々ハイドランジア家に仕える名家ウィスタリア家の出身。

 フォスは、色々あって幼少期にルカに拾われた(のち)、ウィスタリア家の養子となった。

 ウィスタリア家は、800年の歴史を持つハイドランジア家に代々仕えてきた家であり、幼少期、ヴィンセントとアイザックはよく遊んでいたということもあり、アイザックなら大丈夫だろうと、ルカはヴィンセントが眠っている間にアイザックに付き人になるよう言っていた。


「ザックとキースには、呪術を使いたい者たちに呪術を教えてやったりもしてもらっている。教えるのは得意なはずだ」

「…お前が作ったのであれば、お前が教えてくれてもいいのではないか?」


 ギルバートの言葉に、ルカは「私は他人に教えるのは得意ではなくてね」と返した。


「領内にある町・村には、呪術士たちを派遣して結界を張り、外敵から守るように言ってあるし、戦闘部隊も配置してある。戦闘面も問題ないだろう」

「なぜそう言い切れる?」

「山の向こうに呪術はない。山の向こう側の連中は、510年こちらが攻めてこないから滅亡したと思っているらしい。リーリウムの連中は、聖女サマがいれば問題ないと、騎士団の連中はほとんど訓練をしていない。他はリーリウムに比べればだいぶマシなようだが、見る限りでは我々の足元にも及ばないだろう」


 ギルバートの問いにルカはそう答えると、「視察する限りではそう感じた」と付け加えた。


「…ルカ。まさかお前自ら視察に行ったのか?」

「堂々と往来を闊歩しても問題なかったぞ」


 ニタリと笑うルカ。


「…我々は、魔族として懸賞金がかかっているのではなかったのか?」

「聖女サマの聖なるお力で、魔族は向こう側へ侵入できないことになっているらしい。聖女サマは権力に胡坐をかいて今も贅沢三昧だ」


 「民が可哀そうだな」と言うルカにフォスは頷く。


「…そうだ。軍隊については、現在はこんな感じにしてあるが、どうだ?」


 ギルバートとヴィンセントに見えやすいように紙を差し出すルカ。

 紙に書かれているのは、現在のハイドランジア領における軍隊の階級だった。


「役職は、魔導士、呪術士、兵士の3つ。階級は、一番下の訓練生は3等、下級士官は準2等、中級士官は2等、上級士官は1等。ひとまず全てを指揮している私は司令官と呼ばれているが…」

「ならばそのまま司令官で良いだろう。分けるなら役職ごとに別ければいい」


 ルカ、ギルバート、ヴィンセントの510年間にあった出来事を交えつつの5日後に行われる話し合いへの議題まとめは、夜遅くまで続いたのだった。



 


2020/10/18 16:05

軍隊の階級を変更しました。

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