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優しきリザードマン『カネチョロ』

 タイヨウが無害だということがわかったのでオクエルは城の外の警備に戻っていった。


 あのネエチャン、顔はいいけど性格がきつ過ぎるだろ。

 まぁ、ああいうタイプはしっかり仕事してれば評価してくれるだろうからほっとくとしよう。

 そんなことより今ははぐらかされた疑問を解決させねば。


「アスピー何歳なの?」


「教えてやらぬ」


 アスピルはフフンと鼻を鳴らした。

 

「じゃあ今度、オクエルに聞くからいいわ」


「早朝、余の年齢について話すなという法律をつくるとする」


「職権乱用すんなよ…」


 アスピルの得意気な顔を見て、実年齢は知らんが精神年齢の低い魔王だなぁと感じるタイヨウだった。


「まぁいいやとにかくこの世界のこともう少し教えてよ」


「うむ!まだこの世界の常識がないようじゃからな」


「向こうの世界の常識もあんまないけどね」


「そのようじゃな。さて、この世界について話してやろう」 


 生意気な小娘め、こんなものが『魔王』だなんて驚きですよ。

 魔物(モンスター)達、いや『国民』のまえにコイツをなんとかしてやりたいな。

 うまいこと教育してこいつにまた『魔王』をやらせよう。


「では話そう、時遡ること遥か太古、冥王ボムギと全能グッパオンが…」


「いいやもう飽きたから。そろそろ眠いわ、今日はどこで寝ればいいの?」


「おい!じゃあ手短に言うぞ、この世界にはここ魔物(モンスター)だけが住む『ガラパゴ島』と人間達が住む『ジャンヌ共和国』と『マルキド帝国』の3カ国がある。

三竦みの停戦状態だが『ガラパゴ島』は両国から汚らわしい魔物(モンスター)の集落だと侮蔑されている」


「ボムギ関係ねぇじゃん…とにかく『国民』とも人間とも仲良くしていけばいいのね」


「そうだ、平和がなによりだ。オクエルは過去に人間と戦争してた頃に兵士として戦っていた数少ない生き残りじゃからな。

しばらくはお前と仲良くする気にはなれんじゃろ」


「どおりでめっちゃ嫌われていると思った」


「まぁ他の『国民』も人間が苦手じゃけどな。

魔王軍で側近として余の近くにでもいなければ人間と会ったこともないやつらばかりじゃ。

第一印象が大事じゃからくれぐれもよろしく頼むぞ」


「はいはい。まぁなんとかしてみせますよ」


 そうは言ったものの、四面楚歌の状態でどうしたものか。

 オクエルともしばらくは協力関係になれなそうだし、せめて一人くらい気の合う仲間がほしいものだが。


「とりあえずは『カネチョロ』に面倒を見てもらえばよい。余が人間の国に行く際には常に連れて行ってたから他の『国民』よりは人間に慣れとるじゃろ。おーい!こっちへ来い」


 部屋の入口に立っていたトカゲ頭の魔物(モンスター)がこっちへ来た。

 身長は俺くらいだから170センチくらいだろう、体格も痩せ型で恰幅(かっぷく)が良いわけじゃない。

 しかし、大きな尻尾を左右に揺らしながら歩くからかなかなか威圧感があるな。

 お、なんか首にターコイズらしい水色の石で作られたオシャレなネックレスつけてるぞ。


「どうも、『タイヨウ』ですよろしこ。首のネックレスいいじゃん。オシャレだね」


 カネチョロが猫のように縦長な瞳孔の目を大きく開いた。

 まずい、喜んでるようには見えないが怒らせちゃったか?


「俺はアスピル様と一緒に何度か人間の国へ行っていますが、人間にそんなことを言われたのは初めてっス。

いままで合った人間はもっと……」


「人間は魔物(モンスター)に対してひどい扱いしてくるんでしょ?なんか悪いねホント、申し訳ないわ」


「いや、タイヨウ様が謝ることじゃないっス。自分はオクエル隊長の部下で『上将軍』って立場の『カネチョロ』っス。見ての通り蜥蜴人(リザードマン)っス」


 よかった。このトカゲ頭、いい奴っぽいな。

 若干しゃべり方が頭悪そうなのが気になるが、まぁ俺も人の事言えんしな。


「『タイヨウ様』はやめてくれよ、なんか偉そうでイヤだからさ」


「では何と呼べばいいっスかね?」


「『魔王様』じゃ!!」


 アスピルが二人の間へ割って入ってきた。

 小さくて二人の視線に入っていないことに気づいたようでぴょこぴょことジャンプしていた。


「タイヨウは余が召喚したのじゃ。今日からタイヨウは『魔王』なのじゃ」


「え?全然意味わかんないっス。どういうことっスか?」


「魔力が高いだけで『魔王』なんかやらされて余はもう疲れた。あとはタイヨウがなんとかしてくれるからカネチョロはサポートせい!」


「マジっすか!?頑張ります」


 こいつノリが軽いなぁ。

 大丈夫かなぁ、まぁ人の事言えないんだけどね。


「カネチョロがしっかりタイヨウをサポートすると約束してくれるのであれば魔王最後の命令として、

魔王軍の総指揮である『大将軍』をお前にしてやってもよいぞ?」


 アスピルの発言にカネチョロは真剣な顔になった。


「いえ、自分はオクエル隊長には全然かなわないっスから。自分は今の地位でタイヨウの旦那をサポートしますよ」


 へぇ、こいつチャラそうに見えて意外としっかりしてんな。

 カネチョロは頼れそうかもしれん。


「そうか、とにかくタイヨウを任せた。余は一歩引いたところから陰ながら応援しているぞ」

 

 幸せそうな顔しやがって、こいつ面倒ごとを俺とカネチョロに押し付ける気だな。


「アスピーも働いてよ、俺とカネチョロだけじゃ無理だから」


「……うむ、多少はな」


 『元魔王』の頼りない返事が気になるが、酒も回ってきてだいぶ眠たかったので今夜はもう眠ることにした。

ネタバレ:カネチョロも夜勤手当が付かないことを気にしている

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