召喚されし陽キャ
魔王というものは仕事が多すぎる!
人間の国との外交のためにつまらぬ会議に出席したり、威張りくさった人間の王の機嫌を取るのは魔物の王としては果たすべき義務なのだろう。
しかし、魔物達の種族間の争い事まで余が聞かねばならんのか?
魚姫の産卵地の上流で小鬼がクソをするだとか、
岩人が墓荒らしをして遺骨を加工して武器にして売っぱらうとか、
そんなことまで余が頭を抱えて解決しないと駄目なのか?
女魔王アスピルは自慢の長い薄ピンクの髪をかきむしりながらルビーのような赤い瞳が充血する思いで、尋常じゃない仕事量をこなしていた。
仕事が終わって一息ついたら、城の外はすっかり暗くなっていた。
また面倒くさい「魔物相談室」の夜の部が始まる。
城の外は面倒ごとを抱えた魔物達でいっぱいなのだろう。
アスピルはいつからか頭痛に効く薬草『ズツー薬草』を食べるのが日課になってしまった。
「もう疲れた……余は魔力が高いだけで別に社交性があるわけではない。他のものに『魔王』として働いてもらいたい」
魔王軍の軍団長『オクエル』は他のゆったりとした大鬼とは違いきびきびとよく働いてくれる、
副団長の『カネチョロ』も蜥蜴人らしいチャラチャラとした雰囲気はあるが多くの種族と上手にコミュニケーションを取って上手く争いごとの仲裁をしてくれる。
しかし二人とも『魔王』の後継者にはなれない。
『魔物』である以上は種族間の争いごとの仲裁に入るとどうしても平等な判断はできない。
この国の魔物では駄目だ、他のものを後継者にしないと……
よし!異世界より社交性の高いものを召喚し、そいつに『魔王』をやってもらおう!
アスピルは目をつぶり両手を上にあげて呪文を唱え始めた。
「遠き世界より社交性の高き者よ、ここに参れ!」
まばゆい球体の光が床の上に現れた。
徐々に光が鈍くなっていくと、そこに茶髪の男がいた。
「うーマジ酔った……飲んだ酒全部吐きそう」
彼の名はタイヨウ、後に世界をアッパー系の方向に導いてくれる伝説の男であるッッ!!!
ネタバレ:タイヨウは童貞