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将軍たちと陽キャ

「余の城が……」


 完全に燃え尽きた城を前にアスピルは膝から崩れ落ちてしまった。


「アスピー、魔王から一気にホームレスになっちゃったなぁ」


「そもそもタイヨウが火をつけたから城が燃えたんじゃろうが!」


 アスピルは起き上がり、タイヨウを両手でポコポコと殴り始めた。


「えー!そんなんアスピーがこうやって火を出せとかいうから俺は言われた通りにやっただけやんけ」


 タイヨウは親指と人差し指を立てて、火の魔法を出す形にした。


 ボワッ


 タイヨウの指からアスピルへ火が放たれた。

 アスピルのおでこが焦げ付いた。


「ごめん!わざとじゃないからね」


「ううう……」


 アスピルは唸り始めた。


「許さん!お返しじゃ」


 ゴオオォ


 アスピルがタイヨウに向けて火を放った。


「あぶねぇな、わざとじゃないって言ってるだろコノヤロー」


 タイヨウもアスピルに向けて火を放ち始めた。

 二人の間で炎がぶつかりあった。


 将軍たちは二人のやり取りを見ていた。

 真っ先に口を開いたのはマリンだった。


「城も燃えちゃったしどうすんのよ!?」


 マリンは攻めるような目でカネチョロを睨んだ。


「さぁ?どうするんっスかね」


「なに無責任なこと言ってんのよ!アンタあの人間がいい奴だって言ってたじゃない、放火犯のどこがいい奴よ!」


「いや自分もなんだかわからないっス……」


 困惑するカネチョロに対し、ウルモフはぽかんとした顔で呟いた。


「なんか新魔王の就任式とかなさそうだし、もう帰ってもいい?」


「はぁ!?アンタ馬鹿じゃないの?こんな状況でよくそんな発言できるわね」


「ホントに眠いんだって。狼人(ワーウルフ)は夜行性なんだよ?もういいわ、ここで寝る」


 ウルモフはその場に寝転がった。


「こら犬頭!なに寝てんのよ」


 マリンは何度もウルモフを叩いたが、ウルモフは幸せそうな顔ですっかり眠ってしまった。


 オクエルは火の魔法を打ち合っているタイヨウとアスピルを冷めた目で見ていた。


「人間なんか呼ぶからいけないんだ……」


 オクエルの一言にカネチョロは寂しそうな顔をした。

 人間との最悪な関係を諦めているオクエルと違い、カネチョロはどこかで人間と仲良くした気持ちがあった。

 タイヨウの存在が魔物(モンスター)と人間の関係を大きく変えてくれるかもしれないと感じていたカネチョロに目の前の光景は辛いものだった。


 一匹の魔物(モンスター)が不敵な笑みを浮かべていた。


「おい人間め!アスピル様に何をしている。このアステリオスが許さんぞ!」 


 牛人のアステリオスが鼻息を荒くしてタイヨウに呼びかけた。

 アステリオスはここでアスピルにいい所を見せれば上将軍の地位が戻ってくると考えたようだ。


 フフフ、人間如きに舐められてたまるか。

 うまく脅して俺が上将軍、いや大将軍として魔王軍をまとめるのだ。


「おい!聞こえているのか人間よ!」


「うるせー牛だな、少し燃えてろ」


 タイヨウはアステリオスに向かって炎を飛ばした。


「あっつ!!燃えてる!尻尾が燃えてる!!」


 暴れ牛と化したアステリオスの尻尾の炎をアスピルは大慌てで水の魔法で消火した。


「オロカモノ!将軍をイジメるでない」


「そいつも将軍なの?畜産用の牛かと思った。ごめんごめん」


 アステリオスは半分泣きながらタイヨウに訴えた。


「牛のはずがあるか!今、お前に話しかけただろう。このアステリオスを畜産牛扱いしおって……」


「そうだっけ?覚えてないや、ごめんね!よろしくアステリオス」


 タイヨウは和平の顔なのか小馬鹿にしているのかよくわからない締まりのない顔でアステリオスに握手を求めた。

 

 ギュッ


 タイヨウの手を握ったのはウルモフだった。


「タイヨウさんだっけ?新魔王になるらしいけどよろしく」


「おお!こちらこそよろしく」


 握手をしながら、ウルモフは大きなアクビをした。


「挨拶も済んだし。新魔王さん、もう帰ってもいい?」


「いいよ、お疲れさん」


 二人のやり取りに割って入ってきたのはオクエルだった。


「待て!新魔王の就任は六将軍全員の賛成によって可決されるのだ。勝手に帰るな」


「「なんかめんどくせぇな」」 


 タイヨウとウルモフが同時に発言した。


「わかったよ、じゃあ俺がここで多数決取ればいいんだろ。俺が新しい魔王になるのに賛成な人は手を上げて!」


 果たして何人の手が上がったのか……

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