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お嬢様の機嫌を損ねたら××  作者: 丸晴eM
6/6

06.寝起きドッキリ

 朝起きたら、抱きしめられていた。


 正確には、()()()()()()()()()


 目が覚めたらお嬢の整った顔とご対面。結局帰ってきたのには気付けなかったみたい。

おかしいな、私屋敷で相部屋の子がトイレに行く音で絶対起きてたのに…。


 まぁそれは置いといて、両手を顔の横に置いて眠ってるお嬢が隣にいるのに、何で私のボディに巻き付くものがあるんだって話ですよ。


「……ひぃいっ」


 リオも一緒にベットで川の字という希望は早々に打ち砕かれ、体に巻き付く謎の…物体というか生き物というか…

マジでなんだコレ!


「んん…リルちゃん…もうちょっと寝かせて」


 ごろん、とお嬢様が寝返りをうつ。拍子に、体が持ち上げられて転がされた。

拘束が緩んだ隙に必死に身をよじれば、謎の物体の正体がよく見えた。



 なんてことない、やっぱりお嬢様も魔物だったのだ。



 薄く柔らかいネグリジェの裾から伸びる、大蛇。足の代わりに長い蛇の尾が伸びている。

なるほど、背が高いはずだわ。…いや、背が長い?

お嬢様の寝息と共に徐々に締まってくる尻尾と戦っていたら、猫メイドが起こしに来たので事なきを得た。

あっぶなーーっ圧死するとこだった…!!

 

   


 

 

「ごめんねリルちゃん…。リルちゃん柔らかくてすべすべだから、つい抱き枕にしちゃった。大丈夫?」

「あはは…大丈夫です」

「ソファーは寝辛いものね、すぐリルちゃん用にベッドを作るわ」


 そう言ってにっこり笑った後直ぐに、目を見開いてびっくりした顔をした。

え、え何?


「もうお話できるようになったの?」


 完 全 に や っ て し ま っ た。


「あの…えっと…」

「私の名前はアヴァよ。アヴァ」

「あ、アヴァ…様」

「あらやだ、誰の真似?いいのよ様なんてつけなくて、可愛くないわ」


 おっとぉ!?まだ何とか誤魔化せるっぽいな。会話レベル初期のオウム返し程度の認識かな?

ってなると…。


「…アヴァちゃん、かわいい」

「きゃー可愛い!なぁにリルちゃん?うふふ、やだかわいい」


 アヴァ嬢のツボをつけたみたいで結果は上々。片言会話までならセーフかな。


「わううー!」

「おはようリオ、お腹が空いたのね?朝ご飯にしましょう。メフィー、今日はすっきり起きれたから湯浴みはいいわ」

「珍しいですわね、お嬢様の目覚めがよろしいだなんて」

「うふふ、朝からびっくりして目が覚めたのかしら?」


 いえ、多分私で暖をとれたからだと思います。


「リオ、リルちゃんをご飯を食べる部屋まで連れて行ってあげて。着替えたら私もいくわ」

「わっふ!」

「うわっと…ふ!」


 リオが背後に回って、ぐいぐい背中を押してくる。

部屋を押し出されて、廊下を進む。階段に差し掛かっても遠慮なく押してくるので流石に慌てた。


「待ってリオ、危ないから!手、手繋いでよ、ね?」

「わんっ」


 この子、言葉は理解してるみたいだけど全然喋らないよね。逆に不思議。


 手を引かれて到着したのは、高級感のある暗い赤が印象的なダイニングだった。

十分にスペースをとって10脚の椅子が並ぶ大きなテーブルには、既に食器が並んでいる。

しかもそれが普通の1、5倍サイズなもんだから、まさにどーーんって感じだわ。


「どこに座っていいの?」

「あう?」

「だよね、知らないよね」


 テーブルの誕生日席と、そのサイドに食器が用意されてるから、真ん中がアヴァ嬢で私達で挟むんだろうな。


「リオはいつもの席に着いて」

「おん!」


 テーブルをくぐって奥の席へ着いたので、私は手前の椅子に座る。

子供用の椅子で、足置きを階段として登ることができるようになっている。


 座ってからようやくテーブルの全貌が確認できた。私の座った席の隣には、色鮮やかな生花が飾られている。

なんで真ん中じゃなくてこんな変な位置に…。


「お待たせ。あら二人ともお行儀がいいわね!」

「わんわん!」


 床すれすれのドレスの裾で蛇足を隠したお嬢様がおいでなさった。

あのスカートの中でどう尻尾が蠢いているのか見たいような見たくないような。


「本日はほうれん草のポタージュです」

「パンも焼きたてです、どうぞお召し上がりください」


 籠に山盛りのパンが、どんっとテーブルの真ん中に置かれた。


「美味しそうね」

「わん!」

「おいしそー!」


 遠慮なく、夢中で食べた。途中でリオにだけ出てきたステーキをガン見してたら、お嬢様が私の分も頼んでくれた。

朝から厚切りのステーキとか贅沢すぎる!結構レアだったけど問題なく食べれてしまった。


「ごちそうさまでした!」


 満腹になったのでそういうと、きょとんとした顔でアヴァ嬢が見つめてきた。

"いただきます"はなかったくせにとでも思われてるんだろうか…。

いやお腹空いてたから。思わず忘れちゃっただけだし。

 

「お昼までは好きにしてていいわよ。でも勝手に外へ出てはいけないからね」

「わーう」

「はーい」


 椅子を降りる前に、ふと隣の席が目に入った。

いつの間にか生花は色をなくし、しわしわに枯れたものがそこにあった。


 

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