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人間嫌い

 タイヨウ、魔王アスピル、オクエルの三人は王城に入り話をすることになった。


「改めて話をしようではないか、まずは自己紹介からじゃな。余は魔王アスピル、魔物(モンスター)の国『ガラパゴ島』を統治している。

まぁ今はタイヨウが『魔王』じゃから『元魔王アスピル』じゃな、好きに呼べばいい。

オクエル、自己紹介するのじゃ」


「は!私の名はオクエル、魔王軍の指揮をしている『大将軍』だ。他の魔物(モンスター)同様、人間は大嫌いだ」


 オクエルはタイヨウを睨み付けながら牙を光らせた。


「オクエルやめい、二人にはこれから多くのことを協力してこなしてもらう。仲良くしてもらわんと困る」


 アスピルの申し付けにオクエルは不服そうに頭を下げた。


「次は俺の番だな。俺はタイヨウ、ミステリアスが魅力の20歳!『魔王』やることになりました、ヨロシク!」


 タイヨウは右手の親指を立てながら歯をキラつかせていた。

 オクエルはタイヨウを見向きもせずにアスピルに問いかけた。


「アスピル様、何故この者に『魔王』を任せるのでしょうか?

配下にするにしても知性も感じませし、戦いで役に立つとも思えません…

そもそも、よりによって人間如きに『魔王』をさせるなどありえません」


「おいおい、『人間如き』とか言うなよ。そういう発言は人間関係の交流をせばめるぞ」


「人間なんぞと交流したくもない。いや、斧を交えての交流なら嫌いではないがな」


 ニヤリと不適に笑うオクエルを見て、タイヨウは人間と魔物が仲良くする大変さを理解しつつあった。


 他の魔物もオクエルと同じように俺を嫌うのだろうか、人間が一人もいない中で俺が『魔王』やって大丈夫かな。

 まぁ、少しずつ仲良くなっていけばいいや。

 嫌われるという不安より、たくさんの魔物と仲良くなれるかもしれないという期待の方が大きいかな。


「そういえば年齢言ったの俺だけなんだけどさぁ、アスピルは……」


 まてまて、ここで『アスピルは何歳なんだよ?』っていきなり女性に年齢を言わせるのは紳士のすることじゃない。

 俺は『タイヨウ』、社交性の高い男。

 女性の年齢を聞き出す呪文ぐらい使えるさ。


「アスピルは何座なの?」


「え?ねこ座だが」


 アスピルはきょとんとした顔で答えた。


「って真面目な顔して滑られるとツッコミにくいやないかぁーい」


 ペチィーン


 タイヨウが平手でアスピルの頭を打つと軽い音が部屋に響き渡った。


「あっ、よく考えたら聞くのは星座じゃなくて干支か、間違えちったハハハッ」 


 オクエルがタイヨウの胸ぐらを掴み目一杯持ち上げた。

 タイヨウは3メートル程の高さまで一気に浮上した。


「おい!今、アスピル様の頭を叩いただろう!無礼者め、このまま捻り潰してやる」


 血の巡りが悪いのかタイヨウの顔がみるみる真っ赤に染まっていった。

 首が服でがっちり絞められているようで呼吸音も聞こえなかった。


「オクエルよい!タイヨウを離してやれ!」


 アスピルの言葉のあと、オクエルはすぐさまタイヨウを手放した。

 タイヨウは落下し、大きな尻餅をついた。


「ゴフゴフ……死ぬかと思った。叩いてないよ、ツッコミを入れただけじゃん!」 


 オクエルは『ツッコミ』が理解できなかった。


「『ツッコミ』とはなんだ?明らかにお前は魔王様の頭を叩いてただろうが」


「アスピーがなんかボケたじゃん?だから俺が頭を叩く、そういう共同作業だよ」


「なんだそれは?お前の国の文化か?そんなもの叩かれたアスピル様が損しただけじゃないか」


「おいちょっとまてアスピーとは余のことか」


タイヨウはやれやれという顔をした。


「今、美味しかったのは叩かれたアスピーでしょ?なにもわかってないんだからもう」


 オクエルは混乱してきた。


「アスピル様のなにが美味しいのだ?」


「おいアスピーって余のことなのか?」


 俺は真面目過ぎるオクエルが可哀想に思えてきた。

 このデカイオークのネエチャンはそんなに堅物だったのかと。

 幼少の頃からなんのテレビをみて育ってきたのかと。

 こいつも小学校の時のクラスメイトと同じで親からeテレしか見させてもらえなかったのかという話ですよ。


「ごめんよオクエル、別にそんなことは知らなくていいんだぜ!これから二人で色々楽しい思い出作ろう」


「やはり人間はよくわからん、アスピル様には申し訳ないがお前と仲良くなど到底できそうにない」


 オクエルはアスピルに一礼し、城外の警備に戻った。


「おい!無視するなよ!アスピーって余のことか?」


 アスピルはタイヨウの回りを跳び跳ねながら騒いだ。


「ああそうだよ、好きに呼べって言ってたろ」


「まぁ言ったが…」


「じゃあ『アスピー』でいいでしょ、それとも『ゲリピー』みたいでイヤ?」


「ゲリピーとはなんじゃ?」


「なんでもないよ、よろしくなアスピー」

ネタバレ:アスピルはゲリピーのことをケルピーのようなものだと認識した

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