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転生前のチュートリアル

ん……あれ?此処どこ……?

……ああそうか。あの創造神(笑)と駄弁って艦艇の力を手に入れてそっから異世界に転生したのか。

つーか、此処ホントどこなんだ?周り木だらけだし、鳥なのか分からん鳴き声が聞こえるし。


「……まあ、その前に能力の確認だな」


1900年代の艦艇の力……それが、この異世界にとってどれくらい強いものなのか確かめたいし。


「……そういえば、どうやって使えばいいか分からんがな」


どうしよ……このままじゃ、本当に普通の人間じゃねえか。だが、右も左も分からない俺に創造神が何かヒントを与えていることがあってもいいはず。まずは、持ち物確認っと……


「ええと、まず俺の私服だろ?それに……んっ?ポケットに何か入ってる」


転生前に何故か着替えられていた私服をそのまま着ている。その動きやすいズボンのポケットに手を突っ込むと、何かを発見した。それをそっと取り出すと……


「……何だこれ」


鋼鉄のような色をした、希金属とプラスチックでできた板。音量ボタンやリンゴのようなマークの入ったボタン、それにある一面全体が画面になっている。とりあえずボタンを押したり画面を触ったりしていると、何か触った瞬間に画面が白くなった。


「んぉ!?電源が入ったのか……?」


俺の知るものでこれに近いのは、小さなチップである。人の僅かな電気に反応し音楽や通話は勿論、動画やVRゲームといったものまでが全て入っているものだ。

……こう考えてみると、昔はこんな小さくて重いやつが人々の手にあったのか。ちょっと、不便だなぁ……


「(……此処で立ち止まるのもあれだな。少し物影になるところで確認をしよう)」


森とはいえど、危険はあって当然だ。まだ何も分からない以上、人とかに会ったら怪しまれる。画面が白から鮮やかになった板をまたポケットに突っ込んで森の中を少し捜索すると、目の前にある大樹の裏へと隠れた。


「とりあえず、確認と……」


またあの板を取り出すと、その画面には鮮やかな背景に大きく箱みたいなものがある。下に“チュートリアル”と書かれている。それを不審に思いながらもそれに指を振れてみた。


[チュートリアル、スタート!]


「はっ?何これ」


突然現れた可愛らしいその11字の後に、2頭身に縮まった少女がひょこりと現れる。


『始めまして、東郷戦海さん!

私は、創造神様の元創られたこの“スマートフォン”の人工プログラムである“カトリ”と言います!』


「お、おう……ん、カトリ?カトリって……旧大日本帝国海軍所属の練習巡洋艦『香取』が由来なのか?」


正解です!とカトリは可愛らしくジャンプすると周りには花火とキラキラしたエフェクトが出てくる。

それにしても、“スマートフォン”か……あっ!確か、歴史博物館の中の平成時代のコーナーにこんなのあったなぁ。平成の人々が持っているものを使えるなんて……驚きというか歓喜というか。


『さてと……それでは、このカトリが貴方が行く世界について解説を致しますね!』


「ん?ちょっと待て。今、俺が此処にいるのは……?」


『そこは、異世界ではありますがモンスターとかが住んでいない平和な世界です。でも、町はそれなりに発展してますよ』


ほら、とカトリが指をさす方向には、よく見ると町らしきものがぽつぽつと存在している。此処も異世界だがそこまで発展しておらず、同時にモンスターもいない平和な世界なのか。これが時を経ると俺のいた現代になるのか……時間って怖いな……


『それでは気を取り直して、転生する世界“クレアシオナ”について解説を始めます!』


「ああ、よろしく頼む」


そうして、カトリからの説明を記憶するのだった……



<5分後…>


『……ということです。分かりましたか?』


「ああ、大体の要点とかは分かった」


『じゃあ、10文字以内でお答えを』


「“魔法のファンタジー”」


正解!とスマートフォン……面倒だからスマホを略そう。その画面からカトリの嬉しそうな><←この顔と指紋が見えるほど立てられたグッドサインが半分を占める。

まあ、要するに……



・“クレアシオナ”は科学ではなく魔法が発展した世界。科学で必要なものはほとんど魔法で賄える。


・生活水準は貧富の差が大きく、ある地域では奴隷の売買も行われている。一部の国は絶対王政であることも。


・一つの世界に多くの国が存在しており、友好関係もあれば対立して戦争をしている国もある。


・2つの大陸に分かれている。西側は人間やエルフといった多くの種族が住む『アルモニア大陸』。東側はゴブリンやオークといったモンスターが治める『エレティーノ大陸』。


・やはりファンタジーのテンプレである『ギルド』が存在。F~SSSクラスまであり、上がれば上がるほど難易度が高いかつ報酬の高い任務が与えられる。


・魔法は五行の火、水、木、金、土に付け加えて雷、風、光、闇の9つの属性魔法を基礎に、回復や補助系の魔法に応用したり、氷や毒といった属性の気質を変えることもできる。9つの属性魔法の適性は人によって様々。

ちなみに俺は艦艇を扱う関係上、水と金の属性魔法に適している。他はちょびちょび。



そのくらいである。後は長くなるので以下略。


「それで、俺の能力の使い方はどうなんだ?」


『戦海さんの能力ですね!

まずは……そうですね、艦艇そのものではなくて兵装を出してみましょうか。“リアル=○○”と言って下さい』


なるほど、リアルというと実際のものが現れるのか。なら、相当小さなものを出したほうがいいな。


「分かった。リアル=九一式徹甲弾!」


ズドンッ!!


「うおっ!?いきなり現れたァッ!!」


鈍い音と共に現れたのは、本物を見たことはないが資料で見た通りの九一式徹甲弾、しかもキャップ付きで俺と目の前に現れたのだ。


『おお、その調子ですよ!ちなみに戻すなら、ナッシング=○○ですよ』


「ナッシング=九一式徹甲弾……うお、マジで消えた」


九一式徹甲弾は消えて、そこには大きな円い跡のみが残っている。徹甲弾はどこにもないのだ。


『それでは、この調子で続けます。ちなみに艦艇を操る際にリンクして動かせますから、まあ習うより慣れろですよ』


「一番重要なのさっぱりしてんなぁ……」


『でも、艦艇を実際使うケースは少ないでしょう?なので、これからが重要なポイントです!

次は、艦艇を貴方に装着できる“艤装鎧”の展開の仕方を言います。その時は、クローズ=○○です!』


クローズ……近接という意味か。アーマードだったらベタだし、これはこれでいいな。リアルとナッシングは無しだが。


「クローズ=長門!」


『ちなみに艤装鎧の形は固定されていますし、同型艦も大して変わりません。貴方のお好みの艦艇を呼んで下さいね』


カトリの補足と同時、俺の体がずしりと重くなったが、すぐに体は軽くなる。

服には変化は無いが俺の側面を囲うように装甲と41cm連装砲が左右2基ずつ取り付いている。更に14cm単装砲が腰回りと艤装鎧の側面を囲うように配置され、両手の甲と肩には12.7cm連装高角砲が1基ずつ配置されている。

確か、長門の兵装はこれと同じだったはず。機銃やカタパルトとかはともかく、まさしくその数と兵装が一致していた。妹の陸奥もそうなのだろう。


「マジかよ……カトリ、艤装鎧はリアルの時と差とかはあるか?」


『火力や防御力はそのままに、被弾面積とバイタルパートを小さくした感じです。全ての兵装は基本的にオートですが、戦海さんの指示でも動きますよ。貴方自身も強化されてますので、陸上水上問わずに艤装鎧のほぼ同等の速力を出せます』


「何ちゅうチートよ……」


少し火力とか防御力とか落としていいのに、あの創造神は何ちゅうチートを……いや、格闘戦では必要なステータスだな。魔法が発展した世界で人類が築いた鋼鉄の城が戦う……斬新なシチュだ。


『基本的にそれくらいですかね。空母の時に艦載機なんかは貴方が指示しない限り自動で動きますし、貴方が休息している時にリアル艦艇に乗っている際には自動で応戦もしてくれます』


「……おう、とりあえずチートだわコレ」


『……何かすみません』


「いや、カトリは悪くねえよ。元といえばあの創造神(笑)のせいだ」


『……ありがとうございます。

それでは東郷戦海さん、良い旅を』


カトリがそう告げると、突然スマホが爆発をした。

創造神(笑)に46cm三連装砲撃ってやる、そう思いながら意識を手放した……

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